「完璧すぎるハンターカブ」もはや似て非なるもの? 超人気ホンダ「CT125」で雨の林道へ突っ込んでみたら
乗りものニュース / 2024年11月27日 18時12分
ホンダ「ハンターカブ」こと「CT120」を試乗。かつて海外で絶大な人気を誇った「CT110」の現代版は大ヒットを記録しています。そのスタイリングは「完璧すぎて、ちょっと」との印象をもっていた筆者、実際の乗り味はどうだったのでしょうか。
「CT110」ハンターカブ愛用者、「CT125」でツーリングへ
1981年に日本国内で販売がスタートするも、日本国内のニーズには合わず2年ほどで生産終了となったホンダの「ハンターカブ」こと「CT110」。一方、海外でのニーズは絶大で特にオーストラリアなどでは郵政バイクとしても採用され、輸出モデルは2012年まで生産され続けました。
こういった海外での絶大な支持の実績と、近年のタイ・ホンダの開発力も手伝い、2020年には「CT110」をリメイクした最新モデル「CT125」が発売されました。2023年の「CT125」の販売台数は1万台オーバーとも言われ、かつて2年足らずという短命で姿を消した「CT110」とは比較にならないほどの大ヒットに至っています。
他方、かつて25年間も「CT110」を乗り継ぎ愛用していた筆者にとってみると、最新の「CT125」が「完璧すぎて、どうも近寄りがたい」と感じるのも正直なところで、今も購入すべきかどうか迷っています。
そんな中、新車の「CT125」をレンタルできる機会に恵まれました。これは絶好のチャンス! 実際に「CT125」にまたがり、往復3時間半かけて奥多摩まで走りに行ってみることにしました。
出発したのは東京の中心部。真新しい「CT125」にまたがってみると、かつて愛用していた「CT110」よりもスポーティな印象で、全体的に重心が下にあるような印象を受けました。
一方、走り出した感じは「CT110」と比較にならないほどの安定感で、ギアのどの領域でも減速・加速のレスポンスが良く、制動も完璧。最初に感じた「重心が下にある感じ」は特に高速走行で功を奏し、車体がブレずに安定した走りを見せてくれました。
また、積載性の高さから商用車としても十分な機能を発揮するように思え、「CT125」の実用性の幅は広いとも思いました。
走行性能には全く問題がない一方、ほんの少し気になったのがハンドルのスイッチ周辺。
特に左側につくクラクションスイッチが独特かつ高低差のある作りで、左の親指でクラクションを押す際の力加減に一定の慣れが必要だとも思いました。
ただし、これはユーザーごとに印象が異なるところ。あくまでも筆者は「CT110」時代のポチッとしたスイッチに慣れていたため、少し違和感を覚えたようにも思います。
雨の中で林道へ突っ込もうとした結果
東京都心部から甲州街道を八王子あたりまで走り、のちに新奥多摩街道に入ると、何やら雲行きが怪しくなってきました。そしてポツリポツリと雨が「CT125」の真っ赤なボディに落ちてきます。
「雨の奥多摩……イヤだ」と思う一方、もはや引き返すわけにはいきません。途中コンビニで簡易的なレインコートを買い、そのまま青梅を抜けて奥多摩エリアに入り、国道411号へ。土砂振りではないものの、周囲をびっしり雨雲が覆う中、「CT125」でトコトコ前進することに。
ご存知の通り、奥多摩は延々とカーブが続きますが、「CT125」は濡れた路面でも比較的グリップが良く、ドシっとした足つきでカーブを潜り抜けてくれます。「CT125」はガソリンタンクがシート下にあるため、ガソリンタンクをニーグリップしてのコーナリングはできませんが、それでも十分な安定感。この点も「CT125」の素晴らしさだと思いました。
さて、国道411号をさらに進むと、やがて左手に奥多摩湖が見え、さらにその先に真っ赤なアーチの「峰谷橋」が見えてきます。この赤い橋が「CT125」のレッドとも合っていると思いながら、さらにその先の脇道を入り、「麦山線林道」を目指すことにしました。
ここは途中までが舗装道ですが、急勾配で歩くのも一苦労。それでも「CT125」のトルクフルな安定感で、難なく林道手前まで登りきることができました。
しかし、ここで予想しないことが。林道の入り口に「立ち入り禁止」の看板が掲げられています。また、この入り口付近は舗装道の角度が不均等で、ちょっと移動するだけで、角度が変わり、また濡れた枯葉でタイヤがスルスル滑ります。
そのため、ハンドルを切ろうと力を入れれば、スロットルを意図せず吹き上げてしまうことがあり、思わず借りた「CT125」を倒してしまいそうになりました。
うーんやっぱり「似て非なるものだ」
しばし足を踏ん張り「倒すまい」としながらも、ハンドルを両手から離せば、また「変な力」が加わり、スロットルを吹き上げてしまいそうです。
この点だけを言えば、先代モデルの「CT110」には指先でエンジンを切ることができるキルスイッチと、フロントブレーキレバーをロックできるシステムが標準装備されていました。また勾配の厳しい悪路での走行用に「副変速機」もありました。
現状の「CT125」には搭載されていない機能のため(キルスイッチはカスタムパーツの販売あり)、「CT125」でオフロードで楽しむ場合は特に注意すべき点だとも思いました。
ここまでの「CT125」の印象をまとめると、街乗りでは「CT110」とは比較できないほどの安定性とレスポンス、ディスクブレーキによる制動性能があり、同等クラスのバイクの中では群を抜いて乗りやすいバイクだと思いました。
一方、「CT110」の特長でもあった「悪路での走破性」は「CT125」にはほとんど受け継がれておらず「CT110」と「CT125」は似て非なるバイクだとも感じました。
もちろん、どちらが優れて、どちらが劣るというわけではありませんし、あくまでも街乗りでの性能を求めるのであれば「CT125」は完璧なバイク。その乗り味を持って、後に雨がジャンジャン降り始めた奥多摩でも安定した走りで戻ってくることができました。
この年末には「CT125」の新型「2025年モデル」発売も発表されました。今回の試乗で「CT125」の安定感を体感し、次なるゲタ車を「CT125」にしようかと気持ちが揺らぎ始めているところです。
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