日本で唯一「新幹線の踏切」を“乗ったまま通過”してみた 実は“通過前”も超激レア!?
乗りものニュース / 2025年1月5日 7時42分
「新幹線」は踏切をなくすことで高速運転を実現していますが、そんな新幹線の電車が自走して来る踏切が、日本で1か所だけあります。しかも大動脈である東海道新幹線にです。
フル規格の「新幹線の踏切」は日本で1か所
新幹線が高速で走ることができる理由の一つに、「踏切がない」ことがあげられます。ただ静岡県浜松市には日本で唯一、フル規格の新幹線が走り抜ける踏切が存在します。実際に新幹線に乗ってこの踏切を「通過」してみました。
「フル規格新幹線」とは、主な区間を時速200km/h以上で走り、踏切を排除した直線的なルートで建設された新幹線を指します。東海道、山陽、九州、西九州、東北、北海道、上越、北陸新幹線がこの「フル規格」に該当します。在来線規格で新幹線に直通が可能な「ミニ新幹線」を採用した山形・秋田新幹線には、在来線区間に踏切が存在します。
世にも珍しい「フル規格新幹線の踏切」が存在するのが、東海道新幹線の本線から、JR東海の浜松工場へ至る引き込み線です。正式名称は「西伊場第1踏切」といい、浜松工場の手前に位置しています。JR浜松駅からは直線距離で2~3kmほどの場所です。
浜松工場は、主に新幹線車両の整備を行う場所で、車両から部品を取り外して細部まで検査や修繕を行う「全般検査」が東海道新幹線で唯一可能な工場となっています。この浜松工場に出入りする新幹線が引き込み線を走る際に、踏切を通過する光景を見ることができるのです。
踏切は通常、フェンスで線路側が閉鎖されており、列車が通る時に作業員がフェンスを開けて警報機が鳴るという、かなり変わった形です。
浜松工場「直通」の臨時列車で“通過体験”が可能
浜松工場の一般公開イベントで「会場直通」の臨時列車が運行されるケースでは、この踏切を新幹線に乗ったまま通過するという、珍しい体験が可能となっています。
直近では2024年10月19日(土)と20日(日)の2日間、東海道新幹線開業60周年企画として、浜松工場が一般公開されました。このイベントは、首都圏、中部、関西、静岡地区から団体専用列車で浜松工場に直接入場し、「ドクターイエロー」や工場に入場中のN700系、保守用車などを見学できるツアーでした。このイベントで、東京駅から浜松工場まで直通する列車に乗ってみました。
東京駅から浜松駅までは、通常の新幹線と何ら変わらないルートで走ります。「非日常体験」が始まるのは、その先の区間からとなります。列車は浜松駅を過ぎると、その先でしばらく停車。ここで通常の運転士から浜松工場に所属する運転士に交代し、スイッチバックして浜松工場への引き込み線に入線します。
この引き込み線の最高速度は30km/hで、新幹線とは思えないほど、ゆっくりと走ります。東海道新幹線では、定期列車が走る区間でスイッチバックすることはないため、逆向きに流れる車窓も新鮮です。
列車はいつの間にか高架から降りて地上を走っており、住宅地の中を走ります。そして工場に到着する寸前で、踏切を通過しました。「一瞬」の出来事でしたが、踏切には列車が通過する前から、多くの人が集まっていたようです。列車はそのまま、工場内にあるホームに滑り込みました。
乗っている分には一瞬ですが、東海道新幹線のN700系列は16両編成で、全長は電車としては日本一長い404m。30km/hでの踏切通過は、外からは相当長く感じるはずです。
JR東海によると、今回のツアーは発売から3日間で全て完売したそう。新幹線唯一の踏切を車内から体験したいという人は、浜松工場へのツアーが発売された際に、早めに予約するのが良いでしょう。
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