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なぜ「世界最強の空軍」は次世代戦闘機を開発しないのでしょうか 危機感なさすぎでは?

乗りものニュース / 2024年11月25日 6時12分

2024年10月に東京お台場で開催の「2024国際航空宇宙展」で展示されていた日英伊共同開発の次世代戦闘機GCAPのスケールモデル(乗りものニュース編集部撮影)。

世界中で次世代戦闘機の開発が過熱する中、圧倒的な空軍力を持つアメリカだけが、その開発に慎重な姿勢を見せています。なぜ、世界最強の空軍は、新たな戦闘機の開発を急がないのでしょうか。

第6世代戦闘機の定義は?

 近年、航空機業界において最も注目を集めている動向のひとつが「第6世代戦闘機」の開発競争です。日本はイギリス、イタリアと共同で次世代戦闘機を開発する「グローバル・コンバット・エア・プログラム(GCAP)」に参画し、フランス、ドイツ、スペインも「フューチャー・コンバット・エア・システム(FCAS)」共同開発を進めています。また韓国ではKF-21を、トルコは「カーン」の試作機の初飛行をそれぞれ行っており、世界はかつてないほどの戦闘機開発ブームを迎えています。

 しかし、この熱狂的な状況の中で、異様な静けさを保っているのが、アメリカ空軍です。同国では「ネクスト・ジェネレーション・エアドミナンス(NGAD)」計画が存在するものの全く進展しておらず、具体的な開発がスタートするどころかキャンセル説まで浮上するなど、その行方は不透明です。なぜ、アメリカは他国のように、次世代戦闘機の開発を急いでいないのでしょうか。

 その理由のひとつとして考えられるのが、アメリカ空軍が「第6世代戦闘機」に求められる性能の定義を、まだ明確に定めていないことでしょう。実のところ「第6世代戦闘機」という言葉が近年、頻繁に用いられるようになっていますが、この概念自体が非常に曖昧です。

 F-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」に相当する現行の第5世代戦闘機が、高いステルス性や超音速巡航(スーパークルーズ)能力、優れたネットワーク性能などといった特徴を持っていたのに対し、従来の戦闘機とは全く異なる能力が求められると言われる第6世代戦闘機が、具体的にどのような機能が必須なのか、議論がまとまっていないようです。

 例えば「AIの活用」や「無人機の連携」などが話題になりますが、これらは第5世代戦闘機も近代化改修で付与することは可能でしょう。何なら第4世代戦闘機であるF-15でさえ十分行えるとさえ言われています。

NGAD計画が動き始めたら…

 実際、アメリカ空軍は、F-35というステルス性や情報処理能力などを高いレベルで統合した高性能な戦闘機をすでに多数保有しており、当面はF-35の性能向上や、新たな兵器システムとの統合を進めることで、十分な戦力維持が可能だと考えているのかもしれません。さらに現在開発中の次世代爆撃機B-21「レイダー」にNGADのミッションを部分的に担わせるという案もあるようです。

 もっと言うと、アメリカ空軍は新しく開発される日欧のGCAPやFCASなど他の国の戦闘機が、当面はF-35以上の性能を持つとは思っていない可能性もあります。さらに中国ではJ-20やJ-35、ロシアではSu-57などといった新戦闘機の開発を進めてはいますが、これらもF-22やF-35相当の第5世代戦闘機に留まると考えられます。

 今後、アメリカ空軍がどのような判断を下すのか、注目が集まります。もし、アメリカ空軍がNGAD計画を本格的に推進すると決断すれば、世界中の航空・軍事業界に大きな影響を与えることになるでしょう。一方で、アメリカ空軍がF-22やF-35の性能向上に注力し、新たな戦闘機の開発を遅らせるという可能性も考えられます。

 いずれにしても、アメリカ空軍の動向が、今後の戦闘機開発のトレンドを大きく左右する重要な要素となるのは間違いないでしょう。

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