消滅寸前! 40年以上新造なしの車両とは? 東海・四国はすでに決別「JRよ、なぜ使わない」
乗りものニュース / 2024年11月27日 7時12分
今でも根強い人気を残す「ブルートレイン」をはじめとした客車列車。しかし、機関車が客車を牽引する機会は減る一方です。観光列車やイベント列車ではまだ需要がありそうですが、なぜJR旅客6社は止めてしまうのでしょうか。
客車列車が減少する3つの要因
JR東日本ぐんま車両センターに所属する電気機関車とディーゼル機関車が、今年(2024年)11月に運転された臨時列車を最後に、旅客列車の運転から引退します。このところJRグループの旅客会社では、機関車が客車を牽引することが減っています。この背景には、どのような事情があるのでしょうか。
かつて、列車といえば機関車が客車を牽引する、いわゆる「客車列車」がメインでしたが、1960年代を境に電車や気動車(ディーゼルカー)が全国に普及し、客車列車は数を減らしていきました。最後まで残ったJRの定期客車列車は寝台特急、いわゆる「ブルートレイン」でしたが、これも2015年の「北斗星」を最後にすべて廃止され、現在では臨時列車、ツアー専用列車として、限られた本数が不定期に運転されるだけとなっています。
昨今、客車列車が極めて少なくなっている要因は、大きく分けて「車両の老朽化」「運転上の取り扱いが不便であること」「運転士の確保が難しいこと」の3点が挙げられます。ひとつずつ見ていきましょう。
現在、JRの旅客会社が保有している機関車は、JR九州が保有する入換用機関車DD200形とクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」用のDF200形7000番台を除き、国鉄時代に製造されたものばかりとなっています。一番新しい機関車であるJR東日本のEF64形1053号機でさえ1982年10月の製造であり、40年以上もの年月が経過し、老朽化が進んでいます。
路線保守用の事業用車両ですら機関車牽引は消滅へ
かつては機関車の老朽化に伴い、JR東日本では主に寝台特急「北斗星」と「カシオペア」用として、2009年からEF510形500番台を15両製造しましたが、運転終了によって2016年までにすべてがJR貨物に売却されています。このことからも、今後新しい機関車を導入するというのは望み薄といえるでしょう。
機関車は、運転上の取り扱いに配慮が必要です。電車や気動車は折り返しの際、運転士と車掌が交代するだけで済みますが、機関車による列車の場合、機関車を先頭に連結し直す「機回し」という作業が必要になります。これだと、列車が停車している線路だけでなく、機関車を回送させる別の線路も必要で、折り返しにかかる時間や連結作業を行う人員などが電車や気動車よりもかかり、今でいうタイパ(タイムパフォーマンス)、コスパ(コストパフォーマンス)が悪いのは明らかです。
他にも、運転士に関して、電車や気動車と機関車で運転感覚が異なるのもネックでしょう。電車や気動車なら、編成の中に動力車が複数あり運転台で一括制御できるのに対し、機関車が牽引する列車の場合、動力車は機関車しかありません。このため、加速やブレーキなど、逐一きめ細やかな操作が必要となります。
一方で、機関車が列車を牽引する機会が激減している昨今、その運転感覚を維持し続けることは難しくなっています。機関車の出番は主に、レールや線路の砂利(バラスト)などを運ぶ事業用車両の牽引となっていますが、これまた日ごろ電車や気動車を運転している運転士でも違和感なく操作できるよう、電車・気動車型の事業用車両の導入が進んでいます。
客車列車は消えるのに貨物列車が残るのはなぜ?
すでにJR東海とJR四国では、本線上を走行できる機関車が全廃されています。機関車の老朽化、そして事業用車両の電車・気動車化が進む流れを考えると、近い将来JR旅客会社に残るのは動態保存されている蒸気機関車だけになってしまうかもしれません。
とはいえ、蒸気機関車も老朽化には抗えません。大正時代に製造され、動態保存される過程で大部分が新造部品に置き換えられたJR九州の8620形蒸気機関車が老朽化で運転を終了したように、蒸気機関車もずっと動態保存し続けられるとは限らないのです。
このまま機関車は役割を終えてしまうのでしょうか。ところが、貨物列車の分野では、むしろ機関車が牽引した方が、効率が良いといえます。
電車はある程度固定された編成を維持しなくてはなりませんが、貨物列車においては需要に応じて輸送量が変化し、必要な貨車の両数も増減します。こうした変化に柔軟に対応できるのが、機関車が牽引する列車の特徴です。
旅客会社からは姿を消しつつある機関車ですが、JR貨物では主力として活躍が続きます。
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