米「微妙…」英「いらねえ…」ソ連「メッチャ使いやすいけど?」全然評価が違う! 大戦中に使われた空飛ぶコブラとは
乗りものニュース / 2025年1月3日 19時12分
ヘビにちなんだ兵器は数多ありますが、第二次世界大戦時にほぼ全域で使用されたP-39「エアラコブラ」は、運用国によって全く評価の違うことで有名です。なぜ、そこまで国によって評価が違ってしまったのでしょうか。
当初は高高度で戦う戦闘機のはずだった…
ヘビにちなんだ兵器は数ありますが、第二次世界大戦のほぼ全域で戦ったP-39「エアラコブラ」ほど使った場所は人によって評価が分かれる機体はありません。
同機は、1930年代初頭にアメリカで開発が始まりました。後になってみればいらない心配ではあったのですが、当時アメリカは4発の長距離かつ高高度を飛行できる爆撃機を開発していました。そこで「敵も同じことをしてきたら…」と軍関係者たちは思慮します。結果、大型爆撃機の侵入に対応できる高高度迎撃機をアメリカ陸軍が要望した結果、1937年にベル・エアクラフトが提案したのが同機でした。
当初「モデル4」と呼ばれたP-39は、高高度飛行に備えターボ・チャージャー(排気タービン過給機)付きのアリソンV1710液冷エンジンを搭載することが考えられました。さらに、エンジンを中央に配置するという「ミッドシップ・レイアウト」を採用。このエンジン配置により、機首部分に余裕ができたため、大口径37mm機関砲をプロペラ軸中央に備え、一撃で爆撃機を撃破する火力を持ったかなり野心的な迎撃機となりました。
しかし、諸々の事情でアメリカ陸軍航空隊は高高度迎撃戦闘機の役割を双発機に委ねることに決定。その結果、高高度能力は不要となったことでターボ・チャージャーは外され、低高度から侵入する敵機へ対応できるように設計が変更されました。
ただ、高高度で使う予定だった機体を低空向けにしたからといって優秀な性能がそのまま維持されるはずもありません。ほどなくして対日戦が始まり、第二次世界大戦へ本格参戦すると、低空での軽快な機動力を誇る零式艦上戦闘機や一式戦闘機「隼」を始めとした日本軍機に一方的にやられるようになります。なお、日本軍はその見た目から「かつお節」などと同機を呼びました。
問題は重武装に対して、あまりにエンジンパワーが不足していることにありました。P-39は37mm機関砲のほかに、12.7mm機関銃を機首に2丁、翼内に4丁も備えていました、流石にここまで“重り”を積んだ状態で、低空でのドックファイトが得意な日本陸海軍機を相手にするのは厳しく、苦戦は必至でした。
イギリスは受け取り拒否 アメリカでは一定の評価
戦闘機不足に悩み同機をアメリカから購入したイギリスでもその評価は散々で、「カリブー」と愛称を付けたものの、あまりの低性能にほとんどの機体の受領を拒否。最終的に第601飛行隊に4機配備されたのみで、1941年8月からしばらくの間、海上の艦艇攻撃に使用されたようです。
このように、イギリスでは散々な評価だったものの、実はアメリカ陸軍では局地戦闘機とならそこまで悪い評価を下していません。
1942年8月から1943年2月まで行われたガダルカナルの戦いでは、長距離を飛行してくる日本海軍の陸上攻撃機に有効な防空戦力となったほか、豊富な機関銃や37mm機関砲の威力を活かして地上攻撃や艦艇攻撃などにも投入されています。高高度戦闘機から衣替えした時点で、機体に防弾板などが増設されたこともあり、日本軍の対空砲火を受けても、生残性が高かった点も評価されました。
このガダルカナルの戦いでは、同機によるアメリカ軍唯一のエースパイロットも生まれています。パイロットの名はウィリアム・F・フィードラー。彼は、大型機の撃墜のほかにも、機銃掃射中の零戦(零式艦上戦闘機)などを撃墜しています。
しかし、同機を最も高く評価したのは、母国アメリカではありません。イギリスが拒否した「いらない子」扱いとなった機体を引き取ったソビエト連邦(現ロシア)です。
ソ連では優れた性能を発揮し愛される結果に
実はソ連軍の大戦中のエースパイロット上位5人のうち、2位のアレクサンドル・ポクルィシュキン、3位のニコライ・グライエフ、4位のグリゴリー・レチカロフの3人が撃墜記録を多く上げたのがP-39になります。
なぜ、ソ連ではそこまで評価がよかったのか。それは、ソ連が戦ったドイツ軍機の戦法に原因があるのではと言われています。ドイツ軍戦闘機は当時、中高度以上の空域での一撃離脱を空戦の基本としていました。P-39はその一撃をかわした後ならば、低高度で機動戦が苦手で逃げるドイツ機を、スピードを活かして追いかけ、戦闘を優位に進めることができたためです。
また低空で地上攻撃や爆撃をすることが頻繁にあったJu 87「スツーカ」やJu88爆撃機相手にも威力を発揮したといいます。皮肉にもアメリカが大型爆撃機への攻撃を諦めた機体であったことで、ドイツ空軍が得意としている急降下や低空侵入での爆撃を数多く阻止する結果となりました。
ソ連では、その活躍ぶりから同機を「コブルシュカ(可愛い小さなコブラといった意味)」などと呼び、重用しました。ちなみに、同機はオーストラリア空軍や、停戦後に連合軍側に立って参戦したイタリア共同交戦空軍などでも使用されましたが、やはりそれほど高く評価されていません。言うなれば、ソ連だけでとにかく格段に評価が高い機体となっています。
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