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古くから伝わる「お医者さんはボルボが好き」説 “そりゃそうでしょう”な理由とは? 実は世界中で!?

乗りものニュース / 2025年1月4日 19時12分

ボルボXC90。いまでも「お医者さんのクルマ」と呼ばれることがある(画像:ボルボ)。

質実剛健かつ安全性の高いクルマ、というイメージを揺るぎないものとしているボルボには、古くから「お医者さんのクルマ」というイメージも存在します。それは、ボルボが日本で初めて販売された頃からありました。

ボルボ=「お医者さん」イメージ 日本でもいきなり!?

 戦前から質実剛健な開発で知られ、合理的かつ頑丈なイメージを持つスウェーデンの自動車メーカー・ボルボ。古くから「世界一安全なファミリーカー」という評価を受け、高品質なモデルばかりをリリースしてきたブランドです。

 日本でも信頼性が高いですが、ボルボを指し、特に年配世代の方からよく言われるのが「ボルボって、お医者さんが乗るクルマだよね」「だから信頼できるよね」といったもの。

 ただ、日本においてボルボの本格的な輸入が始まり、一般に広まり始めたのは1974年以降のことです。ちょうど今から50年前ですが、どうして情報が今ほどにない時代に「お医者さんが乗るクルマ」というイメージを植え付けることができたのでしょうか。その背景には、ボルボが世界中で進めてきた販売戦略があるのです。

 古くからボルボでは北欧、ヨーロッパ、アメリカなどで販売する際、主に医師・軍人・警察といった公共性のある職種の組合と提携し、組合員限定の割引制度を採用してきました。

 特に「医師組合での割引」はその筆頭で、日本で輸入販売が始まった1974年にもその販売手法が持ち込まれました。

 それまでの日本の輸入車では、あまり見かけない販売手法でしたが、これをすんなり始めたのが、日本におけるボルボの総代理店として新設された会社「帝人ボルボ」でした。

 母体の帝人はもともと医療用医薬品、ケミカル繊維などを扱う総合化学メーカーであり、「お医者さん」との親和性が高い会社です。そのため、世界中で展開していたボルボの「医師組合の限定割引」の販売手法を、日本でもそのまま始められたように感じます。

 また、全くの余談ですが、「ウチのお父ちゃんはね」という甲高い声で人気を博した帝人の社長夫人・大屋政子さんも、亡くなるまでボルボを愛用していました。経営トップの近親者ですから割引もヘッタクレもないでしょうが、当時の富裕層の間でも「乗っていて恥ずかしくない」クルマだったことを示しているように感じます。

真似っこの他社とは違うのだよ!!

 後に帝人ボルボは抹消され、ボルボ100%出資のボルボジャパン(現・ボルボ・カーズ・ジャパン)に輸入販売権が移管された後も、もちろん医師組合での割引販売は継続されました。

 日本の医師組合でのボルボの割引率は、おおむね1-2割。数百万円の輸入車であることを踏まえれば高めの割引率とも思えますが、しかし日本の医者だって、それくらいの割引だけで高額なクルマをチョイスするはずはありません。やはり、冒頭で触れたような「ボルボ特有の質実剛健な開発」に信頼を寄せ、それが医者の間で広まっていったのだろうと推測できます。

 ちなみに、ボルボが打ち出した医師組合などへの割引販売手法は、後にメルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどもこぞって採用するようになりました。そのため、今日では「お医者さん=ボルボ」といった固定イメージは薄まりましたが、今もなお「ボルボに乗っている」というお医者さんがいれば「チャラついていない真面目そうな先生」と好印象を抱くのは、筆者だけではないように思います。

 ボルボはその質実剛健な自動車開発の中でも、特に安全性へのこだわりは強く、1970年には事故調査隊という社内チームを結成しています。ボルボ車が起こした交通事故の現場に駆けつけ、クラッシュ時の状況を調査・記録し、以降のモデル開発に役立て続けた歴史があります。

 こういった特有の取り組みもまた、日本のお医者さんたちが信頼を寄せた大きな理由ではないかと思います。

お医者さんから譲ってもらったボルボ

 ところで、筆者は今から20年ほど前、ボルボのヒットモデル「240」の前身にあたる「244」というクルマに3年ほど乗っていた時期があります。

 240の評価が高まった影響で、今や中古車市場で300万円以上もするクルマですが、当時は「誰も知らないマイナー車」にすぎず、ワンオーナー・約5万kmほどの個体を個人売買で約20万円にて購入しました。

 元のオーナーはやはり年配のお医者さんでした。当時すでに“30年落ち”でしたが、それにしては燃費が良く、大切に乗られていた個体だったこともあり、実用に全く不便がなかったことを強く記憶しています。

 また、家族は14年以上、「V70」に乗り続けています。V70は車体が大きめでドアも分厚く、なんだか重い一方、やたらと小回りがきく乗りやすさから、「14年落ち」で高くなった重量税を払ってもなお「ファミリーカーとしてこれ以上のクルマはない」として乗り続けています。

 ボルボの「丸に右上の矢印」ロゴマークは、通称「アイアンマーク」と呼ばれます。もともとは中世ヨーロッパの錬金術師たちの間で「鉄」の意味を持つシンボルマークです。ボルボが古くから目指してきた「高品質・頑丈・信頼性のある自動車開発」の思いを「鉄」のイメージに合わせて採用したと言われています。

 こういったボルボのイメージと徹底した安全性へのこだわりが信頼を勝ち取り、結果的に「お医者さんが乗るクルマ」として日本で広まっていったのだと思います。

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