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「歩道上の駅入口」は貴重だった!? 3形態ある出入口「どこに置くか問題」は地下鉄の“悩みあるある”だった

乗りものニュース / 2025年1月3日 15時12分

日本橋駅の出入口(画像:写真AC)。

地下鉄駅の出入口は、古い路線だと道路の歩道上にあることが多く、新しい路線だとビルと一体化したものが多い傾向にあります。この背景には、東京メトロ(帝都高速度交通営団)の場合、戦前から連綿と続く地下鉄建設と整備ルールの深い関係がありました。

昔からある「地下鉄駅の出入口をどこに置くか問題」

 地上から線路の見えない地下鉄にとって、顔と言えるのが駅の「出入口」です。路線、駅によって出入口の様式は様々ですが、歩道上にあるものと、歩道に面しているもの、ビルなどの建物と一体化したものに分類できます。古い路線では歩道上にあるものが多く、最近の路線はビルと一体化したものが多いのはなぜでしょうか。

 日本最古の地下鉄、銀座線浅草~渋谷間の建設にあたっても出入口の設置は悩みのタネでした。駅の乗降客数に必要な出入口数と寸法は、ニューヨーク地下鉄の基準を参考に、階段1フィート(約30cm)ごとに毎時1000人が通過できるとみなして算出しましたが、その出入口をどこに置くかが問題でした。

 歩道や中央分離帯に出入口を設置したニューヨークやベルリンの地下鉄に倣い、出入口を歩道上に設置したい考えでしたが、簡単には認められません。歩道の利用が認められないと、沿線の一等地を用地買収しなければならず、事業として成立しません。

 国や東京市は当初「各停留場出入口ハ歩道有効幅員ヲ縮小セシメザル様設置スルコト」として事実上、不可能に近い条件を提示しましたが、最終的に12フィート(約3.7m)の幅員を確保すれば設置を認めることになりました。

 協議の過程で市は、道路を使用したいのであれば、出入口を地下横断歩道(自由通路)として使えるよう要求するようになり、その結果、銀座線の末広町以北の駅は浅草、上野を除き階段を降りるとすぐホームなのに対し、神田以南の駅はいずれも「中二階」を設ける設計になりました。

 これは1960年代まで、道路使用条件のひとつに「各駅の出入口は、原則として、一般歩行者が道路の地下横断連絡通路として利用できる構造とすること」を掲げる形で引き継がれました。

 出入口の問題は場所だけではありません。階段を覆う柱や屋根など「上家」で交差点の見通しが悪くなっては危険なので、国や市は「上家ヲ設クル場合ハ占用面積ヲ最小限度ニ止メ、且車道ヨリ店舗ヲ透視シ得ル構造ト為スコト」との条件を加えました。

1960年代後半から地下鉄駅出入口の事情が変わった

 ビルと一体化した出口としては、浅草、上野、神田、渋谷など自社ビルと一体化したもの、三越前や上野広小路など、デパートの費用負担で地下鉄連絡口を設置したものがあります。

 また、赤坂見附駅はトンネルが道路を外れて通過するため、民地を取得し、道路外に出入口を設置しました(駅ビル化は1970年代のこと)。このように、出入口の3形態は地下鉄誕生当初からあったことが分かります。

 戦後に建設された地下鉄新線も概ね銀座線の基準が踏襲されました。道路は国道、都道、区道などに分類され、それぞれの管理者に対し占用許可を求める形になりました。例えば丸ノ内線新宿三丁目駅は、新宿三丁目交差点の歩道幅員が狭いため、歩道上の出入口は1か所しか(現存せず)設置が許可されず、交差点の見通しの関係上、上家の設置も認められませんでした。

 また、珍しい事例としては、御茶ノ水駅は一帯が風致地区に指定されていたため、こだわった意匠設計を取り入れました。この「丸ノ内線御茶ノ水駅出入口上家」は2023年に国の登録有形文化財に登録されています。

 続く日比谷線、東西線の頃になると、出入口の用地買収にあたり地権者から1階を出入口、2階以上を地権者のビルとする案が提示されるなど、大手企業のビルやデパート以外と一体化した出入口も増えてきます。

 事情が変わったのは1960年代後半以降です。これまでの地下鉄は、いわゆる大通りに建設されたため、歩道に出入口を設置する余裕がありました。しかし既存路線のバイパス路線である千代田線や有楽町線は、幅員の狭い裏路地を走る区間が多々あります。

 当然、歩道は狭いか無いに等しく、出入口を設置することができないので、出入口用の民地を取得しなければなりません。また、この頃から歩道上への出入口設置のハードルが上がりました。有楽町線の認可事項には「出入口は、原則として道路区域外にすること」や、「通風口及び出入口にあっては、道路の敷地以外に適当な場所がない場合に限る」との文言が登場します。

 もっとも千代田線、有楽町線、半蔵門線には、やむを得ず歩道上に設置した出入口は多数ありました。しかし1990年代以降の南北線、副都心線では、ほとんどの出入口がビルと一体化しました。近年はバリアフリー対策が必要になり、事業者から隣接する地権者に呼び掛けて、エレベーター口を併設したビルを建設したり、用地を新たに取得して出入口を新設したりする事例も増えています。

 なお、一見すると歩道上にある出入口も、よく見ると歩道に接する民地内に設置されていることがあります。また、千代田線・副都心線明治神宮前駅の神宮前交差点付近の出入口のように、既存路線と新路線が出入口を共有しており、見かけ上、新路線の出入口が歩道上にあるように映ることもあります。出入口は文字通り、奥深いのです。

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