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異例の「JRきっぷで他社の高速バスOK」から5年 競合がタッグ組んだローカル線「予想以上の成果」

乗りものニュース / 2025年1月2日 15時12分

JR牟岐線の1500形気動車(安藤昌季撮影)。

徳島~阿波海南間を結ぶJR牟岐線は77.8kmのローカル線です。その末端、阿南~甲浦間では地域の足を守るため、JR四国と徳島バスが異例の連携をしています。どういうことでしょうか。

末端へ行くほど鉄道利用は少ないが…

 徳島~阿波海南間77.8kmを結ぶJR牟岐線は、阿南までの都市近郊路線の性格と、阿南~阿波海南間の閑散路線の側面をあわせ持つ路線です。輸送密度も大きく異なり、徳島~阿南間の平均通過人員は3964人。これは土讃線や予讃線の松山駅以西よりも多い数字です。対して阿南~牟岐間は427人、牟岐~阿波海南間がJR四国で最も少ない153人。いずれも2023年度の数値です。

 徳島~阿南間は高速化工事が行われ、最高速度は110km/hへ向上。日中も30分間隔で運行されています。その一方で阿南~阿波海南間は2019年より4往復減便され、運行間隔が2時間空く時間帯も生じました。

 こうしたなか、徳島県はJR四国へ対し、牟岐線と並行する徳島バスの「室戸・生見・阿南大阪線」を活用できないかと提案したのです。

 これにより、鉄道とバスの時刻を調整して運行間隔をならすだけでなく、阿南~甲浦間(阿波海南~甲浦間は阿佐海岸鉄道)では鉄道のきっぷや定期でも室戸・生見・阿南大阪線に乗車できるようにしたのです。バスの途中乗降区間を現金で利用する場合はバスの料金が必要ですが、競合する区間で手を取り合った画期的施策といえます。

 では、牟岐線および室戸・生見・阿南大阪線はどのような利用がなされているのでしょうか。2024年11月の月曜日、実際に乗車してみました。

 牟岐線は徳島13時30分発の普通列車(4549D)です。2006(平成18)年から2014(平成26)年にかけ製造された1500形で、転換式クロスシートにトイレもある快適な気動車です。なお、一部列車では国鉄型キハ40・47形も運行されています。日中でしたが、40人程度が乗車していました。

 徳島は「水都」と呼ばれるほどで、牟岐線も令田川、國瀬川、勝浦川などを多くの鉄橋で越え、水路も線路に並走します。特に阿波中島駅を過ぎると、200m以上の川幅がある那賀川を大鉄橋で越え、見ごたえがありました。

やって来たのは豪華な高速バス

 阿南駅で下車しました。同駅以南は山がちで市街地は少なくなり、田井ノ浜周辺や牟岐駅以南では海の景色を楽しめます。

 阿南駅はエレベーターも設置された地域の拠点駅で、改札口前に掲示されたモニターには、列車と並んで徳島バスの時刻が表示されていました。ここ以南は、鉄道のきっぷ・定期で徳島バスも利用できるからです。バス停留所の位置も地図で示されていました。

 バスの阿南停留所は、高速バスと路線バスに分かれています。高速バスは商工会議所が入居するビルの正面、路線バスはその裏に停留所があります。「室戸・生見・阿南大阪線」と表記された高速バスが、JRのきっぷで乗車できるバス路線です。

 高速バスは、大阪の南海なんば駅前から阿南を経由して室戸まで向かう路線で、全区間乗車すると6時間22~49分の長距離路線。松茂~室戸間は約4時間かけ一般道を走り、一般道を走る時間が日本有数に長い高速バスです。バスは阿南駅停留所に15時33分に到着しました。1+1+1列の豪華バス「メリー号」には、レッグレストや肘掛け内テーブル、トイレまで付いています。

 到着時点で乗車率は90%ほど。3人が乗車して、3人が下車しました。15時47分に橘営業所に到着。トイレ休憩として16時まで停車し、その間には給油とトイレの吸出しも行われました。阿波橘駅からは1.5km離れていますが、阿波橘駅までのきっぷでも乗れます。

 橘営業所の竹上所長に話を伺うと、「JRのきっぷでも乗れるようになってから、週末は特に盛況で、満席で乗れないこともある」とのことでした。

 次は牟岐線の駅もある由岐を目指します。人家がない鉄道沿線とは異なり、道路脇には民家や商用施設が点在していました。16時25分、由岐停留所着。乗降客はないようでした。

 16時33分、日和佐停留所着。道の駅「日和佐」はJR駅にも近く、2人が下車しました。乗車したのは地元の学生1人でした。

予想をはるかに上回る利用

 出発すると牟岐線と並走しますが、ほぼ線路は見えません。国道56号をしばらく進み、線路が見えだすと急に人家が増え、16時58分に牟岐停留所に到着しました。6人が下車し、その中には日和佐からの学生もいました。

 乗車はなく、出発。17時12分着の浅川停留所は、浅川駅から70mほどの場所にあります。1人が下車し、乗車はありませんでした。

 市街地を走り、17時17分に海部高校前停留所に到着。ここは2023年に新設され、牟岐線の終着駅である阿波海南駅に近い場所です。1人が下車しました。

 ダイヤ通りなら17時8分着なので、遅れは9分。ちなみに阿南~阿波海南間は、牟岐線だと14駅停車で1時間18分。徳島バスだと5停留所停車で、1時間35分です。

 鉄道とバスとで実用的なダイヤに調整することで、地元の足として定着している印象を受けました。JR四国との共同運行について徳島バスは、「きっかけは2019年のJR四国様のダイヤ改正です。徳島県が調整役となり、当社の高速バスで牟岐線と並行する停留所の途中乗降を可能とし、JRとの乗り継ぎを考慮としました」と話します。

 ただ、この時点ではダイヤや運賃の共用化は考えていなかったそう。バスとJRの運賃が異なることで、利便性に課題があったのです。国土交通省より特例法の紹介を受け、JR四国へ共同運行を持ちかけて実現に至りました。

「2021年度の阿南~甲浦間の利用実績は541人で、計画では2023年度に590人になると予想していました。ところが予想に反し2557人と大幅に増加したのです。特に2023年5月、海部高校前バス停を新設し隣接する阿波海南駅と共同化したところ、年間355人に利用いただきました。鉄道のきっぷとバスの現金支払いの利用者数についても、2022年に1日5.69人だったのが、2023年は6.96人と増加しています。現状で共同運行を拡大する予定はありませんが、予想以上の成果です」(徳島バス)

 全国的にも珍しい取り組みですが、これまでは成功のようです。他所でも適用できるケースがありそうだと感じました。

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