山手線内“大幅値上げ”で崩れる「中央線最強説」 他社まで揺さぶるJR東日本の運賃改定の“衝撃ポイント”
乗りものニュース / 2024年12月23日 7時12分
JR東日本が大幅な値上げを発表しました。とりわけ大きな値上げとなるのが「東京のど真ん中」区間です。これまでが「安すぎた」のでしょうか。東京の鉄道の均衡が大きく崩れる可能性も秘めています。
「電車特定区間」「山手線内」の値上げ率が高い
2024年12月6日にJR東日本が運賃の値上げを行うことを発表しました。実際に値上げが行われるのは2026年3月と、まだ1年以上も先のことになります。国鉄が分割民営化されJR東日本が発足してから約39年間において、初めて(消費税率の引き上げや、バリアフリー料金制度の導入を除く)となる値上げについて紐解いてみます。
JR東日本が発足した1987年、日本はバブル景気の真っただ中にありました。以来約39年間、バブル崩壊やリーマンショックなどの不景気、東日本大震災などの災害があったにも関わらず、運賃値上げを行うことなく鉄道の運行を維持してきたことは、JR東日本の企業努力の賜物であったといえそうです。
今回のおもな値上げは次の4点となります。
・「電車特定区間」「山手線内」の割安だった運賃区分を「幹線」に統合する
・普通運賃平均7.8%、通勤定期平均12.0%の値上げ
・きっぷの場合、1円単位の端数を四捨五入から切り上げに
・通勤定期の有効期限6か月の割引率の見直し
値上げする一方で、配慮された料金もあります。
・鉄道駅バリアフリー料金を廃止する
・通学定期は改定しない(ただし「電車特定区間」「山手線内」は幹線と統合するため値上げあり)
・特急料金は値上げ対象外
値上げにより初乗り運賃は、これまで「電車特定区間」「山手線内」が146円(きっぷ150円)、「幹線」が147円(同150円)だったものが、155円(同160円)となります。
なかでも今回の衝撃ポイントと言えるのが「山手線内」の運賃の値上げ率です。
これでいいのか中央線!
「山手線内」は、これまでJR東日本でもっとも割安に設定されていたこともあり、幹線に統合されることで、普通運賃が16.4%、通勤定期にいたっては22.9%もの値上げになります。
金額にすると、東京~新宿間の運賃がこれまで208円(きっぷ210円)だったものが253円(同260円)と、ICカード利用で45円、きっぷ利用で50円もの値上げになります。同区間の1か月定期券だと6290円だったものが7840円となり、1550円の値上げです。
東京~新宿間は並行する東京メトロ丸ノ内線が209円(IC)です。中央線快速の方が5分ほど早いですが、どちらを選んでもほぼ同じ運賃でした。「山手線内」の運賃が他社との競争力をもち、それが利便性につながっていました。
値上げ後注意の「東海道線&東海道新幹線」
なお、長距離移動の運賃の金額差は、東京~新青森間は1万340円が1万780円に(+440円)、東京~新潟間は5720円が5940円に(+220円)、東京~松本間は4070円が4180円(+110円)に値上げされます。距離を考えるとやはり、東京都心部の値上げ率が際立つところです。
ただ、こうした長距離移動できっぷ購入時に気をつけなければならなくなるのが、東京~熱海間のきっぷの扱いです。
これまで同一区間と見なされていた東海道本線と東海道新幹線の東京~熱海間において、在来線と新幹線が“分離”されます。そのため、この区間は普通乗車券の売り分けが行われることになり、在来線経由のきっぷで新幹線に乗ることはできなくなり、新幹線経由のきっぷでも在来線に乗ることはできなくなることが大きな注意点です。
しかし、これは静岡県のJR東海エリアから東京へ通勤・通学する人などにとって、利便性を大きく損ねます。そこでJR東海の丹羽俊介社長は、JR東日本が値上げを発表した後の12月12日、定例会見において、「東京~熱海間の東海道新幹線の定期券は在来線の運賃に合わせて値上げする」考えがあることを発表しています。こうすることで通勤定期券、通学定期券いずれの定期券においても、新幹線と在来線のどちらも乗車できる利便性が維持されることになる見込みです。
また、JR東日本からJR他社へとまたがって乗車する場合の運賃は、現在の幹線の運賃を基準額として、その基準額にJR東日本乗車区間における値上げ相当額を“加算額”として加算した合計が運賃となります。
例えば大船から国府津乗り換え・御殿場線経由で御殿場へと幹線66.7kmを移動した場合、これまでは1170円でしたが、JR東日本区間である大船~国府津間の31.2kmについては加算額である30円をプラスすることとなり、合計した1200円が値上げ後の運賃となります。
※ ※ ※
JR東日本は約39年の歴史の中で初めての値上げに踏み切ることになりましたが、同時に、これまで取り組んできた安全や街づくり、地方創生、環境への取り組みと、将来に向けての取り組みの数々についても公表しています。
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