「母ちゃんこのバイクならどう!?」 ホンダの超カワイイ「ママさんバイク」の系譜 自転車みたいな“ラッタッタ”
乗りものニュース / 2025年1月3日 18時12分
1960年代から80年代にかけてのホンダは、幅広い層を取り込もうと、様々な「女性向けバイク」「ファミリーバイク」を生み出し続けました。自転車のような細いフレームや、女性が乗りやすい低床系バイクの系譜を振り返ります。
「ラッタッタ」の呼称で知られた大ヒットファミリーバイク「ロードパル」
1950年代、「カブ」のエンジンの開発によって国内外から大きな評価と注目を浴びることになったホンダですが、その歴史を辿ると、1960年代後半以降、積極的に女性ユーザーをバイクの世界へと巻き込もうとしていたように感じます。
「元祖ファミリーバイク」とも言うべき女性ユーザーを意識したモペット「リトルホンダ」(1966年)をリリース。さらに「モンキー」のきょうだいモデル的存在して登場した「ダックス」(1969年)は当初、アメリカのママ向けに開発したものでもありました。
また、1970年代に入るとファミリーバイクというジャンルの原付バイクを続々とリリース。ママ世代の女性にとって、便利で画期的なバイクばかりを提供してきました。
●ロードパル(1976年)
ホンダの女性向けファミリーバイクとして昭和世代に馴染み深いモデルの一つが「ロードパル」です。
開発時、ホンダ社内では当時の女性従業員に、スーパーカブに乗ってもらい「不満点」を聞いたところ「車体が重い」「スカートで乗れない」「キックスタートがキツい」といった結構ボロカスな声が集まったそうです。
それらの不満を全てクリアすべく開発されたのがロードパルで、モペットのような細く軽いフレームとし、楽に取り回しができるように工夫。また、当時の原付としては破格の5万9800円という低価格を実現。結果的に発売年は25万台ものヒットに至りました。
また、当時はロードパルの広告戦略も熱心に行われました。特にテレビCMで打ち出された「ラッタッタ」というキャッチコピーはロードパルの通称名にもなり、当時小学生だった筆者は、後年まで「ロードパル」という名称ではなく「ラッタッタ」というバイクなのだと誤解していました。
低床系のモデルは1年ごとに成長し、名を変えた“出世魚”状態に
●バリエ(1977年)
ロードパルの大ヒットで弾みをつけたホンダは、1977年に「男女ともに乗れるファミリーバイク」として「バリエ」をリリース。ホンダ独自のVベルト式オートマチック採用車で、ノーチェンジ・ノークラッチタイプ。オレンジとブラックのカラーリングは、どことなく読売ジャイアンツっぽい雰囲気があります。
低床のアンダーボーンフレームでもあり、乗りやすく扱いやすいバイクでしたが、ロードパルほどのヒットには至らず、発売翌年の「シャレット」にモデルチェンジされるカタチで生産終了。今となっては、ファミリーバイクの中でも最も希少な存在となっています。
●シャレット(1978年)
バリエで目指したとおぼしき「男女さまざまなニーズに応えるファミリーバイク」の思いは、かえってユーザーに曖昧な印象を与えたのか、後継車「シャレット」ではより女性ユーザーを意識した作りになった印象。ヘッドライトは低い位置へ移動し、その上にフロントバスケットがつきました。また、カラーリングも女性が好むような優しく淡いものとなりました。
ただし、このシャレットもまた翌年リリースの「カレン」にモデルチェンジ。バリエ以降、どんどん名前を変えていったアンダーボーンのファミリーバイクの系譜のうち、中盤に当たるモデルとなりました。
●カレン(1979年)
バリエ、シャレットに続き新たに登場した「カレン」は、その名の通り、より可憐となった印象のファミリーバイク。バリエやシャレットよりもさらにフロアステップが低くなった一方、フロントバスケットが深くなり、細部の見直しが施されているのがわかります。
ここまでの低床系ファミリーバイクの1年ごとのモデルチェンジと名称変更は、まるで出世魚のようにも感じますが、カレン以降は1983年まで、ロードパルとともにホンダのファミリーバイクの2モデルとして生産され続けました。
しかし、1980年代前半から巻き起こったスクーターブームによって、ロードパル・カレンともにその役目を終え双方とも生産終了になりました。
もう一つの系譜「細いフレーム系」
時代は前後しますが、ロードパルの大ヒットによって「細いフレーム系」のファミリーバイクも、少しずつ進化・派生モデルがリリースされていきました。
●パルホリデー&パルディン(1978年)
1978年発売の「パルホリデー」「パルディン」といったモデルは、ファミリーバイクのカテゴリーにありながら、ロードパルよりもアクティブになった印象で、どことなくレジャーバイクの要素が入ったモデルでした。特にパルディンは、マウンテンバイクのような雰囲気もあり、今見てもなかなかカッコ良く感じます。
しかし、ユーザーにとってみれば、前述のバリエのように「何用のバイクなのかがいまいちわからない」と受け取られたのか、ヒットには至らず発売初年モデルのみで、やがて姿を消していきました。
●パルフレイ(1978年)&ハミング(1980年)
また、ロードパルの系譜を持ちながらも、バリエ・シャレット・カレンのような低床の要素を取り入れた「パルフレイ」も1978年に登場。曖昧に受け取られぬよう発売時には「奥様向けホームバイク」と謳われ、安定した支持を得るようになりました。
後にパルフレイは1980年登場の姉妹的モデルの「ハミング」にその座を譲る格好となり、そのままフェイドアウト。
※ ※ ※
ここまでのホンダのファミリーバイクの変遷を振り返ると、かなりカオスに入り組んでいるようにも感じますが、女性ユーザー獲得を目指し、ホンダが模索し続けていた結果だといえば、おおいに納得することができます。
また、ロードパル、ハミング生産終了以降も、ホンダがファミリーバイクを完全にやめたわけではなく、1981年登場のシャリイ(シャリィ、シャリーとも)を後にファミリーバイクのカテゴリーの位置付けたり、1984年には、改めてモペットタイプの「ピープル」をリリースしたりと、女性ユーザーに寄り添うモデル開発を続けていたことがわかります。
1960年代後半以降、今日に至るまでホンダが取り組んだ「女性ユーザーの獲得」の変遷もまた、模索を繰り返しながらも日本のバイク市場を牽引した歴史と言って良いかもしれません。
そして、その象徴的バイクはやはり「ラッタッタ」ことロードパル。いつか、もう一度だけでもまたがってみたいものです。
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