「JR四国イチの赤字線」ポテンシャルありまくり!? 楽しすぎる列車たちとの“出会い” 「いっそ高知まで直通しては」
乗りものニュース / 2024年12月28日 15時12分
予土線の若井~北宇和島間は2023年度の平均通過人員が260人/日と、JR四国で最も輸送人員が少ない路線です。しかし風光明媚な風景や「Yodosen FunFun Trains」と呼ばれる観光列車群など見どころ豊富。乗車すると、伸びしろありな路線と感じました。
1駅だけ他社線を走る
JR四国で最も経営が厳しい路線は、高知県と愛媛県にまたがる予土線(若井~北宇和島)です。100円の収入を得るための経費を示す営業係数は1329円(2023年度)となっています。同社は路線を廃止する考えはないとしていますが、過去には沿線自治体によって「国鉄予土線存続期成同盟」が結成され、現在でも高知県・愛媛県と沿線自治体が「予土線利用促進対策協議会」を設置しています。
そのような予土線は四万十川の景観が楽しめる路線として、1984(昭和59)年に国鉄で初めてトロッコ列車が運行され、現在でも観光列車「しまんトロッコ」が運行されています。ほかにも「Yodosen FunFun Trains」としてシリーズ化された、個性あふれる列車も走ります。
全通は1974(昭和49)年ですが、前身の宇和島鉄道が宇和島~近永間を開通させたのは1914(大正3)年のこと。歴史は古いです。ただ全通後も利用は少なく、前出の同盟が結成されたのは1980(昭和55)年のことでした。
1988(昭和63)年、予土線とつながる中村線が土佐くろしお鉄道に転換され、窪川駅以西が土佐くろしお鉄道となりました。ただし、予土線には現在も窪川駅を発着する列車があるため、他の鉄道会社に1駅だけ乗り入れるわけです。では2024年11月時点で、予土線はどのような利用状況なのでしょうか。
高知方面から、窪川発の予土線で宇和島方面に向かう場合、最短で24分、最長では1時間17分待ちで、接続は微妙です。逆に宇和島方面から、窪川駅で土讃線に乗り換える場合は、最大1時間56分待ちとなります。予土線の始発列車が到着する直前や、最終列車が到着する直前に高知行き特急が出発してしまうダイヤなのは残念です。
トンネルや橋で直線的に走る
高知駅からの特急「時代の夜明けのものがたり」「あしずり3号」に接続する、窪川13時21分発の「しまんトロッコ1号」に乗車しました。
列車は専用塗装のキハ54形ディーゼルカーが、トロッコ貨車と一般車両を牽引するスタイル。デザイナー・水戸岡鋭治氏が手掛けた唯一のJR四国車両です。トロッコ利用(土佐大正~江川崎)には指定券が必要です。乗客は18人でした。
窪川駅を出ると右側に四万十川が見えました。次の若井駅では1人が下車。土佐くろしお鉄道の駅なので、駅名標がJR四国とは異なります。
若井駅を出てJR四国に。同社最南端の無人駅である家地川駅では1人が下車しました。次の打井川駅での乗降ゼロ。四万十川は線路から離れず、土佐大正駅まで並行します。
13時57分、土佐大正駅着。3人が乗車、1人が下車し、「海洋堂ホビートレイン」と列車交換です。トロッコは同駅から利用できます。11人が移っていきました。
トロッコは無蓋貨車トラ45000形を改造したものでダイナミックな乗り心地。珍しく座席にクッションがあります。最も景色がよいのは両端で、初めは右側(CD席)が、後に左側(AB席)が川側になります。
1974年開業の新しい区間なので、鉄橋で川を越え、トンネルで直線的に走ります。抜けると再び四万十川と並走し、14時15分、土佐昭和駅に到着。17人の団体と車内販売クルーが乗車し、にぎやかになりました。
盛況な「トロッコ列車」車内
車内販売は沿線ガイドの女性と、手伝いをする女子高校生のコンビ。年配の女性は拡声器もないのに、見事な沿線ガイドを行います。見どころとして「水位が上がったときに水面下になる沈下橋」を教えてもらいました。
販売品はハンバーガーやクッキー、ゆずドレッシングなどで、ハンバーガーは即座に売り切れ。ちなみに宇和島発の「しまんトロッコ2号」では、予約制の四万十牛弁当も販売されますが、窪川発の「1号」にないのは残念でした。
十川(とおかわ)駅では3人が下車。線路と並走する国道381号のトラス橋や電信柱が、景観との調和を重視して緑色に塗られているのが面白いです。沈下橋も近くに見えます。
14時39分着の半家(はげ)駅は難読。平家の落人が源氏の追討を逃れるため、漢字「平」の横棒を移動させ「半」にしたのが地名の由来だとか。景色は良好でした。
14時48分、江川崎駅に到着。トロッコ乗車はここまでで、車内販売や団体が下車し、15人が一般車両に移りました。
次の西ケ方(にしがほう)駅で1人が下車。相変わらず景色は素晴らしく、沈下橋も見えます。吉野生(よしのぶ)駅で列車交換も乗降はなし。ここからは旧宇和島鉄道の区間ですが、建設年次が古いこともあってか乗り心地が悪化しました。
温泉施設のある松丸駅で4人が乗車も、列車本数が倍になる近永駅での乗降はありませんでした。大内駅では近くの小学校に「よどせん だいすき」の文字が見えました。
しばらく乗降はなく、務田(むでん)駅で3人が乗車し1人が下車しました。ここから急勾配・急曲線となり、列車は森の中を走ります。
高速バスの代替路線として期待
やがて人家が見え出すと、予讃線と接続する北宇和島駅です。予土線はここまでですが、全列車が宇和島駅まで直通します。16時ちょうどに到着した宇和島駅で21人が下車しました。総じて、トロッコ列車への団体客や途中にある観光施設へのアクセスが多いものの、全区間の乗り通し利用もそれなりに見られました。
なお宇和島16時40分発は、0系新幹線風デザインで「全国一遅い新幹線」とも呼ばれる「鉄道ホビートレイン」でした。車内には0系で実際に使われた転換式クロスシートがあります。
ほかにも予土線には、かっぱの模型が飾られた妖怪列車「海洋堂ホビートレイン かっぱうようよ号」が走り、「しまんトロッコ」「鉄道ホビートレイン」と合わせて「予土線三兄弟」と呼ばれ、イベントで連結もされます。
さらにラッピング列車として「鬼列車」「おさんぽなんよ号」「しまんと開運汽車 すまいるえきちゃん号」もあり、全て合わせて「Yodosen FunFun Trains」と呼ばれています。赤字路線ではありますが、「乗って楽しい路線」でもあるのです。
しかし紅葉の季節にトロッコ列車が走らないのは惜しいです。また「Yodosen FunFun Trains」は乗車2時間を超えるにもかかわらずトイレがなく、景色も見にくいロングシート車なのはミスマッチでしょう。予土線は臨時でも「ものがたり列車」を設定して欲しい路線です。
ところで、高知~宇和島間には高速バスがありません。高知~窪川間の特急と、かつての快速「あしずり」の所要時間を合計すると、高知~宇和島間は2時間58分ですから、直通列車を設定してもよいのではないでしょうか。予土線は、ソフト面やアクセス性が改善されるとなおよい路線と言えます。
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