あれっ F-22弱くない?「世界最強戦闘機」の意外な欠点とは “最強への階段”阻むのは「定番のラスボス」
乗りものニュース / 2024年12月24日 6時12分
「世界最強の戦闘機」との異名を持つアメリカ空軍のF-22「ラプター」戦闘機ですが、意外な弱点がありました。それは、より古いF-16戦闘機などにも装備されるようになったものがないという点。いったいどこなのでしょうか。
「エア・ドミナンスファイター」の異名あるけれど…
圧倒的に強い空戦性能から、「史上最強の制空戦闘機」とも称されるのが、ロッキード・マーチン製のF-22「ラプター」です。演習においては、他の戦闘機に対して一方的に勝利を収めており、まさしく「エア・ドミナンスファイター(航空支配戦闘機)」の異名どおり、空の支配者としての絶対的な権威を示している模様です。
しかし、その輝かしい実績の裏には、意外な弱点も隠されているとか。それは、至近距離での戦闘、いわゆる「格闘戦」における能力です。
F-22は、機動性においても比類のない存在です。強力なエンジンと大きな主翼による高い旋回性能は既存の戦闘機をはるかに上回り、また推力偏向ノズルと組み合わせることによって、あらゆる状況においても優勢を確保できます。純粋な旋回戦闘においては、他の追随を許さない圧倒的な強さを誇ると言っていいでしょう。
旋回性能に優れるなら格闘戦においても強いと言えそうですが、なぜこのような高性能機が格闘戦では意外なほどに弱いのでしょうか。その謎を解き明かす鍵は、F-22が装備する短射程空対空ミサイルとヘルメットの運用方法にあります。
F-22が当初装備していた短射程空対空ミサイルは、1980年代に開発されたAIM-9M「サイドワインダー」でした。このミサイルは、当時としては画期的なものでしたが、21世紀の戦闘機が要求する性能かというと、そうではありません。特に最近は、背後の敵さえ攻撃可能な「オフボアサイト攻撃能力」を持ったミサイルが主流であるのに対し、AIM-9Mはそうした能力がないという根本的な問題があります。
一応、F-22もその後のアップデートでオフボアサイト能力を持つ新型のAIM-9Xを運用できるようになっています。これで、F-22は短射程ミサイルの不利はなくなったかのように思えますが、同機が足りないのはそれだけではありませんでした。F-22はパイロットの視線に追随しその方向にミサイル照準・発射することができる「ヘルメットマウンテッドサイト(HMS)」を有しておらず、攻撃できるのは前方に相対する敵機に対してのみです。
国防予算の優先順位が大きく影響
つまり、F-22は相手を正面に捉えてから攻撃する必要があります。これに対し、HMSを搭載しているF-35やF-16などであれば、自分の背後にいる目標に対してもAIM-9Xを発射することがでます。そのため、仮にこれらの戦闘機がF-22と格闘戦に入った場合、先にミサイル攻撃するチャンスが発生し、F-22の方が不利と言えるでしょう。
加えてHMSは、バイザーに敵機の情報を投影することも可能です。まだ見えない距離に存在する敵機をシンボル化して表示し、パイロットの判断を補助するのですが、F-22の場合はそういったことができません。
なぜF-22は、格闘戦能力に大きく影響するオフボアサイト能力がなかったのでしょうか。その理由は、F-22が開発されたその背景と深く関わっています。
F-22はそのステルス性を活かし、敵に発見される前に射程の長いAIM-120C「アムラーム」空対空ミサイルを使用し撃墜することを主眼としていました。格闘戦は、あくまで遠距離での戦闘でケリがつかなかった場合の最終手段と位置づけられていたからです。
F-22は視程外での戦闘に特化した機体として設計されており、何度か行われた近代化改修も、こうした能力を強化することに重点をおいて行われています。限りある国防予算、改修費用の中で優先すべきものは何なのかという取捨選択の結果が、格闘戦にはやや劣るF-22を生んだとも言えるでしょう。
とはいえ、F-22は、視程外戦闘での空戦性能は圧倒的に優れています。その性能は他機の追随を許さず、だからこそ依然として世界屈指の制空戦闘機として君臨し続けているとも言えます。また、予算さえ許せばHMSヘルメットに対応可能なアップデートが行われ、前述したような欠点も補われる可能性は高いでしょう。
ゆえに、F-22は今後も進化を続け、「空の覇者」としての地位を堅持し続ける可能性は高いと筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は見ています。
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