南海が“最初につくったミニ支線”には何がある? 歴史は100年超 なぜ建設が急がれた?
乗りものニュース / 2025年1月5日 15時12分
南海本線から分岐する、わずか1.4kmの支線「高師浜線」は、100年以上の歴史を持ちます。なぜ建設され、また現在の沿線はどうなっているのでしょうか。
歴史は超長い! なぜ急がれたのか「南海高師浜線」
なんばから南海電鉄で関西国際空港を目指すと、ちょうど半分ほど進んだ辺りで、大阪湾の方角へ支線が延びていることに気付きます。延長わずか1.4kmの南海高師浜(たかしのはま)線です。ただしミニ路線と侮るなかれ、100年以上の歴史を持つ由緒ある路線です。
南海電鉄が難波~和歌山市間の南海本線を全通させたのは1903(明治36)年のこと。当時、南海電鉄は本線以外に天王寺支線を建設し、天王寺駅から大阪駅まで乗り入れていましたが、本線から分岐する最初の支線として建設したのが高師浜線でした。
1918(大正7)年、本線との分岐点である羽衣駅から、伽羅橋(きゃらばし)駅までの1.0kmが開業。翌年に伽羅橋~高師浜間0.5kmが開業して、高師浜線は全通しました。
この辺りには日露戦争時、ロシア軍の捕虜を収容する施設がありましたが、大正中期、宿舎跡地に臨海高級住宅地を開発することになり、そのアクセス路線としてつくられたのです。高師浜は『万葉集』に歌われた白砂青松の景勝地で、鉄道建設により海水浴場としても栄えました。ただし、その景観は戦後に泉北臨海工業地が造成されたことで失われています。
その後は1970(昭和45)年に一部高架化、1989(平成元)年に2両編成化と、少しずつ設備を強化し、2021年より羽衣駅の高架化工事でいったん営業休止。2024年に工事終了を受けて運行再開しています。
工事期間中はバス代行輸送が行われていました。都市部の鉄道では異例の措置です。駅部分に十分な作業スペースが確保できず、鉄道を運行しながらでは工期が大幅に長くなるため、バス代行となりました。なお高師浜駅が、南海本線の高石駅から徒歩10分の距離にあるため、運休しても利便性は大きく損なわれません。ちなみに起点の羽衣駅が移動したため、高師浜線も0.1km短くなっています。
現在は2200系、2230系、2000系のいずれかの電車で運行され、短い支線としては車種が豊富です。2024年の夏、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は高師浜線に乗車してみました。
典雅な駅名「伽羅橋」の由来とは
羽衣駅は特急以外が停車する主要駅です。JR阪和線(羽衣線)の東羽衣駅とも接続していますが、この羽衣線も1.7kmしかないミニ路線です。
高師浜線は2番線の一部を切り欠いた3番線の専用ホームを発着します。配線上は本線との直通は可能ですが、運行は線内で完結しています。運行本数は毎時3~4本で、午前5時台から深夜0時台まで列車があり、利便性は確保されています。
19時25分発の高師浜行きは、2000系の2両編成。30人ほどが乗っていました。2扉で車端部はボックスシート。座席数の多い電車です。
出発するとしばらく直線を走った後、ゆったりと右にカーブします。直線になると伽羅橋駅に到着しました。1面1線の無人駅ですが、高架化工事でイチから作り直されており、多機能トイレも備わります。
典雅な駅名ですが、由来は室町時代、芦田川に掛けられた紀州街道の橋です。この橋は後村上天皇に所縁がある大雄寺の門前にあり、材木に伽羅、つまり香木の沈香を使っていたといわれています。
ちなみに高砂公園には、この木橋をかけ替えるため1865年に建設された石橋が保存され、登録有形文化財となっています。駅前には伽羅橋商店街もあり、駅入り口には古風な郵便ポストもありました。
羽衣駅からの駅間距離は短いですが、伽羅橋駅で10人ほどが下車し、2人が乗車。出発すると、わずか2分で高師浜駅に到着です。1面1線の駅なので、到着した列車はそのまま折り返します。
高師浜駅は開業時からの洋風建築の駅舎が非常にオシャレです。高架化工事中にリニューアルされ、多機能トイレとエレベーターが追加されて、現代の駅としての機能を備えました。
駅舎の正面入口には、後鳥羽上皇の和歌「恋すてふ 名のみ高師の浜千鳥 なくなくかくる 袖のあだ浪」に登場する浜千鳥を題材としたステンドグラスのレプリカが設置されています。乗降人員1699人/日(2019)年と、それほど利用が多い駅ではありませんが、大切にされている路線と感じました。
駅周辺はほぼ住宅地ですが、高石漁港もあり、海水浴場などもあったかつての海の町の名残を、少しだけ感じました。
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