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「世界最強戦車」台湾に到着! 島国でどう使う? エイブラムスが選ばれたワケ

乗りものニュース / 2024年12月26日 16時12分

台湾への引渡し前にアメリカで試験を受ける、M1A2エイブラムス戦車の台湾バージョンM1A2T(画像:アメリカ国防総省)。

島国である台湾に、アメリカ製のM1A2エイブラムス戦車が到着しました。対中国(人民解放軍)を念頭に置いた導入です。しかし台湾軍が、ドイツのレオパルト2や韓国の最新K2ではなく、重量級のエイブラムスを選んだ理由は何でしょうか。

M1A2エイブラムス38両が到着

 中華民国(台湾)国防部は、M1A2エイブラムス戦車38両が12月15日にアメリカから到着し、台湾北西部の新竹にある陸軍の装甲訓練司令部に運び込まれたことを確認しました。台湾軍には戦車戦力としてM48A5の台湾バージョンCM-12、M48HのCM-11、M60A3が合わせて1000両以上配備されています。

 中国人民解放軍と対峙する台湾軍は、島国ながら機甲戦力整備にも傾注していることがわかります。いずれの戦車も第2世代に相当しますが、近代化改修は実施済み。しかし数は多いものの旧式化は否めず、次の戦車を求めていました。

 台湾は地政学的制約から兵器の国産化に積極的で、戦車を国産する工業力もあるとみられますが、設計開発から配備までは10年スパンの長期プロジェクトになりますので、最近の情勢を踏まえれば輸入するのが現実的な選択肢でした。結果、「世界最強戦車」を謳われるM1A2の台湾バージョンM1A2Tが配備されることになったのです。

 M1A2TはM1シリーズの最新バージョンではないもの、第3世代のM1A2SEPv2相当の能力といわれ、M60A3やCM-12よりはるかに強力です。購入費は車体108両と付属品、戦車回収車など支援機材込みのパッケージで約20億ドル(約3000億円)とされています。概算で1両約15~20億円の計算になり、決して安い買い物ではありません。

 一方でM1はウクライナの実戦が示すように、燃費の悪さなど高いランニングコストと、重すぎて動ける場所が限られるという問題が指摘されています。台湾軍の戦車部隊は海岸線での水際防御ではなく、機動力を生かして縦深的に侵攻してくる人民解放軍に対応するとされていますが、ウクライナでも持て余し気味の重量級の戦車を、島国台湾が有効活用できるのかという指摘もあります。

レオパルト2やK2もあるけれど…

 ではM1A2以外の選択肢はあったのでしょうか。ロシア・ウクライナ戦争の影響で戦車の需要は高まっており、ドイツのレオパルト2や韓国のK2ブラックパンサーが売れ筋商品となっています。

 コスパが良いのはレオパルト2です。数も多くてコストはこなれ、実績があって信頼性も高い。ただ各国が新車や中古車を発注しており、納期はかかりそうです。

 韓国のK2は最も新しい戦車であり、営業努力もあってポーランドから大口受注があります。一方で実績がないので信頼性が未知数であることと、ポーランドやトルコからの注文でやはり納期はかかりそうです。

 ドイツも韓国も受注は増やしたいものの、台湾との商談には極めて消極的でした。それは対中関係に配慮したからです。中国は「ひとつの中国」政策を掲げており、台湾への武器輸出には反発します。ドイツにとって中国は主要貿易相手国であり、自動車産業や高級機械、技術の依存度が高まっています。

 また武器輸出には規制を設けており、輸出先が国際的に争議のある地域の場合、慎重に対応します。台湾へのレオパルト2輸出許可は下りることはないでしょう。韓国も同様で、政治経済的に対中関係には配慮しなければなりません。そういった理由から、台湾がこれらの戦車を入手できる可能性はほとんどありませんでした。

中国の圧力を跳ねのけた?トランプ政権再び

 その点、アメリカには台湾関係法があり、台湾に兵器を供給するほとんど唯一の国です。事実上アメリカ製M1A2しか選択肢は無かったのです。台湾軍はアメリカ製兵器を長年使用しており、アメリカ製戦車の方が既存の兵站や訓練体制に適応しやすい事情もありました。

本当に欲しいのはM10ブッカー戦闘車?

 アメリカは2022年に、M10ブッカー戦闘車を採用しました。アメリカ陸軍はM10を、いわゆる主力戦車(MBT)ではなく装甲歩兵支援車両や戦闘車と呼んでいます。105mm主砲を搭載し、射撃統制システムや通信システムはM1A2の最新バージョンSEPv3と同等だとされます。

 一方の防御力については装甲配置が不明であり、重量が38~42tに抑えられていることから推測するしかありません。事実上の軽戦車や突撃砲とされていますが、アメリカ陸軍がこの呼び方を拒絶しています。M10がMBT並みに扱われることを恐れているためといわれます。

 M10は小型軽量で扱いやすく、イニシャル、ランニングコストも抑えられます。まだアメリカ本国でも低率初期生産が始まったばかりですが、台湾の国情にはマッチしており、取得に動くのではないかという指摘があります。

 また、1000両以上ある台湾の戦車戦力を、全てM1A2Tに更新するのは非現実的です。そこでM10を導入して「ハイ・ロー・ミックス」とする選択肢が挙げられます。中国の圧力にも関わらすM1A2の売却を決定したのは2019年のトランプ政権で、アメリカ製戦車が新規導入されるのは30年ぶりのことでした。そして2025年にまた、トランプ政権が始まります。アメリカ、中国、台湾がどのように動くのか注目です。

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