「地下鉄は走ってるのに…」 年越し終夜運転に落とし穴!? “帰宅難民”が毎年大量発生する英ロンドン大みそかの夜
乗りものニュース / 2024年12月31日 18時12分
大みそかのカウントダウンライブや元旦の初日の出、初詣といった年越し行事を支えているのが、鉄道の終夜運転です。英国ロンドンも地下鉄やバスが終夜運転を行いますが、日本と違って“落とし穴”があります。
地下鉄は終夜運転していても、駅は閉鎖
除夜の鐘をつき、家族や友人と夜を徹して語らったあと、初日の出を拝む。こうした元旦ムードを支えてきたのは、各鉄道会社が大みそかから元日にかけて実施している終夜運転です。
筆者(赤川薫:アーティスト・鉄道ジャーナリスト)の住む英国ロンドンも大みそかから元日にかけて地下鉄の終夜運転がありますが、あいにくサービスには落とし穴があり、使い勝手が悪いのが現実です。ロンドンで年越しを考えている人は、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
実は、ロンドンの地下鉄、近郊列車、バスの主要路線では毎週、金曜と土曜に終夜運転が実施されています。そのため終夜運転は年に一回の特別なサービスではありません。しかし「日頃から終夜運転が行われているのだから、年越しの終夜運転も問題ない」と思いきや、そうではありません。
ロンドンの年越しの大イベントといえば、ロンドン市長主催で開催されるテムズ川の花火大会があります。深夜0時を回った瞬間、欧州最多(ロンドン市公式ウェブサイトによる)の約1万2000発の花火が、音楽やイルミネーションとシンクロしながら20分間で打ち上げられまくるとあって人気が高いイベントです。
しかし、花火が終わって帰宅しようと思っても、地下鉄は終夜運転のはずなのに花火イベントの最寄り駅はどこも閉鎖されていて、開いている駅を探し求めて何キロも歩き、家に着いたのは明け方だった――というのは、よく聞かれる話。というのも、1906年開業のピカデリー線など、ロンドンの地下鉄はどこも設備が古くてホームが狭いため、ある一定以上の乗客が押しかけると事故防止のために駅が降車専用になってしまったり、駅自体が閉鎖になり、電車は通過して止まらなくなったりします。そのため、人出が多い場所・時間帯では、地下鉄に乗れない事態が頻発するのです。
大人気の花火ゆえ、川沿いでの鑑賞にはチケットの購入が必須で、総計10万枚が販売されますが、チケットを入手できなかった人も花火をどうにかチラ見できないかと付近に押し寄せます。そのためもちろん、あたり一帯の地下鉄駅は封鎖されます。地下では終夜運転の列車が走っていますが、地上では駅を目指す帰宅難民が毎年、大量に排出されるというわけです。
大みそか以上にもっと注意が必要なのは……
地下鉄が駄目ならバスに乗れば良いと思いきや、事故やテロ被害などを避けるため、道路は大みそかの14時頃から順次、バリケードによる完全封鎖が行われ、最終的には東京の千代田区と中央区を合わせたくらいの広大な範囲で元日朝6時まで、車両の全面通行止めが実施されます。
そのため当然、バスもタクシーも14時頃から同区間は走りません。ロンドン市のウェブサイトにはバスが走らなくなることは明記されていますが、乗換案内アプリなどにはこの情報が反映されていないことが多く、知らずにバスに乗ってしまうと、封鎖エリアの前で唐突に降ろされてしまうのはまだ良い方で、「迂回(Diversion)」という措置に巻き込まれてしまうと悲惨です。
そもそも、迂回をするのなら、ぜひ迂回をし始める前に車内アナウンスで知らせてほしいものですが、「このバスは迂回中です(This bus is on diversion)」と事後通告されるため、気付いた時には、すでにバスは通常の運行ルートから大幅に外れた場所を走っており、まったく関係ない場所に連れて行かれているのです。
封鎖エリアを通るすべての路線バスが迂回するため、迂回路は大渋滞。迂回の末に無事に目的地に到達できればまだ許せますが、「このバスはここで終点です(This bus terminates here)」という木で鼻をくくったような車内放送とともに寒空の下、迂回途中のどことも知れない場所で唐突に放り出される――なんてことも。
地下鉄は終夜運転といいつつ、肝心かなめの花火大会の後には乗れる状態にはあらず、誰もが忙しい大みそかのお昼から市中心部はバスが走らないという打撃。ロンドンで年越しを考えている人は要注意です。
大みそか以上にもっと注意が必要なのは、クリスマスではないでしょうか。英国全土で、長距離バス以外、電車もバスも一切、何も走りません。クリスマスの英国は、「ノー鉄道デー」なのです。
何も走らないといっても、「特別ダイヤの大幅間引き運転で多少は走るのではないか」と考えるのは当然ですが、24日のクリスマス・イブの夜から26日の朝まで本当に走りません。
コロナ禍前の2019年の調査では、クリスマスを「友人と過ごす」と答えた人はたったの8%だった(大手世論調査会社ユーガブによる)ように、キリスト教信者が多い英国ではクリスマスは家族でゆっくりと自宅で過ごすのが一般的なため、そもそも、電車を利用して出かけたとしても営業しているお店やレストランもあまりありません。
そのうえ、日刊紙ガーディアンによると、1948年以降、自動車の普及が進んだことから、実家や親戚の行くのにも自家用車で行く人が増え、クリスマス当日の鉄道利用者数が減少傾向に転じました。このため、1965年にはイギリス国鉄がクリスマス当日の運行を取りやめ、ロンドン地下鉄も1980年からクリスマス運行を廃止しています。
そして、1993年から1997年にかけて実施された鉄道民営化により、不採算サービス廃止の流れから、クリスマス当日の運行取りやめは全国規模へと広まりました。
このような事情から、現在ではクリスマスは「ノー鉄道デー」が英国全土で浸透して受け入れられています。日本から冬休みや年末年始休暇を利用して英国を訪れる際は、こうした交通事情を念頭において計画を立てることをお勧めします。
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