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JR東「分かりやすい運賃にします」でなぜ“大幅値上げ”になるの? 格差を生んだ「4つの運賃区分」見直す意味 でも関西は“そんなに値上げしない”

乗りものニュース / 2025年1月6日 7時12分

JR東日本の運賃改定は山手線内が最も値上げとなる(画像:写真AC)。

JR東日本が発表した運賃改定では、東京エリアの「電車特定区間」と「山手線内」という二つの運賃区分が実質廃止となり、「幹線」に統合。これによって“大幅値上げ”が生じます。なぜ、いくつもの運賃区分がつくられたのでしょうか。

消える「電車特定区間」と「山手線内」

 2024年12月にJR東日本が発表した2026年実施予定の運賃改定は、同社約39年間の歴史で実質的に初めての運賃値上げということもあり、大きな話題となりました。なかでも大幅な値上げとなるのが、東京エリアの「電車特定区間」と「山手線内」です。

 今回の値上げ率は普通運賃が7.8%とされていますが、これはあくまでも平均値であり、詳しい値上げ率は「幹線」4.4%、「地方交通線」5.2%です。これに対し、「電車特定区間」と「東京山手線内」の運賃区分は「幹線」に統合されることにより、電車特定区間で10.4%、山手線内で16.4%もの値上げになります。

 同社は幹線への統合で「分かりやすい運賃体系にする」としていますが、それが大幅な値上げにつながる理由は、電車特定区間と山手線内が“大幅に安かった”ことに他なりません。

 きっぷを券売機や窓口で購入するとその区別はわからないものですが、JR線の運賃は一律ではなく、幹線と地方交通線にわけられています。さらに電車特定区間、そしてJR東日本特有の「東京山手線内」という運賃を区分するエリアがあります。この4つの運賃区分の違いはどこにあるのか、歴史をさかのぼって紐解いてみます。

国鉄末期の「路線廃止の嵐」と表裏一体だった?

 かつて国鉄の運賃は距離に応じて全国同一の運賃体系が設定されていました。この運賃体系が現在のように変更となったのが1981(昭和56)年のこと。その前年に、巨額の赤字に苦しむ国鉄の経営改善のために「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」が制定されたことによります。

 この特措法で区分されたのが、幹線と地方交通線です。幹線は、おもに次の条件を満たした輸送需要が高い路線が対象になりました。

・人口10万人以上の都市を相互に連絡する
・営業キロが30km以上ある
・すべての隣接駅間で1日1kmあたりの旅客輸送密度が4000人以上ある
・1日の貨物輸送密度が4000t以上ある

 一方で、幹線の条件を満たしていない輸送需要の低い路線を地方交通線としました。そのうえで地方交通線は運賃を幹線よりも約1割、割高に設定することで赤字の解消を図ることが狙いでした。

 さらに地方交通線のなかでも路線の1日当たりの旅客輸送密度が4000人未満の路線については、廃止対象の特定地方交通線となり、バス路線への転換、第三セクター鉄道への移管が検討されるなどの基準が設定されていました。

見直しが必要な「国鉄基準」はまだまだある!?

 国鉄時代からJR各社に引き継がれた幹線と地方交通線の区分については、市販の時刻表の地図を見るのがわかりやすいでしょう。幹線は路線が黒い実線で、地方交通線は水色の実線で表記されています。

 ただ、今と照らして、この国鉄時代に設定された基準との齟齬が顕著な路線もあります。東京都の八王子から群馬県の高崎(倉賀野)を結ぶJR八高線です。

 八高線は1981年に導入された基準により、今なお、都内唯一の地方交通線となっています。地方交通線であることから電車特定区間に組み込まれることもなく、接続する中央線や青梅線はもとより、一体に運行される川越線とくらべても大きな運賃格差が生じています。

 箱根ケ崎駅がある東京都瑞穂町では、箱根ケ崎駅の利用者が1日平均4500人に迫ることからも、地方交通線から幹線への昇格を要望することで、この格差の是正をJR東日本に求めています。

「電車特定区間」も「東京山手線内」も国鉄のまま

 幹線と地方交通線が分けられた3年後の1984(昭和59)年に設定されたのが、「国電区間」です。JR発足後に「電車特定区間」へ名称が改められました。

 短距離利用が多い都市部の通勤・通学エリアの利便性を向上することなどを目的として、国電区間は“東京附近”と“大阪附近”の2か所が設定されました。同時に「大阪環状線内」も設定されました。

 いずれも幹線より割安な運賃が設定され、さらに大阪環状線内については、それ以前から設定されていた「東京山手線内」と同様、国電区間よりも割安な運賃となり、分割民営化後もこの適用のまま、JR東日本とJR西日本に受け継がれました。

 しかし、2024年に入り、両社とも、この運賃区分にメスを入れることとなりました。

JR西と東で狙いが全然違う!?

 まずJR西日本が2024年5月15日、大阪環状線内の区分を廃止し、大阪附近の電車特定区間の拡大を発表しています(導入は2025年4月1日予定)。

 これには、国鉄以降に京阪神エリアの直通ネットワークが拡大したことなどを踏まえ、「同じレベルの輸送サービスを提供しているエリアにおいて運賃体系を統合」する狙いがあるとしています。また、一連の運賃改定は「当社の運賃収入は全体としては増収とならない想定」とも。

 一方のJR東日本は、東京山手線内と東京附近の電車特定区間の両方を廃し、幹線に統合することを選びました(導入は2026年3月予定)。

 同社はこれら区分について、「現在では他の鉄道事業者の運賃改定により、運賃格差が逆転又は縮小し、当該エリアの設定意義が薄れている」とし、これまでの多額の投資と持続的なサービス向上に対し、「一定程度のご負担をお願い」と率直につづっています。

 現行の運賃が国鉄末期に設定されたままであるというのも、とても稀有なことだと感じます。40年以上も前に設定された区分であるからこそ、現在の利用状況や景気に合わせて、変化せざるを得ないのは当然のことかもしれません。

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