おい信じられるか?「JOG」と「Dio」が今や“親戚”なんだぜ… ホンダとヤマハ「スクーター大戦争」の“ちゃんちゃん”な結末
乗りものニュース / 2025年1月13日 18時12分
2025年はガソリンモデルの50cc原付1種が生産を終了する見込みです。そうした原付のなかで最も身近なスクーター。その2大巨頭といえるヤマハ「ジョグ」とホンダ「ディオ」は、熾烈なライバル関係から“親戚”のような関係に変化しました。
スクーター界の「HY戦争」でジョグがまず誕生
2025年は、11月に排ガス規制が強化され、50cc以下のガソリンモデルの原付は各社が生産を終了する見込みです。すでに50ccのラインアップはかなり縮小。しかし1月現在も残り続けているモデルの一つが、ヤマハのスクーター「ジョグ(JOG)」です。長きにわたりライバル争いを繰り広げたホンダ「ディオ(Dio)」は110ccモデルで残っています。
といっても、実は現在のジョグはホンダが製造しており、ディオとは差別化が図られています。なぜそうなったのか、2大スクーターを振り返ります。
1970年代後半から1980年代前半のバイクシーンは、ホンダ・ヤマハの熾烈なシェア争いが繰り広げられ、俗に「HY戦争」と呼ばれています。特にホンダは「多いときは毎週新モデルを発売していた」と言われるほどで、この時期に様々なバイクを発売しました。
原付スクーターをめぐっては、「パッソル」(1977年)や「パッソーラ」(1978年)がヒットしていたヤマハに攻勢するような格好で、ホンダがさらに新モデルの「タクト」を1980年に発売し、一気に優勢を勝ち取るような構図が見て取れました。
まるでトランプの「大貧民」のような優劣が行き来する状況でしたが、「HYの終戦宣言」がなされた1983年、ヤマハが「これが最後ですよ!」と言わんばかりにカードを切ったスクーターがありました。それが「ジョグ」でした。
パッソルやパッソーラの時代からはかなり飛躍したスクーターで、1983年当時の原付スクーターでは最大となる4.5ps(馬力)を実現。鳥のクチバシのように尖ったカウルとボディが一体化させたデザインは、当時の若者たちにおおいに受け入れられ、後の国産スクーターにも大きな影響を与えたと言われています。
また、ホンダは1984年の3代目タクトによって、ジョグをさらに上回る5.0psの出力を実現。また畳み込むように、1985年に新モデル「DJ-1」で5.2psを実現しました。
タクトの立ち位置がやがて一般ユーズ向けに変わっていった一方、このDJ-1は若者向けのスポーツモデル的な位置付けの独立したスクーターでした。「1」とあるので、2とか3とかを出す意欲もあったのかもしれませんが、結果的には3年間という短命で終わり、後の「ディオ」にその立場を譲ることになりました。
打倒ジョグの真打ちとして登場した「ディオ」
DJ-1にパワーの王座を譲っていたヤマハも、1987年の2代目ジョグで6.0psの出力を実現。今思えば、HY戦争の名残りをなおも原付スクーターで静かに繰り広げる格好になっていました。
しかし、ホンダも負けてはいられません。1988年に新モデルとして登場させたのが後に今日まで続くロングセラースクーターとなる「ディオ」でした。
1986年に義務付けられた「原付のヘルメット着用」の影響を反映したメットインモデルで、先代のDJ-1に、メットインスペースを設けたタイプといった印象もありました。しかし、スクーターにして圧倒的な走りを意識したディオは、いち早くディスクブレーキを採用した一方、モデルチェンジごと続々と性能を飛躍させていき、後に一般化されるスポーツスクーターの先駆けにもなりました。
一方のジョグもまたディオに負けず劣らずの進化を遂げ、特に1990年代以降はスポーツスクーターとしての立ち位置へと完全に舵を切り、1990年のジョグスポーツに90ccモデルをラインナップ。50ccはジョグZ(1991年)、スーパージョグZ(1993年)、さらに最高出力7.2psを実現させたスーパージョグZR(1994年)と矢継ぎ早にリリースします。
ヒットしていたディオが女性向けモデルも派生させるようになった一方で、ジョグは「ウチはあくまでも走りっすよ」といった立ち位置を貫くようになっていました。
ただし、ジョグ、ディオのここまでの熾烈なシェア争いも、1998年排出ガス規制を境に落ち着きを見せ始めます。
双方ともに規制に適合させるためにパワーを抑える結果となった一方、2000年代初頭に巻き起こったビッグスクーターブームなどの影響もあり、ジョグ、ディオがライバル的にシェアを争うというよりは、双方が独自の立ち位置を築き上げていくような構図に見せました。
かつての大敵をホンダが「製造」する立場になったのはなぜ!?
そして2010年代に入ると、双方とも日本独自の「原付スクーター」としての役目をいったんは終えることになります。2011年、ホンダはグローバルモデルとしてディオ110をリリースした一方、50ccモデルは2016年に生産を終了します。
また、完全なるヤマハオリジナルのジョグは2017年のジョグシリーズが最後となり、2018年以降は、かつてのライバル・ホンダとの業務提携により、ホンダが製造することになりました。
そのなかでヤマハは、“HY戦争”の砲撃的モデルだったホンダ・タクトの外観を「ジョグ的」に変更させ、50ccジョグの最新モデルとしてリリース、今日まで販売されることとなります。この最新の50ccジョグはホンダの熊本製作所が造っています。
まさしく「かつての敵は今日の友」なエピソードであり、ホンダ、ヤマハどちらも好きな筆者にとっては、なんだかほっこりする話でもありました。
また、完全なるヤマハオリジナルのジョグとして、2022年に125ccモデルをリリース。ディオ110と良い意味での差別化を図り、双方ともに今日も生産され続けています。
いずれにしても、ジョグ、ディオともに30~40年以上も続いた名シリーズであり、競い合った双方のストーリーは、そのまま日本のスクーターのレベルを引き上げた歴史だったと言って良いように思います。
今では、近い親戚のような関係になったジョグとディオ。双方のモデルに親しんだことがある方は改めて注目されてみてはいかがでしょうか。
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