西武鉄道にトドメを刺された!? 東京近郊にあったナゾの鉄道 100年前のレールがまさかの現存!
乗りものニュース / 2025年1月12日 15時12分
かつて日本中で走っていた馬車鉄道。100年以上前に走っていた、首都近郊の2つの馬車鉄道の軌跡をたどってみたら、残されたレールまで見ることができました。
馬車鉄道のターミナルだった入間川駅
東京に地下鉄網ができる以前、都内移動の主役は都電をはじめとした路面電車でしたが、さらにさかのぼれば「馬車鉄道」に行きつきます。日本初の馬車鉄道は1882(明治15)年に新橋―日本橋間で開業した東京馬車鉄道でした。
馬車鉄道は馬がひく客車をレールの上で走らせることで、人力車や馬車よりも乗り心地がよく、多くの人を運べることから全国に普及していきました。電車が普及すると、それにとって代わられることとなりますが、都心部だけでなく地方にも敷設され、やがて路線バスに発展していったものもあります。
そのような馬車鉄道のなかに、埼玉県の内陸部を走っていたものがありました。現在の狭山市を起点にしていた「入間馬車鉄道」と「中武(ちゅうぶ)馬車鉄道」です。
入間馬車鉄道は、国分寺と川越を結んでいた川越鉄道(現・西武新宿線と国分寺線)の入間川駅(現・狭山市駅)と、飯能を結ぶ馬車鉄道として1901(明治34)年に開業しました。
飯能といえば西武池袋線の郊外側の拠点駅として有名ですが、当時はまだ武蔵野鉄道(現・西武池袋線)が開通していません。それに先立ち、川越鉄道と飯能を連絡する交通手段として開業したのです。
客車は定員15名ほどで、入間川―飯能の運賃は15銭(後に値上げされ20銭)、初乗りは3~4銭、8歳までの子供は半額、4歳以下の幼児は無料でした。約10kmの距離を1時間15分ほどで結び、運転間隔は1時間に1本で、1日に15~17往復していました。
東京まで行く路線もあった!
一方の中武馬車鉄道は、立川と青梅を結んでいた青梅鉄道(現:JR青梅線)と、前出の入間川駅を連絡するため1901(明治34)年に開通しています。こちらは約18kmの距離を2時間20分ほどで結び、運転本数は午前5便、午後5便の計10便でした。
双方の馬車鉄道は、起点の入間川駅前から入間川町(現・狭山市)の市街地において、軌道を共有していました。ただ、ダイヤを示し合わせてなかったので、共用区間で車両が鉢合わせになることも。その際は、先に開通した入間馬車鉄道に軌道の所有権があったので、中武馬車鉄道は車両ごと軌道外に待避し、入間馬車鉄道の方が先に進んだそうです。
後述する当時のエピソードを記した「万造じいさんの馬車鉄夜ばなし」によると、「借りている道だから(レールを)外しちまう。そしてこっちが通る。そういう権利があったん。(中略)向こうは、馬車を(レールから)外しちまうんだ」と記されています。
入間馬車鉄道と中武馬車鉄道は、地域の期待を背負って開業したものの、地場産業の衰退、日露戦争による馬の徴発や、戦争による物価高騰などの影響を受け、経営不振となります。そこへ1915(大正4)年に池袋と飯能を結ぶ武蔵野鉄道が開通すると、乗客を奪われ利用者は激減。1917(大正6)年には中武馬車鉄道、入間馬車鉄道の順で廃止され、その短い歴史に終止符が打たれました。
馬車鉄道のレールを発見!
廃止から100年以上が経過した現在、馬車鉄道の遺構はほとんど残っていません。しかし、レールの一部は今でも見ることができます。入間馬車鉄道の計画を発案した狭山市出身の代議員であった清水宗徳氏の墓所が、実際に使用されたレールの上に建てられており、狭山市の指定文化財として保存されていることから、そこで往時をしのぶことが可能です。
狭山市駅と飯能駅前の商店街には入間馬車鉄道の案内板があり、中武馬車鉄道の起点だった青梅の森下停車場跡には、小さな記念碑が建っています。そして狭山市立博物館には、馬車鉄道のレプリカが展示されています。興味深いのは、馭者(ぎょしゃ)のモデルが実際に入間馬車鉄道で馭者をしていた桜井万造氏を忠実に再現しているところです。
前出した「万造じいさんの馬車鉄夜ばなし」は、この桜井氏の談話を収録したもので、当時の馬車鉄道を知るうえで貴重な資料となっています。この本は狭山市立博物館に所蔵されているので、申請すれば閲覧できます。
また、かつて入間馬車鉄道が結んでいた路線は、狭山市駅西口と飯能駅北口を結ぶ西武バスの「狭山26」が、新道と旧道の違いこそあるものの、ほぼ同じルートで走っているので、当時の馬車鉄道に想いを馳せて乗車することが可能です。ただし、運行は2024年12月現在、日曜日に1往復のみなのでそこは注意が必要でしょう。
時代と共に消え去った馬車鉄道ですが、鉄道黎明期の日本には欠かせない存在でした。各地で走っていた、馬車鉄道の足跡を探してみてはいかがでしょうか。北海道札幌市の「北海道開拓の村」では、アトラクションとして馬車鉄道が運行されていますので、こちらを体験するのもオススメです。
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