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開発中の「うらしま8000」すぐ海にいきたいので既存船を使います! 驚愕の“時短レシピ”その中身とは?

乗りものニュース / 2025年1月25日 9時42分

JAMSTECが保有する有人潜水調査船(HOV)「しんかい6500」(画像:JAMSTEC)。

日本の技術の粋を集めて建造された有人潜水調査船「しんかい6500」。ただ竣工から35年近くが経過しており、支援母船「よこすか」とともに老朽化が進行し、後継を新造するのか否かの岐路に立っています。JAMSTEC担当者にハナシを聞きました。

3500mが限界なのにどうやって8000m級に?

 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の有人潜水調査船(HOV)「しんかい6500」とその支援母船「よこすか」の老朽化が深刻な状態です。

 代わりとなる新造船の建造も難しい中、このままでは日本が誇る大深度HOVシステムが近い将来、運用できなりそうだとか。このたび、筆者(深水千翔:海事ライター)はその詳細についてJAMSTECにハナシを聞きました。今回は、インタビューの最終回になります。

 JAMSTECでは2024年11月現在、無人の深海巡航探査機「うらしま」を水深8000mまで潜航可能にする改造を実施中で、将来的にはROV(遠隔操作型無人探査機)とAUV(自律型無人探査機)を複数機組み合わせたシステムを構築し、深海の探査能力を強化していくことも検討されています。

 すでに、JAMSTECは既存の巡航型AUV「うらしま」を8000m級へと改造しており、2025年度には水深8000mまでの試験潜航を行い地形データの取得を計画しています。

 巡航型のAUVは、高性能な海外製品が複数存在しますが、いずれも6000m級に止まっており、それ以上の深さを目指すのであれば、国産化は必須です。今回、新規開発ではなく既存のAUVを改造することについて松永 祐研究企画監は「一番は、低予算かつ迅速に運用モードに持っていきたい狙いがある」と説明します。

 元々、「うらしま」は1998年から実験機として開発が進められた3500m級の探査機で、2009年から実用機として使われています。機体は全長10.7m、幅1.3mと世界的にもトップクラスのサイズを誇るAUVですが、この大きさゆえに観測機器を搭載可能なペイロード区画を広く確保できており、これを活かして大型の調査機器を搭載することが可能です。

開発期間短縮のキモはソフトウェア

「探査機をより深く潜航させようとすると、耐圧容器の肉厚をより厚くする必要があるが、そうすると機体が重くなる。水中で重くなると一方的に沈むだけなので、それを中和するために浮力材を多く詰める。この相乗効果で、機体がどんどん大きくなってしまう。ある程度の大きさがある『うらしま』であれば、8000m級の耐圧性能を確保するために耐圧容器の肉厚を厚くし浮力材を増やしても、ある程度の観測装置を載せられる」(松永研究企画監)

 今回の改造では、耐圧容器や浮力材などを水深8000mに対応したものに変更。一方で、フレームやフェアリングといった、そのまま流用できるものは可能な限り活用し、制御ソフトウェアも改修は最小限に抑えます。これにより2022年度に基本設計を終えた後、2023年度から組み立てを行い、2025年度に最大潜航深度までの試験を行うという驚異的なスピードで開発が進められています。

「AUVはソフトウェアの信頼性が大事。ゼロから作り直そうとすると、バグ取りや健全性の確認などにすごい時間がかかる。『うらしま』にはこれまでの実績があり、基本的なソフトをそのまま8000mにカスタマイズすることで、運用の検証に割くスケジュールを大幅に削減できる」(松永研究企画監)

「うらしま」の改造は、日本海溝の最深部8020mをターゲットにしており、地震発生帯の調査や詳細な海底地形図を作成することで、地震の研究や海底資源の活用につなげていくことが考えられています。

 世界第6位という広大なEEZ(排他的経済水域)を持つ日本にとって、自国周辺の海の姿を明らかにすることは、安全保障、経済、防災などさまざまな観点から非常に重要なことです。8,000m級に改造することで、なんと日本のEEZの約98%にアクセスすることができます。この深さまで潜航可能なAUVは世界的にもごくわずかしか存在しません。

「しんかい6500」に続く大深度探査システムがどのようなものになるのか。私たちはもっと注目していく必要があると、今回JAMSTECを取材して感じました。

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