わざと低空飛行でゴオォォォ… 自衛隊も実施 戦闘機の最も効果的な使い方「ショー・オブ・フォース」とは
乗りものニュース / 2025年1月19日 6時12分
戦争映画などで、ピンチになった時に颯爽と味方の戦闘機が現れ、それに対して地上の兵士たちが歓声を上げる描写を見ることがあります。それは、偶然ではなくあえて行うことがあるそうです。いったい、どういうことでしょうか。
実戦であえて見せつける「飛び方」って?
戦闘機と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、敵を攻撃する場面やドッグファイトでしょう。しかし、戦闘機にはそれだけではない重要な役割があります。そのひとつが「ショー・オブ・フォース(Show of Force)」です。この言葉は直訳すれば「力を見せる」という意味で、戦闘行為を伴わない、武力による示威活動のことを指します。
「ショー・オブ・フォース」の一例としては、戦闘機による低空飛行が挙げられます。この戦術は、戦闘地域でしばしば採用されており、例えば、味方の部隊が危険な状況に陥りそうな場合に彼らの頭上を戦闘機が低空で飛ぶことで、爆音によって地上の兵士たちの士気を劇的に向上させる効果を得られます。なお、この行為は戦闘機が現れることで、戦闘機による航空支援を受けられるという期待感や、「我々は見捨てられていない」という安心感を生むことにつながります。
逆に、敵の頭上を低空飛行する場合は、相手に恐怖心を植え付ける効果があります。耳をつんざくような轟音は、地上の兵士に戦闘機の圧倒的な存在感を認識させます。これにより、敵の士気を低下させることが可能であり、何かアクションを起こせば爆撃されるという恐れから、攻撃をためらわせることが可能です。
このように、低空飛行による「ショー・オブ・フォース」は、直接的な攻撃を伴わなくても、戦況に影響を与えることができ、過去様々な戦争において実際に行われてきました。飛行場に帰還した際、着陸前に360度横転し敵を撃墜したことをいち早く地上に知らせる「ビクトリーロール」もこの一種と言えるでしょう。
ただし、こうした行動を実施するためには、事前に敵が空対地ミサイルをはじめとした有力な対空火器を所持していないことが明らかであるなど、脅威レベルが低い場合に限られます。
同盟国や自国民へのアピールも
「ショー・オブ・フォース」は、戦時だけでなく平時にも効果的な役割を果たします。各地で開催される軍主体のエアショーはその典型例です。戦闘機が華麗な編隊飛行やアクロバティックな動きを披露する光景は、多くの観客を魅了します。
これにより、自国の防衛力や航空技術への理解が深まり、軍への信頼感が醸成されます。またエアショーは単なる娯楽にとどまらず、国際友好の象徴としての側面も持ち、自衛隊とアメリカ軍が共同で行う航空祭(エアショー)などは、日米同盟の強固さを国民に示す絶好の機会となるとも言えるでしょう。軍事力を広く「見せる」ことで、国家間の連帯感を視覚的に強調するのです。
人気の「ショー・オブ・フォース」としては「エレファントウォーク」と呼ばれるものも挙げられます。これは複数の軍用機を滑走路などに整然と並べるもので、その様子がまるで隊列を組んで進む象の群れを連想させることから、そのように呼ばれます。
このデモンストレーションは視覚的なインパクトが非常に大きいといえ、数十機もの戦闘機が並ぶ姿は、圧倒的な威圧感を醸し出します。これにより、敵対勢力への警告として機能するだけでなく、友好国に対しては強固な結束力を示すメッセージにもなるのです。こうした象徴的な行為は、単なる軍事訓練の枠を超え、戦闘機が持つ多面的な役割を象徴していると言えるでしょう。
戦闘機の役割は、敵を攻撃し破壊するだけではありません。「ショー・オブ・フォース」のような非戦闘的なミッションを通じて、戦場における士気の向上や敵への威嚇、平時における国民への理解促進、さらには国際的な友好関係の強化にもつながり、心理的、社会的、政治的な影響を与える力を持っているのです。
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