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「川崎重工、旅客機つくらないの?」 三菱MSJ以前に存在した計画とは “成功機フル活用案”消えたワケ

乗りものニュース / 2025年1月20日 7時42分

川崎重工「YPX」モデルプレーン(加賀幸雄撮影)

三菱スペースジェット(MSJ)の開発とん挫で、再度棚上げとなってしまった国産旅客機の開発。かつて川崎重工が、これを試みたことがあります。どのようなものだったのでしょうか。

自衛隊機を旅客機に転用?

 2023年2月、三菱重工業はジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ。旧名称MRJ)の開発撤退を表明し、10年以上にわたって模索された国産旅客機の開発計画はとん挫しました。それ以来、新たな開発の計画もありません。

では、MSJ以前はどうだったでしょうか。実は2000年代中頃、国内航空産業における三菱最大のライバル川崎重工業が、小型ジェット旅客機の開発を構想したことがありました。どのようなものだったのでしょうか。

 川崎重工が「YPX」と名付けて構想したのは、110~145席クラスの小型ジェット機で、エアバスA320やボーイング737のほか、2000年代に現役だった旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)のMD-80シリーズを競合機種と捉えたモデルでした。

 このYPX、どのように構想されたのでしょうか。それには同社の自衛隊機における“成功体験”が関係しています。

当時、川崎重工は後に海上自衛隊の哨戒機(のちのP-1)と航空自衛隊の輸送機(のちのC-2)の国産両機種の同時開発を2001年11月に受注し、作業の最中でした。

YPXはこのP-1の設計を活用して実現の可能性が模索されていたのです。筆者は海外の展示会でかつて、川崎重工の社員から「哨戒機の開発時から民間機転用は視野に入れていた。国産旅客機開発はYS-11に続く悲願であり、開発に本格的なゴーサインが出た際に設計・製造できるよう、基礎固めをしていくことが必要」と説明を受けたのを今も覚えています。

YPXは整備性向上と運航費の低減を目的に、エンジン数をP-1の半分の2基にするほか、低空飛行の任務に適した主翼の形を、高空度を長時間飛ぶ旅客機に合わせるなどの変更が考えられていたそうです。

P-1の胴体の太さや主翼の後退角などを見ると、旅客機への活用もできそう、という声も多く、視察に訪れた人からも「旅客機にできそうではないか」との声があったそうです。

 ただし、その後、P-1哨戒機からの旅客機開発は難しい、と社内で言われていたことも知りました。

川崎重工案、なぜうまくいかなかった?

 当時の開発関係者にすれば、有事の生存性と任務遂行率に重きを置いて設計された哨戒機は、各部を旅客機向きに変更しても、旅客機と同じレベルの経済性を追求するのは難しかったということです。

「P-1を旅客機に仕立て直しても航空会社が目を向けてくれるか分からなかった」とのことで、これは旅客機から派生した米国のP-3やP-8哨戒機と対照的でもありました。

 それでも川崎重工は2006年7月の英国ファンボロー航空ショーで、YPXを模型ながら公開しています。それは商機を見つけるためだったのではないかと、今も考えています。

 欧米などに目を向けると、旅客機メーカーは1国、あるいは1地域に1社しかないというのが、民間航空界の現状です。もし仮にMSJ、YSXの双方が実現し、日本で2メーカーの旅客機が生まれていた場合、販売面では少なくとも欧米メーカーのように円滑にはいかないことは想像がつきます。

 それでも川崎重工業がYPXを民間航空界の一大イベントで展示したのは、自社が潜在的に持つ技術力を海外へ示す意味合いもあったのではないかと考えています。

 MSJとん挫後の日本は、経済産業省が2024年3月に次世代国産旅客機の開発へ新戦略を示しましたが、盛り上がりを見せていません。しかし、筆者は商機を探ることまであきらめる必要はないと考えています。その意味では、YPXのような旅客機の構想が、国内外の展示会で具現化する光景に期待したいところです。

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