「尻から燃料バッシャーン」 ロシア機の驚愕作戦には“先祖”がいた? 「世界初の可変翼戦闘機」の不思議な特技とは
乗りものニュース / 2025年1月26日 16時12分
世界で初めて実用可変翼を導入した戦闘機「F-111」は、ロシア軍が無人機に行った“驚愕の作戦”にも共通する、変わった特技を持っていました。どういったものだったのでしょうか。
「尻から燃料ぶっかける」という驚愕の作戦
ウクライナ侵攻でロシア軍のSu-27戦闘機が黒海上空で2023年3月、驚きの“作戦”を見せました。アメリカの無人偵察機MQ9へ、追い抜きざまに燃料をぶっかける映像が世界中に流れたのです。これは、アメリカがロシアの交戦国の機体ではないため、MQ9に対してロシア側が武器を使えず、苛立ったSu-27のパイロットが燃料を放射して飛行を邪魔しようとしたと見られています。
実は、これには”元ネタらしき技術”を持った戦闘機が存在します。アメリカが1960年代に開発した戦闘機F-111です。この機は「尻から炎を噴射させながら飛ぶ」変わった特技を持っていました。
F-111戦闘機は飛行速度に合わせて主翼を前後に動かせる可変翼を実用的に搭載した世界初の機体です。後にアメリカ海軍F-14戦闘機の主要兵器となったAIM-54長射程空対空ミサイルの搭載も考えられていたなど、当初はアメリカ空軍・海軍の共通使用も視野に開発された野心作でした。
しかし、重量オーバーで海軍から嫌われるなど評価は芳しくなく、アメリカ空軍のほかに海外で導入したのはオーストラリア空軍のみにとどまりました。
しかし、そのオーストラリア空軍が、F-111の特技を有名なものにします。それがエンジンの推力を一時的に増やす再燃焼装置をオンにして、機体最後部の燃料投棄用バルブを開けて霧状になった燃料へ着火する「トーチング」です。仕組み自体はシンプルな技ですが、どのように生かされたのでしょうか。
F-111&ロシア機の「トーチングの違い」
日本でも航空自衛隊の曲技飛行チームブルーインパルスが、かつてT-2練習機で離陸時に炎を引くことはありましたが、F-111の「トーチング」は比べものにならぬほど長く、機体の全長をしのぐ炎は迫力満点でした。
ただし、この「トーチング」が実戦で役に立ったかというと「ノー」でした。
というもの、追い抜きざまに燃料を浴びせても、相手が戦闘機だったなら前に出た途端に撃ち落されていたはずです。また、たとえ炎が長くても、相手へ非常に接近しなければならず、自機を損傷させる恐れもあるだけに、危険なのは明らかでしょう。
対し、現代の黒海上空の事例で、ロシア軍機が燃料を浴びせることに成功したのは、武装していない無人偵察機が相手ゆえにできたということになります。
F-111で結局「トーチング」が有効だったのは、航空ショーなど観客のいる場だけでした。可変翼を最前進させ車輪を降ろして低速で飛んだり、主翼の角度をできるだけ後退させた状態へと変形し、高速を出したりしましたが、どちらの速度でも炎を吹いて飛ぶ姿は確かに迫力のあるもので、会場は沸いたものです。
そうしたF-111の「トーチング」が最も注目されたのは、2000年のシドニー五輪の閉会式だったといえるでしょう。
消える聖火を空へ運ぶようにF-111が炎を引いて飛んでいく光景は、ほかの戦闘機では演出できなかったでしょう。F-111自体は航空ファンの記憶に残る機体となったほか、「トーチング」でこそ戦績を残すことはなかったものの、アメリカ空軍で湾岸戦争でも出撃するなど戦歴を残しています。
【動画】これがロシアによる「驚愕のぶっかけ作戦」実際の映像です
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