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揺らぐEV崇拝「クリーンディーゼル」をなぜ見直さないのか? すっかり聞かなくなったけど「しっかり売れている」という現実

乗りものニュース / 2025年1月26日 7時42分

クリーンディーゼル車に軽油を給油するイメージ。触媒として必要なアドブルー(尿素水)は約1000kmに1L消費が目安。価格は10Lを2000円程度で買えるという(乗りものニュース編集部撮影)。

EVが失速し、現実的な選択肢としてHVも脚光を浴びるなか、以前よりすっかり話題に上らなくなったのが「クリーンディーゼル」。軽油なので燃料コストは抜群、走りもよいのに“アブラだけ”という理由で廃れてしまうのでしょうか。

ディーゼル車は「防災」になる!?

 環境対策のための次世代パワートレインとして、近年になって話題にあがるのは、すっかり電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)ばかりとなっています。しかし、つい最近まで、次世代パワートレインのひとつとして、大きな期待を寄せられていたのが「クリーンディーゼル」です。

 クリーンディーゼルは、「ガソリンエンジンよりも燃費がよい」「高速走行時のエンジン回転数が低いので快適」などのメリットがあります。クリーンディーゼルに使う燃料の軽油が、ガソリンよりも安いというのも嬉しいところ。そのため、クリーンディーゼルは、エコカーのひとつとして、国から補助金が出たほどです。

 また、ディーゼル車はガソリン車やガソリンエンジンを積むハイブリッドに比較して普及数が少ないので、災害時に燃料不足となったとき、燃料確保が比較的に楽だというメリットもあります。これを指して、マツダなどは企業のBCP対策(事業継続性)のため社用車などにディーゼル車を、とオススメしているほどです。

 2010年代の欧州の自動車メーカーは、「環境対策はディーゼルで十分」というスタンスで、日本のハイブリッド車と競う姿勢を見せていました。ところが、その欧州の巨人であるフォルクスワーゲンによるディーゼルゲート事件が2015年に発覚します。ディーゼルエンジンの排気ガスの規制を、不正ソフトを使って回避していたというのです。

 この問題発覚により、クリーンディーゼルの状況は一変します。ディーゼルエンジンは、クリーンではなく、すっかり悪役と見なされることになり、次世代パワートレインのひとつから脱落してしまうのです。今では、次世代パワートレインにクリーンディーゼルを! という意見は、ほとんど耳にすることがなくなっています。

 それでは、クリーンディーゼルは、まったくもって未来がないのでしょうか。実際には、そうではありません。クリーンディーゼルは、今なお根強く売れています。

「販売台数の半分がディーゼルです」まさかのメーカーが…

 日本における乗用車新車販売のデータのうち、登録車の燃料別登録台数(日本自動車販売協会連合会調べ)を見ると、2020年は新車販売全体に占めるクリーンディーゼルの割合は6%でした。翌2021年も6%、2022年は5.6%、2023年は5.5%、2024年は4.4%という実績です。ジワジワと下がってはいますが、急落したわけではありません。

 過去5年にかけて、自動車業界のトレンドは「EVシフト」と「電動化」であり、クリーンディーゼルに関する話題がほとんどなくなった状況であることを考えると、しぶとく売れ続けているという表現が適格でしょう。

 ちなみに、話題の中心であった電気自動車(BEV)の同じ時期の販売割合を見ると、2020年に0.6%、2021年に0.9%、2022年に1.4%、2023年に1.7%、2024年に1.4%というもの。ジワジワと伸びてはいますが、急増しているわけではありません。それどころか2024年は後退しています。こちらはかなり苦戦していると言えるでしょう。

 BEVとクリーンディーゼルの両方を販売するマツダの関係者に話を聞いてみれば、「比較的、車格の高いクルマはクリーンディーゼルの方が多く売れています。逆に小さなクルマになるとガソリンが多いという状況です」とのこと。

 マツダ全体のクリーンディーゼル車の販売比率は、2024年こそ28.6%でしたけれど、2020年から2023年にかけては、おおむね毎年30%台をキープしていました。

 三菱自動車もクリーンディーゼルをたくさん販売するメーカーです。2024年でいえば、クリーンディーゼルの販売比率は、三菱車全体の47.5%にもなっています。ただし、三菱自動車でクリーンディーゼルはミニバン「デリカD:5」とピックアップトラックの「トライトン」だけですから、それだけで半分近くという異常な状況です。

伸びしろ「ありまくり」じゃないか!

 EVシフトの旗手というイメージの強い、欧州のフォルクスワーゲンですが、2024年末に新型モデルを数多く日本に導入しており、そこでSUVの「ティグアン」とステーションワゴンの「パサート」の両方に、クリーンディーゼルエンジン車のグレードを用意しています。ビジネスを考えると、クリーンディーゼルが欠かせないというのです。

 また、トヨタのクリーンディーゼルの販売比率は例年1%程度ですが、2024年は2%に増えています。たった1%かもしれませんが、トヨタは販売台数全体が多いので、たった2%でも約2万5000台にもなり、三菱自動車の2万台弱を抜いて、トップであるマツダの約2万6000台に肉薄しています。

 つまり、現在の日本国内で言えば、まだまだクリーンディーゼルのニーズはなくなっていません。

 技術面で言えば、マツダは「CX-60」などでクリーンディーゼルに、48Vマイルドハイブリッドを追加しています。とはいえ、全体として見れば、クリーンディーゼルの電動化(ハイブリッド化)は、まだまだ遅れているというのが実情です。そういう意味でクリーンディーゼルには、電動化という“伸びしろ”が残っているのです。

 利用者目線で考えれば、クリーンディーゼルは今でも「燃料が安い」「燃費が良い」「高速走行が快適」というメリットが健在であり、ロングドライブでは、いまだにナンバー1のパワートレインと言えるでしょう。

 2024年は世界的にBEVへのシフトにブレーキがかかり、「次はプラグインハイブリッド(PHEV)だ」というような意見も散見されますが、逆に「灯台下暗し」でクリーンディーゼルの可能性もまだまだ残っているのです。

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