タイヤ会社が作りました! 組み立て5分のインスタント飛行機 めちゃ手軽でも売れなかったワケ
乗りものニュース / 2025年2月2日 18時12分
「ホームビルド機」と呼ばれる自作の組み立て式飛行機は、第2次世界大戦前の1920年頃からすでにありましたが、それらとはひと味違う組み立て式の飛行機をアメリカのグッドイヤーが1950年代に開発しました。
ゴムボートのように膨らませて使う飛行機
タイヤメーカーであるグッドイヤーがかつて、組み立て式の飛行機を作ったことがあります。それは、日本でも見られる分解したり折りたためたりするモーターグライダーなどのような飛行機(超軽量動力機)とは、ひと味違うものでした。
グッドイヤーが開発したのは、まさにタイヤと同じく、空気で膨らませるゴム製の飛行機です。「インフレートプレーン」と呼ばれるもので、直訳すると「膨張式飛行機」となります。
インフレートプレーンの最大の特徴は、折り畳んでコンパクトにできる点です。エンジンとプロペラは機体から外せるようになっており、それらを外した機体は空気を抜くことで、1畳以下の大きさにまとめることができます。この大きさなら、トラックどころかジープクラスの車両の荷台にも載せられるほか、コンテナに詰めてパラシュートで落とすこともできました。
グッドイヤーは1955(昭和30)年に「インフレートプレーン」を企画しますが、アメリカでは1931(昭和6)年、ラバーグライダーの試作実験がすでに行われていたため、そのデータを基にわずか12週間で設計から製造まで行って、1956(昭和31)年2月13日に初飛行へとこぎ着けました。
ところが計画中止 理由は「風船」ゆえ
「インフレートプレーン」の機体はゴムとナイロンメッシュの多層構造で、同じ素材のエアマットを用いた耐弾試験では、最大6発の7.62mm機銃弾を受けてもパンクせず空気圧を保持できることを実証しています。なお、機体を膨らませるにはコンプレッサーを用いて約5分といったところでしたが、もちろん人力の空気入れでも可能でした。
サイズは、ひとり乗りのGA-468が、全長5.97m、翼幅6.7mで、出力40馬力の2サイクルガソリンエンジンを1基搭載し、最大速度は約116km/h、20ガロン(約76リットル)の燃料で約630km飛ぶことができました。
またふたり乗りのGA-466も作られ、こちらの方が翼幅は大きく、エンジンも強力なものを搭載していました。
完成した「インフレートプレーン」を、グッドイヤーはまずアメリカ陸軍に売り込みます。しかしテスト飛行中に墜落したことで売り込みは失敗に終わりました。墜落は主翼の下に張られていた動翼(エルロン)制御用の金属ケーブルが滑車から外れ、その影響で主翼が変形したことによるものでしたが、やはりゴム製ということで、強度的に不安視されたのだと考えられます。
そののち、グッドイヤーは海兵隊に売り込んだり、降着装置を車輪から水上スキーのような板(スキッド)に交換してアメリカ海軍に売り込んだりもしましたが、どこにも採用されませんでした。
「インフレートプレーン」はテストや売込みのために計12機が製造されるも、結局1973(昭和48)年に計画は打ち切られてしまいます。のちにグッドイヤーは機体のいくつかを、アメリカ各地の航空博物館に寄贈したため、現在では航空科学分野のいち試作品としてその姿を見ることができます。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
海軍練習機「赤とんぼ」復元へ…久留米市でプロジェクト
読売新聞 / 2025年1月30日 9時30分
-
「世界初の独自開発超音速ジェット機」偉業達成! 超音速飛行に成功…速度は? JALも出資「21世紀版コンコルド」製造社の機体
乗りものニュース / 2025年1月29日 6時42分
-
「尻から燃料バッシャーン」 ロシア機の驚愕作戦には“先祖”がいた? 「世界初の可変翼戦闘機」の不思議な特技とは
乗りものニュース / 2025年1月26日 16時12分
-
中国自動車大手が「複合翼型」の空飛ぶクルマ発表 広州汽車、EVの電池技術や部品調達網を活用へ
東洋経済オンライン / 2025年1月9日 15時0分
-
元祖「空飛ぶクルマ」、万博で出るヤツよりよっぽど”クルマ”だった件 「しかもちゃんと走れます」 驚愕の全貌 デビューは70年以上前
乗りものニュース / 2025年1月5日 11時42分
ランキング
-
1かつて坪当たり売り上げ全国1位のスーパー閉店、人口減で淘汰された古き良き商店の志
読売新聞 / 2025年2月2日 9時2分
-
2「トランプ関税」、日本企業にも影響…経産省とジェトロが共同で情報収集やサポート
読売新聞 / 2025年2月2日 13時16分
-
3定年後は一瞬無職「社会から取り残されたよう」→ たまらず再就職の65歳元大手部長、ただならぬ努力で“年金月18万円と月収40万円”現役時代の収入キープも…厚労省に奪われた「働く意欲」【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月2日 10時45分
-
4小5レベルの言葉こそ相手にちゃんと伝わる理由 難しい言葉をそのまま使う人が気づいてないこと
東洋経済オンライン / 2025年2月2日 15時30分
-
5老後資金不足に焦り、ハイリスク投資に走る人の末路…元メガバンカーの経済評論家が「投資の前に実行してほしい」と切実に思う、たったひとつのこと
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月2日 9時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください