『ガンダム』世界の“空飛ぶゲタ”巨大兵器どうやって運んでいる? 真面目に考察してみた
乗りものニュース / 2025年1月26日 18時12分
『機動戦士ガンダム』シリーズでは定番となっている「サブフライトシステム」通称「ゲタ」はどのような理屈でMSを運ぶようになったのでしょうか。
人型兵器を上に乗せて飛ぶ不思議な軍用機
航空機「ド・ダイYS」(以下「ドダイ」)は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する架空の軍用機です。最大の特徴は、平たい形状の上部に巨大人型兵器「モビルスーツ」(MS)を搭載し、かつそのまま飛行できる点です。
同様のデザインは後発作品でも多用されており「ゲタ」「ベースジャバー」などといった架空機が、やはりMSを搭載して飛行。これらは後に「サブフライトシステム」という総称で呼ばれるようになっています。
これら「サブフライトシステム」のように、機内に収納せず、別の機体を上載せする方法は実在の航空機にもあるのでしょうか。
結論から言うと存在します。例えば、NASA(アメリカ航空宇宙局)がスペースシャトル運搬用に使用していた、大型旅客機ボーイング747-100型を改造した「シャトル輸送機」などが代表的な機体になるでしょう。
ただ、空虚重量でも78tあるスペースシャトルを搭載したために、原型のボーイング747-100よりも大幅に飛行性能が低下し、航続距離など原型では約1万kmもあったのに対し、約1900kmにまで減少しています。
『ガンダム』の話に戻りましょう。いわゆるファーストガンダム時点でのジオン軍主力兵器であるMSは飛行できないため、遠方での作戦行動は航空機による輸送が必須です。MS輸送能力のある大型爆撃機「ガウ攻撃空母」は3~4機、地球上、すなわち大気圏内でも運用可能な「ザンジバル級機動巡洋艦」には、6~12機のMSを搭載可能です。このふたつは「超大型飛行物体の格納庫にMSを収納する」という常識的な存在(大きさを除いては)と言えます。
ただ、ジオン軍はこれでは飽き足らず、MSを飛行させるために、偵察機「ルッグン」や、要撃爆撃機「ドダイ」にもMSを搭載できるようにしました。どちらも「搭載状態でもMSが戦闘できる」という破天荒な兵器で、「ルッグン」の場合はMSが「ぶら下がって」飛行し、「ドダイ」は機体上にMSが直立したままで運ばれます。
なお、主人公サイドの地球連邦軍も、サブフライトシステムとして使用可能な重戦闘機「Gファイター」の機体上面にMS「ガンダム」が直立して乗っかり、空中戦闘を行っていました。
いかに科学が進んだ宇宙世紀とは言え、ジオン軍のグフは全備重量80t、ガンダムは60tもあるため、ぶら下がるにせよ、直立するにせよ、猛烈な空気抵抗を受けると考えられますが、特にトラブルのある描写がありません。恐らく、何らかの方法で諸々の問題をクリアしていたのでしょう。
やっぱりミノフスキー粒子の恩恵?
『ガンダム』世界で数万tもある艦艇が地上を浮遊しながら移動できるのは、ミノフスキー粒子を散布して形成される「見えない立方格子」が、地面と機体の間に発生して、機体を支えるからと説明されています。
飛行に向いた形状とは思えないMSも、ジャンプ飛行(ガンダムが戦闘機ドップを追撃する場面では、ほぼ「飛行」している)できる世界観で、ドップも空気抵抗に留意したデザインには見えませんから、ミノフスキー粒子は散布するだけでも、一定の空気抵抗を軽減させる効果があるとも考えられます。
また、核融合炉が超小型化されているので、そこで生まれる大電力で強力な電磁石を使用し、MSが落ちないような工夫もされているのかもしれません。この場合、飛行時は電流を流し、MSの足の裏を磁石化し、降下などを行う場合は電源を落として磁力が発生しないようにするだけで済みます。
ただ作中で「ドダイ」は、MS搭載用に開発されたわけではなく、要撃爆撃機として開発された機体という設定です。要撃とは「あらかじめ待ち伏せして、進攻してきた敵を攻撃する」という意味の軍事用語です。航空機であれば、近づいてきた敵機を迎え撃つという意味も含まれます。
とはいえ、「ドダイ」は爆撃機のため空戦能力は持ちません。機首に備えた8連装ミサイルランチャーは、味方の陸上部隊を上空から支援するための装備であることから、この「要撃」とは「待ち伏せ用の小兵力を輸送する」という意味なのかと筆者(安藤昌季:乗りものライター)は推察します。確かに、垂直離着陸も可能なので有効だとは言えるでしょう。
なお、意外なところで「ドダイ」のMSを上部に搭載できるメリットが発揮された例があります。それは「グフ」を搭載したパターンです。「ザク」でも搭載可能ですが、白兵戦用のグフになったのは、後に登場するホバー移動が可能な重MS「ドム」と作戦時に連携するためであったと考えられます。
元々MS以外の何かを積む予定だった?
とはいえ、ここで不思議なのが、「ドダイ」はMS搭載用航空機として開発されたわけではないのに、機体上部の強度がMSの直立に耐えられ、80tのグフを搭載しても戦術機動が可能なほどの高い飛行性能を誇るという点です。単純に考えて、片足ごとに40tの重量がかかることになりますから「最初からMSではない何か」を載せるつもりで設計されたと思えます。
これはミノフスキー物理学で、航空機上に重量物を搭載できることが判明したことで、飛行可能戦車「マゼラ・アタック」などの陸上兵器を搭載することも研究されたということではないでしょうか。その一環で、最大の「重量運搬物」として想定されたのは、ICBM(大陸間弾道核ミサイル)だったのかもしれません。
2022年6月に公開された映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』では、地球連邦軍のICBMをジオン軍が入手して、戦局の不利を挽回するために発射するシーンがあります。この作品は、『ガンダム』シリーズの中の1ジャンルと言える「THE ORIGIN」の世界観を順守したものであるため、ファーストガンダムの世界観とは異なるパラレルワールドではありますが、人口や国力で劣るジオンが、地球を支配するためには、連邦軍が持つICBMの入手・管理が必要だと考えたのは合点がいきます。
例えばアメリカ軍のICBM「ピースキーパー」は、全長21.6m、直径2.34m、発射重量8.8tで、全長23mの「ドダイ」に搭載可能です。大きさ的には機内に収容できないものの、「ドダイ」の上面であれば「ピースキーパー」を数本は輸送できるでしょう。
こうした推察から、筆者は「ドダイ」というのは、ジオン公国が地球連邦軍の核ミサイルを輸送・管理し、地球を支配する抑止力として使うために開発した軍用機で、そのように設計されたものの「南極条約」で核の使用が禁止されたために、その必要性が低下した。だから、新たな用途としてMSの搭載を検討したら、寝そべらせなくても立ったまま戦闘できるという、新たな運用方法が確立されたとの仮説を立てました。
このような「ドダイ」×MSというジオン側の運用方法を目の当たりにした地球連邦軍は、「ガンダム」の輸送機である「Gアーマー」で、同じような運用を模索した結果、なんと「Gファイター上面にガンダムが乗って飛行可能」という戦術を編み出したのではないか、と考える次第です。
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