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製造期間わずか3年! 超希少な「トヨタ・ジープ」幕張メッセで発見!! 短期間で消滅した意外なワケ

乗りものニュース / 2025年1月25日 8時12分

『東京オートサロン2025』のトヨタブースに出店されたトヨタBJ型。「ランドクルーザー」の初代モデルで、1951年の誕生時はトヨタ「ジープ」に名称が与えられていた(山崎 龍撮影)。

「東京オートサロン2025」のトヨタブースにトヨタBJ型が展示されました。このクルマはトヨタの傑作車「ランドクルーザー」の記念すべき初代モデルです。ただ、一時期「ジープ」と呼ばれたとか。なぜ改名されたのでしょうか。

トヨタも「ジープ」作っていたって本当?

 2025年1月10日(金)~12日(日)に幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された「東京オートサロン2025」のトヨタブースに、「ジープ」みたいなトヨタ車が展示されていました。そのクルマの名は「トヨタBJ」。じつは「ランドクルーザー」の始祖ともいえるべき貴重なモデルです。

 ただ、そのスタイルが示すように、「トヨタBJ」の誕生には「ジープ」が深く関与しており、じつは同モデル、すなわち初代「ランドクルーザー」はなんと一時期「トヨタジープ」を名乗っていたほどです。改めてその流れを振り返ってみましょう。

 そもそも、四輪駆動車の代名詞的存在でもある「ジープ」が誕生したのは、いまから85年ほど前の第二次世界大戦初頭で、零細自動車メーカーのバンタム社で開発されました。ただ、同社はあまりにも零細だったため、本格生産を担ったのは大量生産に長けたウィリス社とフォード社です。両社のモデルは「ウィリスMB」「フォードGPW」として区分けされていましたが、ほとんどの部品で互換性がある同一仕様の車種でした。

 ちなみに2025年現在、「ジープ」の商標はステランティス(旧クライスラー)が保有しています。しかし、前述したように、トヨタも過去「ジープ」と呼ばれるモデルを生産していました。

 なぜそうなったのか、そこには第二次世界大戦後に日本を取り巻いた世界情勢の影響がありました。

 第二次世界大戦は1945年に終わったものの、その5年後に今度は日本の近隣、朝鮮半島で戦争が勃発します。朝鮮戦争と名付けられたこの戦いで、占領軍として日本に駐留していたアメリカ軍のほとんどが朝鮮半島に移動しました。それに伴って問題になったのが、日本の防衛・治安維持のための兵力が存在しなくなることでした。そこでGHQ(連合国軍最高司令部)は日本国内の治安維持を目的に、「警察予備隊」(現在の自衛隊)の創設を命じます。

三菱ジープに惨敗 でも結果オーライ?

 こうして1951年に警察予備隊が発足します。立ち上げに際して武器や車両などはアメリカ軍が用意しましたが、いずれも中古品でコンディションは良好とは言えない状況でした。しかも、激化する朝鮮戦争の影響で、追加供与を受けられるか否かも定かでなかったことから、輸送や連絡などの業務に使用する小型トラックは警察予備隊の創設時から国産化が検討されていました。そうした流れを受け、日本政府は国内の自動車メーカーに警察予備隊向けの車両開発を要請し、競争入札で決定することを告げます。

 これに応募したのがトヨタ、日産、三菱の3社でした。トヨタは前出の「BJ型」を、日産は4W60型(のちのパトロール)を、そして三菱はウィリスからライセンス権を得て組み立てた「ジープ」でトライアルに参加します。

 その結果、アメリカ軍供与のウィリスMB/フォードGPWと高い互換性があり、教育や保守管理にもメリットの大きかった三菱「ジープ」が採用を勝ち取ります。一方、トヨタと日産は敗れたものの、警察予備隊以外の官公庁需要に回されることになりましたが、逆にアメリカ軍や警察予備隊(自衛隊)の規格を気にする必要がなくなったことなどから、輸出を含めた民間市場へ活路を見出すことができるようになりました。

 このような経緯により、トヨタ「BJ」は1953年から量産がスタートしました。同車の製造は、シャシー組み立てこそトヨタ本社工場でしたが、車体生産と最終組み立ては新川板金工業(現:アラコ)が担うという分業体制で行われました。

 設計は、前出のウィリスMB/フォードGPWを参考にしており、それに加えて戦時中に鹵獲(ろかく)したバンタムMk.II(MB/GPWの原型)の事実上のコピー品といえる「四式小型貨物車」を開発した際の経験が生かされています。ただし、構成部品はトヨタ系のものにすべて置き換えられており、シャシーはトヨペットSB型トラックの梯子形フレームを補強・改良したものを採用しており、サスペンションもSB型のリーフリジッド式が流用されています。

 エンジンはシボレー「ストーブボルト」ガソリンエンジンをコピーした初代B型3.4リッター直列6気筒OHVを搭載しています。これによりMB/GPWに比べてホイールベースは370mm長い2400mmとなり、全長も443mm延長されて3793mmとなりました。また、トランスミッションとファイナルギアはトラック用の減速比が低いものが組み合わされたことで、初期型は副変速機を備えていませんでした。

なぜトヨタ「BJジープ」名前消えた?

 その後、1954年には、大型トラック用エンジンとして開発されたF型3.9リッター直列OHVが追加設定されましたが、これは高負荷連続運転の多い消防車のみでの採用に留まり、広く用いられるのは次の20型からとなりました。

 なお、この年には「ジープ」の名称が自社の商標に抵触するとのウィリス社、および同社からライセンス生産権を得ていた三菱からクレームが入ったことでトヨタは改名を余儀なくされ、世界的に人気を博していた英国のランドローバー(陸の海賊船の意味)を駆逐したいとの思いから、トヨタは新たに「ランドクルーザー」(陸の巡洋艦)の名称を与えています。

 こうして、わずか3年ほどでトヨタ車から「ジープ」の名は消えました。しかし、その後、新たな車名となった「ランドクルーザー」がトヨタを代表するブランドへと昇華したのはご存じのとおりです。

 このたび開催された「東京オートサロン2025」で「トヨタBJ」が展示されていたのは、ランドクルーザーユーザーを対象に、カスタマイズ、レストア、メンテナンス、オリジナルパーツやグッズ販売などを行う「ランクルBASE」です。

 実車はMB/GPWによく似ているものの、ボンネットが長く、ホイールベースも延長されているため、オリジナルの「ジープ」に比べて間延びした印象を受けるのはそのためです。フロントマスクはMB/GPWとは意図して変えられたようで、「ジープ」試作車のウィリスMAに似た意匠となっていました。

「ランドクルーザーBJ型」は残存数が少ないことなどから、現在ではトヨタ車の中でもとりわけ希少なモデルとなっています。そのうちの1台が東京オートサロンの会場に展示されていたため、実車を見られた人は本当に幸運だったと言えるのではないでしょうか。

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