特急あずさ“最長の行先”43年の歴史に幕 長野「南小谷」なぜこの駅止まりになったのか
乗りものニュース / 2025年1月25日 15時12分
2025年3月のダイヤ改正で消える、特急「あずさ」の大糸線「南小谷」行き。定期での乗り入れから43年もの月日を経て、状況は大きく変化してきました。「あずさ」が乗り入れる大糸線の過去と現在を振り返ります。
「松糸線」じゃなくて「大糸線」 特急乗り入れは昔から
JR東日本が2025年3月に実施するダイヤ改正で、中央本線の特急「あずさ」の南小谷(みなみおたり、長野県小谷村)乗り入れを廃止します。そもそも長野県北部の山間に位置する大糸線の南小谷駅まで、「あずさ」がなぜ乗り入れていたのでしょうか。
長野県の松本から新潟県の糸魚川を結ぶ大糸線は、沿線の信濃大町と終点の糸魚川から一文字ずつをとって大糸線となりました。松本と糸魚川を結ぶということであれば松糸線や糸松線でもいいはずですが、大糸線となっている理由には、大糸線のなりたちに由来があります。
もともとは信濃鉄道という私鉄が1915(大正4)から翌年にかけて現在の松本~信濃大町間に鉄道を敷設しました。その後、信濃鉄道は1926(大正15)年に全線を電化しています。その3年後から、ようやく信濃大町以北の路線が断続的に開業し始めます。
しかし信濃大町以北の鉄道敷設は信濃鉄道ではなく、国(鉄道省)によるものでした。この際に信濃大町から北へと大糸南線を、糸魚川から南へと大糸北線をそれぞれ着工しました。つまり鉄道省としては、信濃大町~糸魚川間の路線の整備を進めていくために命名したのが“大糸”南線と北線だったのです。
この後、信濃鉄道は1937(昭和12)年6月に国有化されて大糸南線に組み込まれています。そして松本~糸魚川間が全通するのは戦後、1957(昭和32)年のこと。信濃鉄道の開業から実に42年の月日をかけて南北が通じ、ようやく大糸線になりました。
スキー客や登山客の利用が多かった南小谷駅
大糸線が全通したことにより、そこから初めて信濃大町以北の電化が進みます。ただ、1967(昭和42)年までに南小谷まで電化されたものの、それ以北は実現しませんでした。
当時の南小谷というと、冬のスキー客の利用や、栂池高原から北アルプスへ登ったり、雨飾高原へと向かったりする夏の登山客の利用が多くありました。そのため、当時運行していた大阪発の急行「くろよん」、名古屋発の急行「きそ」、新宿発の急行「アルプス」などの一部が南小谷行きとして運行しました。
そしてこれらの急行列車が特急に格上げされ、特急「あずさ」の南小谷行きが定期列車として登場するのは1982(昭和57)年のことです。
存続の危機に立つ南小谷以北
それから43年ものあいだに、電化と非電化の境界駅である南小谷は、車両の運用の境界となることから、JR東日本とJR西日本との境界駅にもなりました。列車も南小谷で分断されており、特にJR西日本管内の大糸線がおかれている状況は厳しさを増しています。
JR西日本の資料によると、南小谷~糸魚川間の1日の輸送密度のピークはスキーブームもあった1992(平成4)年で1日1282人。それが2019(令和元)年は1日102人にと、ピーク時の約92%減まで落ち込んでいます。2017~2019年度の平均として1年間の赤字が5.7億円になることも発表されています。
JR西日本は将来的な持続可能な交通体系への議論として、廃止も含め第三セクター方式やバスへの移行の沿線自治体との検討に入っています。
JR東日本管内も、白馬は外国人観光客でにぎわうものの、そこから南小谷までは需要がぐっと細ります。一方で、南小谷~糸魚川間にまつわる地元の議論では、南小谷以南に列車を直通できれば、利用促進につながるとの見方があります。南小谷~糸魚川間を利用する人の8割は観光客で、その大半が糸魚川から南小谷・白馬といった拠点間移動であることもわかっています。
このため2024年からは、「大糸線利用促進輸送強化期成同盟会」が中心となって、北陸新幹線敦賀延伸効果による乗客の呼び込みを行うため、南小谷~糸魚川間の列車がない時間帯に新幹線との接続に考慮した「JR大糸線増便バス」を1日4往復走らせるなどの施策を行っています。
このバスは糸魚川~白馬間で運行され、バスによって“南小谷以南”の直通を果たしています。これによって直通効果を測定する狙いです。
一方で、地元ではかねて南小谷~糸魚川間のダイヤ設定について、南小谷での「あずさ」や糸魚川での新幹線との乗継を円滑にするよう要望もしてきましたが、「あずさ」が白馬止まりになると状況は変わります。また、名古屋から臨時で大糸線に乗り入れる特急「しなの」も白馬止まりです。それでも、北陸新幹線との連携も考慮するうえで、再び特急「あずさ」が南小谷へと区間を戻す日はくるのでしょうか。
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