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今や伝説「東武の路面電車」そのまんま!? 今も現役で走ってます! でも1両は「化けてます」

乗りものニュース / 2025年1月30日 7時12分

岡山電気軌道を走る旧東武日光軌道線塗装の3005号(大塚圭一郎撮影)

半世紀余り前に廃止された東武鉄道の路面電車の車両が、今も岡山市の岡山電気軌道で走っています。ほぼ姿を消した大手私鉄の路面電車を気軽に追体験できる全国でも珍しい路線ですが、ワケあって「期間限定」の運行です。

半世紀前に消えた「東武の路面電車」今も!

 栃木県の観光名所・日光の日光東照宮などを巡る観光客の足だった東武鉄道の旧「日光軌道線」の車両が、登場から「古希」を過ぎた今も現役で活躍しています。乗り込めば過去にタイムスリップしたような気分を満喫できますが、ワケあって「期間限定運行」となっています。

 1910年に開業し、その後延伸した旧東武日光軌道線は、現在のJR日光駅~東武日光駅~馬返間を結びました。馬返では明智平とつなぐケーブルカーの日光鋼索軌道線(1970年廃止)と接続し、明智平では現存する東武グループの日光交通明智平ロープウエイと乗り換えることができました。

 戦後の旧日光軌道線では、観光客輸送を強化するために宇都宮車両(現・スバル)が製造した100形が1953年に、宇都宮車両製などの連接車200形が翌54年に導入されました。路線は1968年に廃止されましたが、100形は抱えていた10両全てが岡山市の路面電車、岡山電気軌道へ移籍しました。その一部が、いまも現役で岡山の街を走っているのです。

移籍時にユニークな改造

 当時、車両が老朽化していた岡電にとって車齢が15年程度と比較的新しい100形を入手できたのは渡りに船で、型式を「3000形」に変えて運用を始めました。移籍時にワンマン運転ができるよう車内に運賃箱を設け、行き先表示の位置も変えました。

 中でもユニークな改造だったのが、屋根に取り付けられていた集電装置のビューゲルを、かつて岡電が標準としていた「石津式パンタグラフ」に交換したことです。

 通常のパンタグラフは、電気を取り込む「すり板」を架線に密着させるためにバネや空気の力を利用しています。これに対し、元岡電社長の石津龍輔氏が考案した石津式パンタグラフは重りの重力を活用しており、岡電は「構造が単純なため保守しやすいのが特徴です」と説明しています。

1両は「化けて」ます

 岡電で現役の旧日光軌道線車両は2両あります。1つは当時の塗装にした3005号で、もう1つは沿線の岡山城(烏城)に合わせて烏の濡れ羽色で塗った黒一色の「くろ」3007号です。

 うち「くろ」は現行シーズンでは2024年10月13日から東山線を1日に3往復しており、3005号は24年11月2日から毎月第1土曜日に2往復しています。

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は両方の電車が繰り出す2025年1月4日に訪れました。「グオー」という重低音を立てながら発進する「吊りかけ駆動」の乗り心地を楽しむファンが多く乗車し、沿線にはカメラを向ける愛好家も目立ちました。

 午前9時24分から11時24分まで東山~岡山駅前を3往復する「くろ」の車内には、大正浪漫の世界を描いた岡山県出身の画家・詩人の竹久夢二を題材にしたイラストを施しています。2024年の夢二生誕140年を記念し、扉を開けている間に夢二が作詞をした歌曲「宵待草(よいまちぐさ)」のメロディーが車内外に流れる機能が追加されました。

 一方、11時12分から12時44分まで東山~岡山駅前を2往復する3005号は、床に木の板を敷き詰めており、窓際に朱色の生地のロングシートが伸びています。壁には日光軌道線時代の「市内電車・ケーブル沿線案内図」を掲示しており、日光を駆けていた時代をしのばせてくれます。

 岡電東山線は岡山駅前~県庁通り間ならば大人120円で乗車でき、他の区間は140円です。1日乗車券は400円で購入でき、手ごろにレトロ車両を堪能できました。

 ただ、老朽化しているだけに運用上の難点もありました。バリアフリーの低床式車両とは異なり、乗降口の段差が大きいことからお年寄りは乗車しにくく、他の利用者が手伝っていました。

 また、3005号の降車ボタンがこの日は正常に作動せず、途中下車するためのボタンを押しても鳴らないことに焦っている乗客がいました。利用者からの申告で運転士もトラブルを把握したため、各停留場に着く前に車内放送で「本日は降車ボタンが故障しているため、お降りの方は乗務員にお声がけください」と周知した方が良いのではないかと思いました。

なぜ「期間限定運行」なのか

 両備グループ広報部特命担当の山木慶子さんは「くろ」と3005号が「人気車両になっている」と指摘します。それでは、なぜ「期間限定運行」なのかを尋ねると「冷房装置が付いていないため、夏は運行していない」と説明しました。

 これらの車両は窓を開閉できるため、筆者は「窓を全部開けて走らせれば風が入るのではないですか」と質問しましたが、山木さんは「子どもが手を出すと危ないから窓を開けっ放しにはしていない」と話します。

 例えば山万の千葉県を走る新交通システム「ユーカリが丘線」は、夏場には乗客用にうちわとおしぼりを車内に用意しています。ただ、これは全ての車両が非冷房であるための苦肉の策です。

 岡電は「くろ」と3005号を除く営業車両はいずれも冷房装置を備えているため、夏場にはその2両を外して「冷房化率100%」で運用しているということです。

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