新幹線あれば在来線特急は不要ですよね? 思いっきり“競合する列車” 優位性は…ある!
乗りものニュース / 2025年1月31日 7時12分
新幹線が開業すると、並行在来線の特急列車は廃止される傾向にありますが、都市部では存続し新幹線と競合する区間が多く見られます。なぜどちらも運行されるのか、3例を挙げ利用実態を見てみます。
新幹線相手に到底勝ち目はないのでは…?
北陸新幹線が敦賀駅(福井県敦賀市)まで開業した際、北陸新幹線と並行する在来線では特急列車が廃止されました。しかし、全国を見渡すと新幹線に並行する在来線にも特急列車が設定されている場合があり、あたかもライバル関係のようになっています。新幹線と在来線の特急が競合している区間を3つ挙げてみます。
●東海道新幹線vs特急「湘南」「踊り子」
東京~小田原・熱海間は、JR東海の東海道新幹線とJR東日本の東海道線が並行し、他社どうしで競合しています。在来線の特急として、東京~小田原間では特急「湘南」が、東京~熱海間では特急「踊り子」が運転され、一部の「踊り子」はJR東海管内にまたがる東京~三島間でも東海道新幹線と競合しているのです。
新幹線と在来線の特急を比べると、新幹線の方が圧倒的に速そうです。2025年1月現在で運賃・料金や所要時間を比べると、東京~小田原間では東海道新幹線の運賃・料金の合計が自由席利用で3280円、所要時間は約33分である一方、在来線の特急「踊り子」は運賃・料金の合計が2538円(ICカード利用)、所要時間は約1時間20分です。
また、東京~熱海間では東海道新幹線の運賃・料金の合計が自由席利用で3740円、所要時間は「ひかり」で約36分、「こだま」で約45分かかる一方、在来線の特急「踊り子」は運賃・料金の合計が3560円、所要時間は約1時間20分。所要時間では新幹線が圧倒的に速いのに、運賃・料金の合計は「踊り子」が少し安い程度にとどまっているのです。
「湘南」や「踊り子」に勝ち目がないように見えますが、「湘南」は平日の通勤時間帯に運転され、沿線の通勤客に利用されているほか、「踊り子」は伊豆急下田や修善寺などの伊豆半島への観光輸送が主体で、東京方面に列車が直通していることに意義があるのです。また、「踊り子」は新幹線が通らない横浜駅に停車する点でも、優位性を発揮できます。
東海道・山陽新幹線vs特急「スーパーはくと」「らくラクはりま」
京都~姫路間では、JR東海の東海道新幹線およびJR西日本の山陽新幹線と、JR西日本の東海道本線および山陽本線が並行しています。主に同区間で新幹線と並行してJR西日本が運転する在来線特急が、「スーパーはくと」と「らくラクはりま」です。
こちらも運賃・料金や所要時間を比べると、新幹線の運賃・料金の合計が自由席利用で4840円、所要時間は約43分である一方、在来線の特急「スーパーはくと」の運賃・料金の合計は4700円(通常期)と新幹線より少し安い程度で、所要時間は約1時間30分と新幹線の倍以上もかかっています。
京都~姫路間も新幹線が有利に見えますが、「スーパーはくと」は京都・大阪と鳥取などを結ぶ列車として運転されているので、新幹線とは役割が異なります。ちなみに、1994(平成6)年に「スーパーはくと」が新設された際は、全列車が大阪発着で運転されていました。1996(平成8)年に山陰本線の一部を電化した際、京都から山陰本線経由で鳥取方面に直通する特急列車がなくなったため、代わりとして「スーパーはくと」を京都発着に延長した経緯があるのです。
また、「らくラクはりま」は平日の通勤時間帯に運転されていますが、沿線の通勤利用を狙った列車で、この列車も新幹線と性格が異なります。
さらに、京都~姫路間では新快速がおおむね15分間隔で運転されています。新快速の所要時間は「スーパーはくと」や「らくラクはりま」とほぼ同じで、運賃は2310円と新幹線の半額以下で済みます。
このほか、京都~新大阪間では東海道新幹線と特急「サンダーバード」が競合しています。「サンダーバード」は大阪から北陸方面を結ぶ特急列車として運転され、こちらも新幹線と在来線特急で列車の性格が異なっています。
山陽新幹線vs特急「ソニック」「きらめき」
小倉~博多間では、JR西日本の山陽新幹線とJR九州の鹿児島本線が平行しています。在来線では特急「ソニック」や「きらめき」が運転され、山陽新幹線と競合しているのです。
運賃・料金や所要時間を比べると、新幹線の運賃・料金の合計が自由席利用で2160円、所要時間は約16分である一方、「ソニック」や「きらめき」は運賃・料金の合計が1910円、所要時間は40分から50分ほどかかっています。
こちらも所要時間で新幹線が圧倒していますが、新幹線が小倉~博多間をノンストップで結ぶ一方、「ソニック」「きらめき」は主要駅に停車して沿線からの利用があります。また、「ソニック」は博多・小倉と大分を結ぶ特急として運転され、博多から大分に直通する列車としての意義があるのです。
「きらめき」は博多~小倉・門司港間で朝晩を中心に運転され、沿線の通勤利用が主体となっていますが、かつては日中にも「きらめき」が運転され、山陽新幹線と競合していた時期もありました。
このほか、長崎本線の特急「リレーかもめ」や「かささぎ」の一部には門司港発着の列車があり、小倉~博多間も走行して山陽新幹線と競合しています。これらの列車も、「きらめき」や「ソニック」と似た使命があります。
新幹線と並行するJR在来線特急はライバルの関係にも見えますが、特に都市部では役割に違いがあり、それぞれの列車で利用者が定着しているのが実態です。
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