熱烈ラブコール「F-35戦闘機どうしても欲しい!」なぜ売ってもらえない? アメリカ激怒の元凶とは
乗りものニュース / 2025年2月8日 11時42分
トルコの国防大臣がアメリカに対し、F-35戦闘機の購入を再オファーしたと明言しました。じつはトルコは過去、F-35の導入寸前まで行ったものの、白紙撤回されたことがあります。なぜそうなったのか、そして購入は可能なのか推察します。
アメリカがF-35禁輸措置に至った背景
2024年12月、トルコのヤシャル・ギュレル国防相は、アメリカに対しF-35戦闘機の購入を再びオファーしたことを明らかにしました。この発表は、トルコの航空戦力の整備を巡る混迷を象徴する出来事と言えるでしょう。
かつて、トルコはF-35の導入予定国に名を連ねており、共同開発パートナーとして多額の資金を拠出していました。しかし、その後、アメリカの禁輸措置を受けてしまいました。どうしてこのような状況に至ったのでしょうか。また、F-35を再び調達できる可能性はあるのでしょうか。
経緯を振り返ると、事態が急変したのは2019年です。トルコがロシア製のS-400地対空ミサイルシステムを導入したことがきっかけでした。この決定に対し、アメリカは強く反発。最終的にF-35計画からの除外という厳しい措置をとったのです。
なぜ、こうなったのかというと、S-400はNATO(北大西洋条約機構)の防空ネットワークに適合しないばかりか、その強力なレーダーシステムがF-35のステルス性能を暴露するリスクがあると懸念されたからです。この結果、トルコはF-35の共同開発国としての資格を剥奪され、すでに引き渡し準備が進んでいたF-35も受領できなくなりました。
F-35を追われたトルコは、その後、戦闘機政策において迷走を続けています。空軍の主力戦闘機が軒並み老朽化するなか、比較的新しいF-16についてはアップグレードを進め、何とか戦力の維持に努めているものの、これは短期的な解決策に過ぎません。
一応、トルコでは国産ステルス戦闘機「KAAN(カーン)」の開発計画を進めています。この機体はトルコ独自の技術力を示す象徴的な存在として期待されており、F-35以上の高性能機と自称していますが、開発資金や技術的課題、量産化の道筋など、プロジェクトが最後(部隊運用)まで到達するかは依然、不透明です。
少なくとも即座に配備可能な戦闘機とはならず、量産機の部隊配備までにはまだ膨大な時間が必要であることは間違いありません。
こうした状況を鑑みてなのか、トルコはユーロファイター「タイフーン」の導入を検討するなど、方針が定まらない様子を見せています。
隣国ギリシャにF-35が引き渡されると?
F-35は現時点で世界最高峰の戦闘機のひとつであり、圧倒的なステルス性能と情報共有能力を備えています。トルコと領土問題を抱えるギリシャはF-35の導入を決定しており、引き渡しが始まると空の質的優勢はギリシャに傾くと考えられます。これらの事情からも、戦闘機の速やかな更新はトルコにとって喫緊の課題であり、言うなれば同国が抱える戦闘機整備の課題を一挙に解決できるのはF-35しかない状況です。
トルコは、今回のF-35再オファーに際し、「アメリカはもうS-400を問題視していない」と主張しています。しかし、これは本当でしょうか。アメリカ側はこれに関連する公式な発表を行っていないため、依然としてS-400の配備がF-35計画への復帰を妨げる主要な障害となっていることは間違いありません。
加えて、トルコはS-400を完全に廃棄する気配を見せておらず、システムの稼働状況についても詳細を明らかにしていません。この問題が解決しない限り、アメリカがトルコにF-35を再び売却する可能性は非常に低いと言わざるを得ないでしょう。
トルコのF-35復帰の願いは、その切実さを理解しつつも、容易に実現するとは考えにくく、トルコのロシア接近はアメリカをはじめとするNATO諸国に深い不信感を抱かせました。これを払拭するには、S-400の問題だけでなく、より包括的な信頼回復が必要ではないかと筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)は考えます。
いずれにせよ、F-35の再導入が実現するかどうかは、トルコの外交政策、特にアメリカとの関係修復にかかっています。戦闘機を巡るトルコのひっ迫した防衛事情がどのような進展を迎えるのか、国際社会は注目しています。
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