「バース・掛布・岡田」ウェイポイント廃止なぜ? 航空界の“関西名物”が3月消失…その経緯
乗りものニュース / 2025年2月9日 11時12分
神戸空港では、新飛行経路の採用にともなって、阪神タイガースの選手の名称にちなんだ航空路上の経由点「ウェイポイント」が廃止されます。どういった理由からなのでしょうか。
「バース、掛布、岡田」が…!
神戸空港では、2024年3月20日から新しい飛行経路を採用します。これにともない、同空港周辺の名物である“阪神ウェイポイント”が廃止される見込みです。どういった経緯からなのでしょうか。
飛行機はフライトの際、安全に効率よく飛行するため、定められた航路で上昇し、巡航中は設定された「航空路」を通り、定められた航路で降下し、目的地まで行くのが一般的です。
ここで設定されている経由点が「ウェイポイント」になります。航空路の分岐点や境界、空港の出発経路、到着経路などに設置されており、飛行機はそこを経由して目的地まで向かいます。
“阪神ウェイポイント”は同空港の到着経路に設定されているもので、阪神タイガースOBの掛布雅之氏にちなんだと思われる「KAKEF」、同じくランディ・バース選手の「BERTH」、岡田彰布選手の「OKADA」の3つで構成されています。これが今回、廃止となるのです。
今回の“阪神ウェイポイント”の廃止は、神戸空港の第2ターミナル供用開始に伴うものです。拡張により同空港は発着便を国内線で1日最大80便から120便に拡大しながら国際チャーター便を受け入れることになります。
大阪湾上空には神戸空港の空域以外に伊丹空港と関西国際空港の空域が設定されています。これまでは、神戸空港の着陸機は空港の西側から進入し、出発機は西側へ向けて飛ぶ経路が設定されていました。この場合、進入経路と出発経路がともに明石海峡上空で「鉢合わせ」状態となってしまうため、支障が生じていたのです。
たとえば、従来の運用では到着便が着陸を中止して再び高度をあげ着陸のやり直し「ゴーアラウンド」を図る際、再び明石海峡上空まで戻ってから進入をやり直すことになります。つまり、先行便が着陸するまでは後続便は進入を始めることができなかったというわけです。
その一方で、新しい飛行経路では出発便やゴーアラウンド時の経路が淡路島上空に設定されるため、到着便と出発便が明石海峡上空で鉢合わせになることが防げるようになります。では、なぜ経路の変更が今まで行われてこなかったのでしょうか。
その理由に近年普及が進む新しい航法方式の採用に関係しています。
“阪神ウェイポイント”がなくなった背景
従来の航法方式は「ILS(計器着陸装置)」や「VOR(超短波全方向式無線標識施設)」といった地上から電波を発する航法無線局からの電波に依存しているため、無線局の場所やそこから発射されている電波の方向に沿ってウェイポイントを設定する必要がありました。
しかし近年、GPSなどの衛星を利用した航法システムの精度が向上したことを背景に、「RNAV(広域航法)」とよばれる衛星系の航法システムの導入が進められています。この航法システムは地上設備に依存せず、任意の場所にウェイポイントを設定することが可能です。同システムの登場により、神戸空港でも、これまでより効率の良い飛行経路を導入できるようになりました。
RNAVでは、各ウェイポイントにはその場所を特定する座標が緯度、経度として公表されるため、パイロットはウェイポイントの名前をオートパイロットに打ち込むだけで入力が完了するという仕組みになっています。
ちなみに、ウェイポイントの命名法にルールはありません。文字数に制限があるのでスペルの一部が省略されるほか、既存のウェイポイントとの重複を避けるためにスペルの一部が変えられるケースはありますが、ウェイポイントの命名にはその飛行経路の設計に携わった担当者の裁量が広く認められています。
たとえば松山空港のROBIN WEST RNAV進入路上に設定されている「ROMAN」はこの経路を設計したアメリカ海兵隊岩国基地の主任管制官(当時)だったROMAN氏の名前に由来しています。
またアメリカにも「御当地ウェイポイント」が。たとえば、カンザスシティー空港へのアプローチ経路上には「BARBQ」「RIBBS」「BRSKT」などのウェイポイントが存在します。これはカンザス州の名物がバーベキューであることにちなんだものです。
「バース、掛布、岡田」にちなんだウェイポイントは消えますが、前述のようにRNAVの普及に伴い、地上の航法施設に依存しない場所でもウェイポイントの設定が可能になったことと、空の交通量が増えるのに伴いウェイポイントの新設は今後も続くでしょう。これから新たな「ご当地ウェイポイント」の登場も期待できるかもしれません。
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