エンジンの位置ソコ!? 「異形の輸送機」なぜこの形に 試作機止まりで終わった経緯とは
乗りものニュース / 2025年2月6日 16時12分
1970年代のアメリカで、エンジンが主翼の前方上に付き出た異形の輸送機「YC-14」が試作されました。なぜこのようなデザインとなり、実用化には至らなかったのでしょうか。
短距離離着陸を変わった手法で
1 970年代のアメリカで、ボーイング「YC-14」という輸送機が試作されました。これは中型輸送機「C-130」の後釜を狙ったもので、エンジンが主翼の前方上に付き出た異形の機体でしたが、結論を先に言えば、米空軍は採用しませんでした。なぜC-130をしのぐこと目的に作られた同機は、陽の目を見ることがなかったのでしょうか。
YC-14は米空軍が1970年代に立てた、短い滑走路で発着できる輸送機の開発計画で試作された輸送機になります。この計画で米空軍は1954年に初飛行したC-130の更新を予定していました。
短距離離着陸を米空軍が求めた背景には、当時、米国が「泥沼にはまった」とされたベトナム戦争で、前線につくられた基地の短い滑走路での運用を求めていたことがあります。
一般に航空機が短距離で発着するには、機体を軽くするかエンジンの推力(馬力)上げる必要があります。ただジェットエンジンの場合、これとは別に排気を主翼の上面に流し飛ぶのに欠かせない揚力を上げる方法もあります。
YC-14が採ったのは、USB(Upper Surface Blowing)と呼ばれる、主翼上の前にエンジンを配置し、排気を翼の上に流して揚力を確保する方式でした。そのため、2基のエンジンはまるで象の耳のように目立つユニークな外形になりました。
なぜ「異形の輸送機」は試作止まりに?
YC-14は2機がつくられて2年間ほど飛行試験が行われましたが、前述のように米空軍には採用されませんでした。
理由として伝えられているのは、あまりに短距離での離着陸にこだわりすぎたためということです。
実はUSB方式の場合、短距離での離陸は得意ですが、主翼に排気を当てる分、推力になる分の空気の流れを減らすことにもなり、巡航飛行時は不利になるとされています。さらに短距離での離陸にこだわったあまりに、生産や修理などが、かなり高コストになることも指摘されていました。
また、ベトナム戦争自体も1975年に終わり、あまりに特殊すぎる環境下でしか真価を発揮しない、短距離離着陸性能ばかりが脚光を浴びることが無くなったのも背景にあるのでしょう。
こうした計画が持ち上がった当初は期待されても、開発中の環境の変化で陽の目を見なかった例は、実はYC-14と同じエンジン配置をした日本の実験機でもありました。
それが、日本では1985年に初飛行した、航空宇宙技術研究所(現JAXA)の実験機「飛鳥」です。この機体も短距離着陸のため、4基のエンジンを主翼前の上面に並べていました。
飛鳥が研究された当時、将来は地方空港向けの新機種につなげたい機運があったものの、その後は地方空港でも滑走路が延長されたことから、2025年現在でも、主翼の下にエンジンを配置した旅客機が日本ではスタンダードです。
飛鳥自体は国産のFJR710エンジンを載せるなど研究成果を残しましたが、短距離離着陸のみを大きく求めた機体は結局、軍用でも旅客機でも主流になることはありませんでした。ちなみに、YC-14が更新するはずだったC-130は、頑丈な輸送機として2025年現在でも現役となっています。
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