ついに初納入!海自「空前の巨大戦闘艦」のための“新型レーダー”どれだけスゴイ? アメリカの製造現場に初潜入してきた!
乗りものニュース / 2025年2月9日 6時12分
アメリカの大手防衛関連企業であるロッキード・マーチン社は2025年1月16日、海上自衛隊用の最新鋭艦載レーダー「SPY-7(V)1」のアンテナ第1面が、防衛省に納入されたと発表しました。じつは、筆者は昨年このレーダーの製造施設を視察していました。
ついに納入された最新鋭レーダー
アメリカの大手防衛関連企業であるロッキード・マーチン社は2025年1月16日、海上自衛隊で運用予定である「イージス・システム搭載艦(ASEV)」用の艦載レーダー「SPY-7(V)1」のレーダーアンテナ第1面が、防衛省に納入されたと発表しました。
SPY-7は、同社が製造する最新鋭のレーダーです。防衛省はイージス・システム搭載艦を2隻建造するとしており、合計8面のアンテナが納入される予定です。じつは、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は2024年9月に、このSPY-7を製造しているロッキード・マーチン社の施設を、日本のメディアとしては初めて取材する機会を得ました。
そもそもSPY-7とは、どのようなレーダーなのでしょうか。 SPY-7は、アメリカ本土に飛来する弾道ミサイルの早期探知および識別を行うために開発された「長距離識別レーダー(LRDR)」で培われた技術をベースに生み出された艦載レーダーです。両者は、いずれも「サブアレイ・スイート」と呼ばれる小さなレーダー装置を組み合わせることで、一つの大きなレーダーを構成します。そのため、SPY-7の場合には、搭載する艦艇のサイズや運用者のニーズに合わせて、そのサイズを自在に変更できます。
また、レーダーを稼働中でも、背面からサブアレイ・スイートを交換することで故障に対応する「ホットスワップ」が可能であるなど、メンテナンス面でも優れた特徴を有しています。
現在イージス艦に搭載されているSPY-1Dレーダーと比較して、SPY-7の探知距離は3.3倍、弾道ミサイル防衛(BMD)実施中の捜索範囲は約20倍に向上しているとのこと。SPY-1Dの探知距離は約500km程度とされているため、SPY-7は約1600km先の目標を探知できることになります。
加えて、SPY-7では水平方向に送信される水平偏波と、垂直方向に送信される垂直偏波を同時に送受信する「二重偏波レーダー技術」を用いており、探知した目標の形状を正確に捉えることができます。これにより、弾道ミサイルの囮(おとり)弾頭と真弾頭を見極めることも可能です。
さらに、SPY-7はソフトウェアベースのレーダーシステムであるため、ハード(レーダーを物理的に構成する部品)に変更を加えることなく、レーダーを動かしているソフトウェアをアップデートすることにより能力向上を図ることができます。つまり、何か新たな脅威が登場した場合や、新しい機能を実装しようとする場合、ソフトウェアを更新することで迅速に対処することができるというわけです。
日本向け最新レーダーが着々と製造
アメリカ東部 のニュージャージー州にあるモーレスタウン、ここに同社の一部門である「ロータリー・アンド・ミッション・システムズ(RMS)」の巨大な開発・製造施設があります。RMSでは、戦闘機を含めた航空機、各種ミサイルや射撃管制システム、宇宙開発、そしてレーダーなどさまざまな製品の開発および製造を担当しています。
モーレスタウンの施設では、イージス・システムをはじめとする射撃管制・戦闘指揮システム、レーダー、ミサイル発射装置などを開発、製造しています。そんな最新鋭の技術がテンコ盛りの施設ですが、周囲には見渡す限りの森と平原が広がっており、まさに大自然の中にあるポツンと一軒家な研究所といったところ。
ちなみに、ロッキード・マーチン社ではモーレスタウンの施設を含め、ニュージャージー州に5つの主要な施設を有しています。これらの施設の面積をすべて足すと、合計1.5平方キロメートルとなり、東京ドーム約31個分の広さに相当。そこで合計5000人の従業員がそれぞれの業務に従事しているのです。
モーレスタウンの施設では、冒頭で紹介したSPY-7の開発、製造、試験、納品までを一貫して実施しています。まず、施設の中核たる製造ラインで、SPY-7構成部品が続々と生産されます。
続いて、これらを組み合わせてレーダーとして機能する状態になったものが、製造ラインに隣接する「生産試験センター(PTC-2)」に搬入されます。ここで、SPY-7はイージス・システムと実際に連接され、付近を飛行する航空機や宇宙空間を周回する衛星などを探知しつつ、問題点の有無などが最終的に確認されます。
こうして、イージス・システムと連接されることにより、実際に艦艇へと搭載された状態を再現することができます。そうすれば、艦艇への搭載前に、戦闘システムとの連接性などを確認することができ、スムーズな統合を実現することができるわけです。
着実に広がるSPY-7ファミリー
優れた性能と特徴を有するSPY-7ですが、これが搭載される艦艇は日本のASEVだけではありません。
現在のところ、SPY-7はカナダ海軍およびスペイン海軍でそれぞれ就役予定の戦闘艦艇に搭載されることが決定しています。カナダ海軍では、15隻が建造予定のリバー級駆逐艦にSPY-7(V)3が搭載されます。これは、現在運用されているハリファックス級フリゲートを置き換えるもので、SPY-7の納入は2028年、1番艦の就役は2030年代はじめと予定されています。
一方、スペイン海軍では、5隻が建造予定のボニファス級フリゲートにSPY-7(V)2が搭載されます。これは、アメリカ海軍で運用されていたオリバー・ハザード・ペリー級のライセンス生産版であるサンタ・マリア級フリゲートを置き換えるものです。SPY-7の納入は2026年、1番艦の就役は2028年がそれぞれ予定されています。
現在これらSPY-7運用国である日本、カナダ、スペインの間では、「ユーザーグループ」を設立しようという動きがあります。これは、SPY-7に関する運用データなどを共有することにより、何か問題が発生した時の迅速な対処や、知見の共有などをスムーズに行おうというものです。
また、先述した通りSPY-7はサブアレイ・スイートと呼ばれる小型のレーダーを組み合わせることで構成されています。そこで、たとえば海上自衛隊の既存のイージス艦のうち、比較的艦齢の若いあたご型護衛艦のレーダーをSPY-7で置き換える、いわゆる「バックフィット改修」を行うことも可能でしょう。
同様のアプローチは、アメリカの大手防衛産業であるRTX社が開発した艦載レーダー「SPY-6」が、すでにアメリカ海軍のイージス艦などを対象に実施しており、海上自衛隊の方針が気になるところです。
海上自衛隊では今後イージス艦を現在の8隻から10隻へと増勢し、さらに旧式化したこんごう型護衛艦4隻の後継艦についても、整備を予定しています。つまり、今後6隻の新型イージス艦が建造されることになりますが、その艦載レーダーとして何が選定されることになるのか、注目が集まります。
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