「うちにある敵の兵器、いる?」 イスラエルが「拾った」ロシア製兵器をウクライナに供与提案 じつは“伝統的なやり方”って!?
乗りものニュース / 2025年2月11日 6時12分
イスラエルは2025年1月27日、ウクライナに対してイスラエルがレバノンの武装勢力から鹵獲したロシア製兵器の供与を提案しました。じつは、鹵獲兵器の活用は、イスラエルにとって十八番ともいえる芸当なのです。
ウクライナに鹵獲兵器の供与を提案
イスラエルのシャレン・ハスケル外務次官は2025年1月27日、ウクライナのエフへン・コルニチェクイスラエル駐在大使と会談を行い、その席でイスラエルがレバノンの武装勢力「ヒズボラ」との戦闘で入手したロシア製兵器のウクライナへの供与を提案しました。
2024年10月にイスラエルはレバノン南部へ侵攻し、ヒズボラの軍事拠点を攻撃。その過程で、恐らくイラン経由でヒズボラに供与されたロシア製兵器を大量に鹵獲(ろかく/戦地などで敵の兵器などを奪うこと)していました。
イスラエル国防軍は国産やアメリカなどから輸入した兵器を使用していますので、ロシア製の兵器は不要なのですが、ウクライナ軍はロシア製兵器の扱いに慣れており、3年目に突入するロシアとの戦いで兵器を消耗しているウクライナにとっては、ありがたい話なのでしょう。
ウクライナはロシアとの戦いが本格化して以降、実戦で有用性が証明されたイスラエル製兵器の購入を希望していますが、イスラエルはロシアへの配慮などから自国製兵器の輸出を控えてきました。ここへ来てイスラエルがウクライナへの兵器供与に踏み切ったのは、ヒズボラとその背後で兵器を供与するイランをけん制する狙いがあってのことと見られています。
ウクライナからすれば、希望しているイスラエル製兵器ではないものの、同国から兵器を供与されたという実績は残りますから、念願のイスラエル製兵器の導入に向けた道筋をつけるという意味でも、願ったりかなったりなのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
じつは日本にも「鹵獲兵器」の売り込みが…!
資源が乏しく、先進諸国に比べれば重工業の製造基盤にも劣るイスラエルは建国以来、鹵獲兵器をただスクラップにするのではなく、自国の防衛や外交の道具として有効活用してきました。
イスラエルが建国される以前、パレスチナにはイギリス軍が駐留していました。同軍はイスラエル建国にともなって撤退する際、不要になったM4「シャーマン」戦車などをスクラップにして捨てていったのですが、建軍まもないイスラエル国防軍はこれらのスクラップをかき集め、稼働できるM4シャーマン戦車などを手にしています。
中東戦争などの武力紛争においては、イスラエルは旧ソ連がアラブ諸国に供与したT-54/55戦車を大量に鹵獲しています。それらを改造した「チラン」戦車をイスラエル国防軍の戦力に加えたうえ、国産の「メルカバ」戦車の普及で不要になったチランはウルグアイへ売却。さらには友好的だった南レバノン軍へ供与し、一部は重装甲の兵員輸送車「アチザリット」へと再改造され、イスラエル国防軍で使用されています。
中東戦争では戦車だけでなく、MiG-21などの旧ソ連製戦闘機も大量に鹵獲されています。イスラエルはそのMiG-21を徹底して分析し、得た知見を産業にもつなげました。イスラエル企業のIAI(Israel Aerospace Industries)が、ルーマニア空軍のMiG-21を「ランサー」に改修する仕事を獲得しています。
さらに、イスラエルは日本にもこうした売り込みを行っています。筆者が航空自衛隊の元将官から聞いた話なのですが、1980年代、中東戦争などで鹵獲したMiG-21などを、空対空戦闘訓練で使用する仮想敵機として航空自衛隊に提案しにきたことがあったとか。
このときのMiG-21のお値段は「高級なメルセデス・ベンツ数台分くらい」とのことで、結局この話は大蔵省(当時)が購入予算を認めてくれずにお流れになったのだそうですが、元将官の方は「今でも買っときゃよかったと思う」と述べておられました。
「あのミサイル? アメリカに返しましたよ」→ウクライナに到着
純粋な鹵獲兵器ではないのですが、イスラエルがアメリカから供与された「パトリオット」地対空ミサイルシステムもウクライナに供与されたようです。
これはイスラエルが1991(平成3)年の湾岸戦争の後、アメリカから供与を受けたパトリオットです。その後、国産の「アロー」ミサイルシステムなどの普及で不要となり、予備として保管していました。
ヒズボラから鹵獲したロシア製兵器の供与はまだ行われていませんが、パトリオットはポーランド経由でウクライナへの引き渡しが完了しているようです。実績のあるパトリオットのウクライナへの供与は、ロシアの機嫌を損ねてしまいそうな話ではあるものの、イスラエル政府当局者は海外メディアのインタビューに「たしかにパトリオットはアメリカに返却したが、返却したパトリオットがその後どうなったのかは、我々(イスラエル)の知るところではない」と述べ、とぼけています。
イスラエルという国家に対しては、様々な意見があってしかるべきだと思いますが、鹵獲兵器や供与兵器すら自国の利益にしようとする姿勢には、学ぶべきところがあると筆者には思えます。
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