「かぼちゃ電車」JRから絶滅! 最後の「湘南色115系」快速、山陽路に消える 「あれ、ちょっとヘンだぞ」
乗りものニュース / 2025年2月11日 15時12分
国鉄時代の1972年に登場した115系電車300番台で唯一残っていたJR西日本の車両が引退しました。これで「湘南色」や「かぼちゃ電車」と呼ばれる塗装の115系もJRから絶滅。解体される山口県下関市まで乗車ツアーが実施され、“快速”として最後を迎えました。ただ車両をよく見ると、ちょっとヘンなところが。
生え抜きではないが最後まで「湘南色」だった115系が引退
鋼鉄製の車体を緑色とオレンジ色の湘南色に塗ったJR西日本下関総合車両所岡山電車支所(岡山市)所属の国鉄形電車、115系300番台が2025年2月1日、山陽本線で下関市へ向かいました。3両のD-26編成とD-27編成をつないだ計6両で、途中の徳山駅から下関駅までは日本旅行が「最後の営業運転に乗車」と銘打ったツアーを実施しました。
このツアーは解体される115系に乗り、“終焉の地”となる下関へ向かうというものです。徳山駅に集合し、翌2日に下関支所での撮影会に参加して現地解散となる1泊2日の行程で、105人が参加しました。
湘南色は1950年に東海道本線に登場した電車80系がルーツ。沿線である神奈川県・湘南地域を通ったのが由来で、カラーリングがカボチャをほうふつとさせることから「かぼちゃ電車」とも呼ばれました。この塗装は1972年に登場した115系を含めた近郊型電車に引き継がれ、ステンレス製車両に変わった後は車体の帯に残されています。
1976年に製造されたD-26とD-27は、実は湘南色の「生え抜き」ではありません。製造時は青色と白色の「スカ色」で、国鉄三鷹電車区(現・JR東日本三鷹車両センター)に配属されました。中央本線(中央東線)の普通などで運用後、1986年に国鉄岡山電車区(現・岡山電車支所)へ転属。その際に塗装が湘南色に塗り替えられました。
国鉄の分割民営化で発足したJR西日本は、2009年度以降に鋼鉄製車両の塗装の単色化を進めます。筆者(大塚圭一郎・共同通信社経済部次長)は元幹部から「塗装のコスト削減が狙いだ」と聞きました。色は地域によって異なり、岡山などの中国地域は「瀬戸内海に反射する陽光のイメージ」の黄色が採用されました。
しかし、大勢の“同僚”が黄色に塗り替えられた中でも、D-26とD-27は湘南色をまとい続けました。これら2編成がJRで最後の115系湘南色となりましたが、長野県の第三セクター、しなの鉄道では115系1000番台の湘南色3両編成が1編成走り続けています。
手づくり感満載の「快速」 一般客は気づかず
115系は2月1日、途中で踏切の安全確認があったため予定より10分遅れの17時05分に徳山へ入線。ツアーの参加者を乗せて3分遅れの17時09分に出発しました。
前後の行き先表示器の部分には白地に「快速」の赤い文字が躍り、D-26に「ひろしまCity」(ひろしまシティ電車)、D-27に「Sunライナー」(サンライナー)のヘッドマークが取り付けられました。
ツアーに添乗した日本旅行の金船 裕さんは「サンライナーなどがもともと山陽本線の快速列車として走っていたため、快速の字幕を“再現”した」と解説します。実は、LED(発光ダイオード)の行き先表示器の上に、「快速」のステッカーを貼っていたのです。
後部標識灯(尾灯)は登場時のように赤く見えるのが“異色”で、金船さんは「中に赤いセロハンを張りつけた」と明かしました。また、車内の広告枠には、「感謝」などと記した岡山電車支所からのメッセージが掲示されていました。
途中の停車駅は新山口だけで、MT54モーターが「グオーン」という音色を響かせながら瀬戸内海沿いを足早に駆けました。その甲斐もあって回復運転に成功し、「列車は遅れて発車いたしましたが、ただいま時刻通りの運転に戻っています」との車内放送が流れました。
新山口には定刻の17時46分に到着し、約30分間停車しました。D-26とD-27は車内に国鉄時代の雰囲気を残すボックスシートが残っているのが、今となっては変わり種です。
湘南色をまとい、両開き扉が片側3か所にあるのも、山陽本線の岩国~下関間で“現役選手”となっている黄色の単色で片側2か所に両開き扉がある115系とは異なります。
それでも、一般の利用者はそうした違いになかなか気づきません。下関行きの定期列車だと勘違いした男性客のグループが乗り込み、ツアー客から団体列車だと教えられて「やばい、出ないと」と慌てて下車する光景も見られました。
発車前には、車内放送で「この列車は団体専用列車です。一般のお客様はご乗車になれませんのでご注意ください」と注意喚起していました。
違う色の「仲間たち」も集まった!
他の列車が遅れた影響で、新山口を6分遅れて18時20分に出発。下関の4番線には3分遅れの19時12分に滑り込みました。その到着前「皆様にご乗車いただけたことで、この車両も有終の美を飾ることができたと思います」と、しみじみ語りかける放送が流れました。
翌2月2日の下関総合車両所下関支所での撮影会には、中国地域のかつての塗装をまとった国鉄時代製造の車両が並びました。115系300番台の湘南色の脇には115系3000番台のクリーム色に青色の帯が入った「瀬戸内色」、さらに105系の白地に青色と赤色のラインが入った「トリコロール色」も加わって花を添えました。
瀬戸内色がサンライナーのヘッドマークを付けた“幻”の光景も。金船さんは「通常では乗れない列車に乗車でき、普通は並ぶ機会のない車両を一緒に撮影できたと参加者に喜んでもらえた」と手応えを示しました。
JR西日本に2024年4月時点で234両あった115系は、227系などへの置き換えが進んでおり、今後も同様のツアーを催行する可能性を「機会があれば考えたい」と話します。
大勢の愛好家らが勇姿を写真などに記録し、記憶にとどめた後、D-26とD-27は半世紀近い現役生活の幕を閉じる下関総合車両所本所へ旅立ちました。
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