歴代戦車の「スピードキング」は? 速さのためなら防御も捨てた! 戦車すらやめた!

乗りものニュース / 2019年11月9日 6時0分

履帯を外して走ることが可能なクリスティー戦車。

戦車は、現用である陸上自衛隊の10式戦車や90式戦車でも最高速度約70km/hです。しかし、世界にはそれを上回る最高速度100km/h越えの戦車も存在しました。戦車における「スピードキング」の遍歴を追います。

戦車黎明期のスピードキングは…?

「兵は拙速を尊ぶ」というように、戦車も鈍足よりは俊足のほうが良いに決まっています。そのため、戦車黎明期である第1次世界大戦の時代から、機動力の高い戦車について各国で試行錯誤が続きました。それにひとつの解を出したのがアメリカの、通称「クリスティー戦車」でした。

「クリスティー戦車」とは、アメリカ人のクリスティー技師が開発した一連の戦車の総称です。彼が作った戦車は機動性を追求し、構造が画期的だったため、世界的に有名となり、このように呼ばれています。

 クリスティー戦車は、履帯(いわゆるキャタピラ)を外した状態でも走行が可能な構造なのが特徴でした。「走行が可能」というよりも、むしろ整地でそのように走行することを目指した設計です。これに高出力の航空機用エンジンを搭載したことで、M1928というタイプでは、履帯を外した状態で111.4km/hもの最高速度を発揮しました。

 ちなみに同時期に開発されたほかの戦車が、おおよそ最高速度20km/hから35km/h程度のものがほとんどだったので、そのなかで履帯を外して100km/h越え、履帯付きでも68.5km/hのスピードは驚くべきものでした。

スピードのためなら防御は不要!

 ところが、クリスティー戦車は、当時のアメリカ軍における戦車の運用思想に沿うものではありませんでした。そうした理由などもあり、試作の域を脱することはできず、実戦での性能は未知数です。

 制式化され実戦参加したもののなかで最速といえば、たとえば第2次世界大戦中に登場したM18「ヘルキャット」駆逐戦車が挙げられるかもしれません。

 同車は、厳密にいえば戦車ではなく「対戦車自走砲」になり、全周旋回可能な砲塔を持ち外見は戦車のようですが、オープントップで装甲は小銃弾を防ぐ程度の薄さです。しかし、それゆえに重量17.7tと軽量で、高出力の航空機用エンジン搭載ということもあって最高速度80km/hを誇りました。この速さは、元々M18自体が対戦車自走砲としてヒットエンドラン戦法をとるために設計されたことに由来します。ちなみに同時期の戦車で最も速かったのは、イギリスの「クロムウェル」戦車で最高61km/hですから、M18は20km/h近く優速だったことになります。

 この圧倒的な速さの追求は、戦後も続きました。1972(昭和47)年に誕生したイギリスの「スコーピオン」軽戦車は、偵察用として開発されたことから俊足が求められ、最高速度はM18「ヘルキャット」駆逐戦車を上回る80.5km/hを誇りました。

「ギネス世界記録」に認定された世界最速戦車

「スコーピオン」軽戦車も、俊足を手に入れるために高出力エンジンを求め、「クリスティー」戦車やM18「ヘルキャット」駆逐戦車が航空機用エンジンを搭載したのに対し、「スコーピオン」軽戦車は高級車ブランドとして当時も名を馳せていたジャガーの直列6気筒ガソリンエンジンを載せました。

 これも速さにひと役買ったかもしれませんが、ガソリンエンジンは燃費や引火性に課題があったため、その後アメリカ製のディーゼルエンジンに載せ替えられています。

 また当初は火力支援や対戦車戦闘を考慮して76mm砲を搭載したのですが、即応性や連射性が劣っていたため、一部の車両は後に30mm機関砲に換装され、「セイバー」偵察装甲車に名称を改めました。いうなれば、足にも砲にも速さを求めた結果、「戦車」をやめてしまったわけです。

「スコーピオン」軽戦車は1994(平成6)年、「セイバー」偵察装甲車も2004(平成16)年に退役していますが、兄弟車で同様に80km/hを発揮する「シミター」偵察装甲車は現役なので、「スコーピオン」軽戦車の血統は残っているともいえるでしょう。

 なお、2002(平成14)年1月26日には民間人が「スコーピオン」軽戦車で82.23km/hを記録し、世界最速戦車としてギネス登録されています。ただし、この記録は速度を出すために、砲弾や無線機などを外して軽量化したうえで達成したものでした。

 ちなみに履帯式ではない、装輪式(車輪式)の16式機動戦闘車ならば100km/h以上出るため、スピードを求めるなら、結局、履帯より車輪の方が最適なのは自明の理です。

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