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【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第三十三回「論語と算盤(そろばん)」栄一のさらなる成長を示す二つの事件

エンタメOVO / 2021年11月4日 17時8分

渋沢栄一役の吉沢亮(左)と三野村利左衛門役のイッセー尾形

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「青天を衝け」。10月31日に放送された第三十三回「論語と算盤(そろばん)」では、主人公・渋沢栄一(吉沢亮)が第一国立銀行の頭取に就任。さまざまな危機に立ち向かう姿も描かれ、相変わらず見どころ満載の回だった。

 今回、栄一が関わった大きな事件は二つ。第一国立銀行乗っ取りをもくろむ三井組番頭・三野村利左衛門(イッセー尾形)との対決と、外国商人による蚕卵紙の買い控えだ。だが、それぞれの事件は独立しており、一見、物語としてはつながりがないようにも見える。

 にもかかわらず、グッと引き付けられ、思わず見入ってしまった。その理由は何か。実は「栄一の成長」という観点で振り返ってみると、二つの事件が見事に結びついてくるのだ。

 まず栄一は、小野組破綻に乗じた三野村の第一国立銀行乗っ取り計画に対抗するため、銀行検査を実施。それにより、三野村の計画を阻止するとともに、自らが頭取に就任することになる。

 こうして銀行のトップに立った栄一は、徳川慶喜(草なぎ剛)の下を訪れ、かつて将軍として国の頂点に立っていた慶喜の苦しい胸の内を察する。

 恐らくここで、頭取になった自分の立場を慶喜の姿に重ねたに違いない。そこで改めて「論語」を読み、人としての在り方を見つめ直す…。こうして振り返ってみると、頭取就任から慶喜との再会、そして論語へ、という栄一の成長の流れが見えてこないだろうか。

 そこへ持ち上がったのが、外国商人による蚕卵紙買い控え事件だ。対策に困った政府の大久保利通(石丸幹二)から相談を受けた栄一は、大蔵省在職時に対立したわだかまりからか、「これは国の一大事だ。政府がどうにかすべきことではありませんか」と突っぱねようとする。

 だが、大久保が「国を助けると思うて、味方になってくれんか」と頭を下げたことで翻意。「おかしれえ。やってやりましょう」と引き受ける。

 この大久保とのやり取りには、冒頭で繰り広げられた小野組破綻をめぐる大隈重信(大倉孝二)との口論が対になっている。

 大蔵省を去ったことへの恨み言をぶつける大隈に、栄一は「そんな私情で国を動かされては困る!」と詰め寄ったが、まさにその裏返しの行為を、一度は大久保に対して行うところだったわけだ。栄一の成長が、ここで浮き彫りになる。

 史実を振り返ってみれば、実際は、栄一はここまで論語にまったく触れてこなかったわけではない。だが、三野村、大久保、西郷隆盛(博多華丸)という先達が今回で世を去ったことを考えると、これから栄一は世の中を先頭に立って歩んでいくことになるはずだ。

 今回がその節目と考えると、栄一自身が「論語には、己を治め、人に交わる常日頃の教えが説いてある。俺は、この論語を胸に商いの世を戦いてえ」と語ったように、改めて論語で人としての在り方を見つめなおす展開は、ドラマとして秀逸な脚色といえるのではないだろうか。

 前半で対立した三野村に栄一が終盤、「三井銀行開業、おめでとうございます」とあいさつしたことも含め、本作の脚本の見事さを改めて実感した回でもあった。劇中で三野村が「あまりにも金中心の世の中になってきた」と語っていたが、そんな世の中にまた一つ成長した栄一がどう立ち向かっていくのか、これからの展開が楽しみだ。(井上健一)


渋沢栄一役の吉沢亮(左)と徳川慶喜役の草なぎ剛

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