「今回は、極上のエンターテインメントを作ったつもりです」 『悪は存在しない』濱口竜介監督【インタビュー】
エンタメOVO / 2024年4月19日 10時0分
-今回のように俳優としてのイメージがない人を使う場合と、『ドライブ・マイ・カー』(21)の西島秀俊さんのような有名な俳優を使う場合とのすみ分けというか、俳優に関する監督のイメージというのはどのようなものなのでしょうか。
キャスティングは、ケース・バイ・ケースですが、そのキャラクターに最も説得力を与えてくれる人を選びます。究極的に言えば、俳優か俳優ではないかというのは、あまり関係がないと思っています。ただ、俳優でないとそれは難しいという場合もたくさんあります。細やかに感情の方向転換をしたり、表現していかなければならないような役となると、それはやっぱり俳優でないと難しいだろうなとは思います。今回の大美賀(均)さんは演技経験はほぼない人です。なので、ご覧いただいたら分かるように、それほどせりふがあるわけではないし、喜怒哀楽を表現することもないので、彼にできることは無理にやらないというのは原則でした。その上で彼の見た目とか、ありようとかを、映画の物語の中にうまく組み込むことができれば、素晴らしい形で存在してくれるだろうと思いましたし、実際にそうなったと思います。
-『ドライブ・マイ・カー』も、『偶然と想像』(21)の「魔法(よりもっと不確か)」もそうでしたが、今回も車の中での会話のシーンが多かったですね。何かこだわりがあるのでしょうか。
基本的には、映画を作り始めたとき、会話の場面を描くことからしか発想できなかったんです。人の動きを演出するより、会話によって人間関係が変わって発展させるのがどちらかといえば得意でした。でも会話の場面は、例えば喫茶店でずっとしゃべっていたら映画としては面白くないので、会話の場面を乗り物の中でやることはずっとやっています。最近になって車が出てくるのは、ある程度、予算が掛けられるようになったから。若い頃は電車でゲリラ撮影もしましたが、ある程度スタッフがそろって、安全を確保することができるような体制が組めるようになってくると、車での撮影も可能になるし、その車の中での人間関係というか、公共交通機関で話すことと、プライベートの空間としての車で話すことは結構違ってきます。その空間にも影響されて、今までよりもパーソナルな会話が、乗り物の中でやりやすくなったというのはあると思います。
-ラストシーンはいろいろな解釈ができると思いますが、ああいう形にしたのは、観客に委ねるような意図があったのでしょうか。
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