「具体と抽象が入り交じった美術館に入った時と同じような感覚になるかもしれない」福士蒼汰『湖の女たち』【インタビュー】
エンタメOVO / 2024年5月16日 8時0分
-「役者人生のターニングポイントになる作品になった」というコメントをしていますが。これまでとは違うと思ったところは?
大森監督から、「自分が心から思ったタイミングでちゃんとお芝居をするということを心掛けてほしい」とご指導いただきました。最初はその言葉の意味をつかみ切れていなかったのですが、撮影を行っていく中で、「この感覚なのかな」と感じる瞬間があって。監督も、僕がだんだんと感覚をつかんでいくのを感じ取ってくださっていたように思います。今作の撮影が終わった後も大森監督から受けた演出を大事にしています。「最近お芝居が変わったね」と声を掛けていただくことも多くなりましたし、自分の変化を実感できるようになりました。大森監督との出会いは、僕の役者人生において間違いなく大きな財産だと思っています。
-今回は、今までのイメージとは違う役で、ある意味ダークサイト的な役だったと思いますが、演じる上で迷いはありませんでしたか。
僕の今までのイメージを覆す役柄ではあるのですが、僕の中で実はあまり不安はなかったんです。確かにこの役は、結構ディープなシーンが多いですが、自分の頭の中では、明確にイメージすることができたんです。不安というよりは、前向きな挑戦という気持ちの方が大きい作品でした。また、ずっと東京に帰らずに滋賀に約1カ月滞在したというのも大きかったと思います。滋賀で本当にこの作品に自分をささげることができたというか。東京に帰って、自宅で自由に過ごしたら、多分脳みそが戻ってしまったと思うんです。圭介が実際に生きている滋賀の地で作品と向き合えたことが、大きく影響したと思っています。
-完成作を見て、 今までの自分とは違うと感じましたか。
今回はキャラクターをあまり作らず、自分から出るものだけで演じていたので、主観性が強いお芝居をしているはずなのですが、完成したものを見た時に、自分とは別の人物のようになっていて、客観的に見られたという不思議な体験をしました。
-“新しい福士蒼汰”という感じですか。
これも僕の一部ではあるので、今までの僕と何もかもが違うという感覚ではないのですが、人間的な部分という意味では新しい僕と見ていただけるのではないかと思います。
-これからも俳優をやっていく上で、大きな作品になりましたか。
そうですね。撮影した時は29歳でしたが、20代の最後に、これから30代として成長していく過程としてはすごくいいスタートダッシュが切れたと思います。これから先も、この感覚を忘れないようにして成長していきたいなと。自分の引き出しが一つ増えた、扉が一つ開いた感覚を忘れずにいたいです。
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