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「時代劇には無限の可能性があると思います」『碁盤斬り』白石和彌監督【インタビュー】

エンタメOVO / 2024年5月17日 15時10分

-この映画は、前半が人情話というか、ちょっとほのぼのとした感じです。それが後半の復讐劇に入ってからは、陰惨な感じに転調していきますが、そこは意識しましたか。

 とても意識しました。動と静とまでは行かないまでも、やっぱり転調してから映画の味が変わる感じにしたいと思っていました。なので、前半はできるだけ静かにしておいて、急激な変化が訪れるお月見の日を境に、話が急に変わるようにしました。だから後半は、時代劇というよりは、西部劇のように、復讐のために宿敵を追い駆けていくみたいな感じに見えるといいなと思いながらやっていました。

-格之進役の草なぎ剛さんですが、また新しい姿を見た気がしました。例えば、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』(02)の真田広之さんに通じるものがあると思いました。

 そう言ってもらえるとうれしいです。草なぎさんが普通に自然に、難しいことを考えずにやらせてくれたので、とてもやりやすかったのと、後半、転調してからは、さっき西部劇って言いましたけど、そこからはもう無精ひげにはなるわ、月代(さかやき)も伸ばしっ放しになるわで、どこをどう歩いてきたのみたいに汚れているんですけど、そんな草なぎさんを見て、「僕は汚い侍を撮りたかったんだ」ということに気付かされました。その瞬間、先々の映画の企画についてのインスピレーションが湧いたりもしました。

-草なぎさん以外の俳優の演技で印象に残ったことはありますか。

 お絹役の清原さんは、あの若さなのにりんとしていて、誰よりも大人な感じがするし、中川大志くんの弥吉はすごく難しい役で、一歩間違えたら「こいつ頭悪いのかな」みたいな見え方をするところも感情で乗り切ってくれました。また、落語は「あの50両はどうしたの?」という話だから、実際に源兵衛が厠(かわや)に行く前にあそこに入れるのは、絵的にはどうなのかなと思ったけど、國村さんにやってもらったら、至って自然な感じがして、改めて俳優ってすごいなと思いました。脚本で困っている時は、大体役者が助けてくれます。

-今回は、時代劇の本場の京都で撮影したそうですが、以前、役所広司さんが「時代劇は継続や伝承が大事。例えば、結髪や衣装でも伝承していかないと途絶えてしまう。だから時代劇は絶対になくしてはいけない」と言っていました。監督もそういう思いを持ちましたか。

 京都に行くと、本当にそう思います。僕は助手の人に至るまで、彼らはスタッフではなくて全員がクリエーターだと思っています。そういう意味では、まだまだ腕のいい想像力豊かなクリエーターが京都にはたくさんいます。一度なくなると、それを復活させるのは本当に大変なことだから、できるうちに継承して、みんなでやっていかなければいけないし、何なら国が補助金を出して、年に何本か時代劇を作らせるということをやってもいいぐらいの話だと思います。

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