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「光る君へ」第三十回「つながる言の葉」かつてのまひろを思わせるあかね/和泉式部の存在【大河ドラマコラム】

エンタメOVO / 2024年8月10日 8時59分

(C)NHK

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。8月4日に放送された第三十回「つながる言の葉」では、主人公まひろ(吉高由里子)が、夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介)を亡くしてから3年後が舞台となった。

 まひろは母として娘・賢子の育児に取り組むと同時に、物語を執筆しつつ、藤原公任(町田啓太)の妻・敏子(柳生みゆ)たちに和歌を指導。一方、娘の中宮・彰子(見上愛)と一条天皇(塩野瑛久)の冷え切った関係に悩む藤原道長(柄本佑)は、藤原行成(渡辺大知)や公任らに相談。「帝は書物がお好きなので、『枕草子』を超える面白い読み物があれば」「面白い物語を書く女がいる」などの言葉を受け、その作者であるまひろを訪ねてくる。

 そんな物語の中で、ひときわ異彩を放っていたのが、この回から登場したあかね(泉里香)、後の和泉式部だ。まひろが敏子たちに和歌を教えている場に、「先生は歌を詠むとき、そんな難しいことをお考えなんですか? 私は、思ったことをそのままを歌にしているだけですけれど」という一言とともに登場。しかも服装も、「暑いんですもの」とシースルーの薄い上着を着用という大胆な姿で、まひろを驚かせていた。


 番組公式サイトの人物紹介でもあかねは「恋多き華やかな女性」と書かれており、生真面目なまひろとは対照的だ。だが、その立ち位置を詳しく見てみると、文学者という以外にも、まひろと似通った点が多いことに気付く。

 真っ先に思い出されるのが、かつて道長の妻になる前の源倫子(黒木華)たちが開いていたサロンに通っていた頃のまひろだ。華やかな姫たちに囲まれ、どことなく居心地悪そうにしていた下級貴族のまひろとあかねでは、振る舞いは大きく異なるが、その場から浮いている点は近いものがある。

 また、あかねは宮中で評判の「枕草子」について「さほど面白いと思いませんでした」とさらっと言ってのけた。この場でまひろは「軽みのある文章で、よいと思いましたが」と答えていたが、前回、作者のききょう/清少納言(ファーストサマーウイカ)が持参した「枕草子」を読んだとき、同様に文章のうまさを褒めながらも、「私は皇后さまの影の部分も知りたいと思います。人には光もあれば、影もあります。人とは、そういう生き物なのです。それが、複雑であればあるほど、魅力があるのです」と物足りなさも指摘していた。

 さらにこの回、奔放なあかねが自分の恋についてまひろに相談する一幕も見られたが、その際、まひろは「私は、あかねさまのように思いのまま生きてみたかった」と語っている。このときまひろの頭にあったのは、かつての道長との恋だろうが、ここからも、ある種の親近感を抱いている様子がうかがえる。

 どことなくまひろに近いものを感じさせるあかねが、これからまひろとどのようにかかわっていくのか。気になるのは、もしあかねとききょうが顔を合わせたら、どうなるのかだ。ちなみに、ききょう(桔梗)の花言葉は「変わらぬ愛」「清楚」「誠実」「気品」「従順」「薄幸」で、あかね(茜)の花言葉は「私を思って」「傷」「中傷」「誹謗」「不信」「媚び」とのこと。なんとなく2人は馬が合わないような気がする。

 初登場で視聴者にも強い印象を残した泉の芝居も含め、これからあかねが物語をどんなふうに彩っていくのか、楽しみだ。

(井上健一)


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