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「光る君へ」第三十三回「式部誕生」人々を動かす「源氏物語」の存在【大河ドラマコラム】

エンタメOVO / 2024年9月7日 8時48分

「光る君へ」第三十三回「式部誕生」人々を動かす「源氏物語」の存在【大河ドラマコラム】

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。9月1日に放送された第三十三回「式部誕生」では、「源氏物語」の続きを執筆するため、内裏に出仕した主人公・まひろ(吉高由里子)の日常と、中宮・彰子(見上愛)との出会いが描かれた。

 彰子の住まいである藤壺に出仕したまひろは、早速「藤式部」の呼び名を与えられ、彰子に仕える女房の1人として、「源氏物語」の続きの執筆にとりかかる。ところが、日々女房たちがせわしなく働く藤壺では執筆に集中することができず、藤原道長(柄本佑)に「実家に戻って執筆したい」と申し出る。「藤壺で書いてくれ」と懇願する道長を押し切り、いったん実家に戻ったまひろは、無事に続きを書き上げ、一条天皇(塩野瑛久)に献上する。

 この回で興味深かったのが、まひろの書いた「源氏物語」が、人々を動かす様子が描かれていたことだ。書き上げた「源氏物語」を持って藤壺に戻ったまひろが、彰子の元へ挨拶に訪れたところ、それまでほとんど自分の意思を表すことのなかった内気な彰子が、「帝がお読みになるものを、私も読みたい」と興味を示す。一瞬、「えっ?」と戸惑ったまひろだが、「これは、続きでございますので…。では、これまでのところを手短にお話いたします」とあらすじを語り始める。

 さらに、道長に伝えていた通り、「源氏物語」の続きを書き上げたまひろに会うため、藤壺を訪れた一条天皇は、まひろにこう告げる。

 「あの書きぶりは、朕を難じておると思い、腹が立った。されど次第に、そなたの物語が朕の心に染み入ってきた。まことに不思議なことであった。朕のみが読むには惜しい。皆に読ませたい」


 これこそ、人の書いた“物語”(「源氏物語」に限らず、創作全般としての物語)が、読む者の心を捉えるさまを端的に語った言葉ではないだろうか。そしてまひろは、「物語は、女、子どもだけのものではございませぬ。中宮様にも、お読みいただければ、この上なき誉に存じます」と答える。

 このように、まひろの書く「源氏物語」が“添え物”になることなく、きちんと物語の中心に位置し、それを巡って人間模様が動いていく様に感心した。

 そして、道長から与えられていた「一条天皇を藤壺に呼び寄せる」というミッションに成功したまひろは、褒美として扇をもらう。そこに描かれていたのは、幼いころ、河原で初めて出会ったときのまひろと道長の姿だった。

 このシーン、道長の粋な計らいに胸打たれたが、もうひとつ興味深かったのが、回想で織り込まれた「鳥が逃げてしまったの。大切に飼っていた鳥が」「鳥を鳥かごで飼うのが間違いだ。自在に空を飛んでこそ鳥だ」というかつてのまひろと道長のやりとりだ。

 この回、女房たちから「薄紅色が好み」と思われていた彰子が、まひろに向かって「私が好きなのは、青。空のような」と告げる一幕があったが、まさに彰子こそが鳥かごの中の鳥。扇を手にしたまひろの回想は、内気な彰子が空に羽ばたいていくことを予感させる。果たしてまひろ、そして「源氏物語」との出合いは、彰子に何をもたらすのだろうか。

 これからまひろの書く「源氏物語」はさらに宮中に広まっていくはずだが、それがどのように人々を動かし、ドラマを作っていくのか。新たな興味がかき立てられる回だった。


(井上健一)

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