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「光る君へ」第三十八回「まぶしき闇」ききょう、道長、伊周…。あらわになった人々の本音【大河ドラマコラム】

エンタメOVO / 2024年10月12日 8時53分

(C)NHK

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。10月6日に放送された第三十八回「まびしき闇」は、一条天皇(塩野瑛久)の2人の子、敦成親王への呪詛事件と敦康親王の元服を巡る出来事を通じ、それまで覆い隠していた建前が外れ、さまざまな人々の本音が明らかになる回だった。

 その口火を切ったのが、久しぶりに主人公まひろ(吉高由里子)の元を訪ねてきたききょう/清少納言(ファーストサマーウイカ)だ。前回ラストから続くシーンだが、「光る君の物語、読みました」という言葉のあと、いったい何を言うのかとドキドキしていた。「読みたい」と藤原伊周(三浦翔平)に告げた前回も、決していい印象を持っているとは思えなかったからだ。

 ところが、真っ先にききょうの口から飛び出したのは、意外にも「引き込まれました」という称賛の言葉。その後もまひろの文才をたたえる言葉が続くが、気をよくしたまひろが「ききょうさまのように才気あふれる楽しい方が、藤壺にいらしたら、もっと華やかになりますのに」と語ったことを境に、様子が変わる。これをききょうは、「それはお断りいたします」と即座に拒否。続けて「私は亡き皇后、定子(高畑充希)さまのお身内をお支えするために生きております」と告げると、徐々に一条天皇の心を定子から引き離した道長(柄本佑)への恨み言に変わり、最後は「源氏の物語を、恨んでおりますの」と、道長の計画に協力したまひろと「源氏物語」を批判する本音が飛び出した。

 またこの回、最も印象的だったのが、あらわになった道長の野心だ。道長から「これより、俺とお前がなさねばならぬことはなんだ?」と尋ねられた息子・頼通(渡邊圭祐)が、「それは、帝のお力となり、朝廷の繁栄と安寧を図ることにございます」と答えると、それを次のように否定する。

「われらがなすことは、敦成(親王)さまを、次の東宮になし奉ること。そして、一刻も早くご即位いただくことだ」

 前回、まひろに「敦成親王さまは、次の東宮となられるお方ゆえ…」と語った際は、それがどこまで本気なのかわからない部分もあったが、今回のこの言葉で、孫の敦成親王を天皇にするという道長の野心がはっきりした。「家の繁栄のため、ではないぞ」と付け加えてはいたものの、そのとってつけたような口ぶりは、にわかには信じがたいものがあった。

 そして、この回のラストを締めくくったのが、道長に対する伊周の深い憎しみだ。


 藤壺で中宮・彰子(見上愛)と仲むつまじく暮らしていた敦康親王が伊周の屋敷に移り、「近頃、左大臣は私のことを邪魔にしている」とぼやくのを聞いた伊周は、道長を訪ね「敦康さまを、帝から引き離し申し上げるのは、やめていただきたい」と頭を下げる。ところが、道長から「帝の思し召しで参内を許されたにもかかわらず、なぜ内裏に参らなかった」と問われた途端、「何もかも、お前のせいだ!」と、呪詛札(じゅそふだ)をばらまきながら、秘めていた怒りを爆発させる。

 ここで明らかになったききょう、道長、伊周、三者の本音に共通するのは、いずれも次の東宮の座に関する話ということだ。あらわになった三人の本音が、朝廷の今後にどうかかわってくるのだろうか。その一方で、ささやかながらまひろが宮の宣旨(小林きな子)から、娘・賢子との仲がうまくいっていないことを言い当てられる展開もあった。これも含め、覆い隠していた建前が外れ、あらわになった人々の本音が、まひろと道長の将来をどのように左右するのか、今後が気になる第三十八回だった。

(井上健一)


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