「冷たいそばと温かいそばが同時に食べられるような映画です」『破墓/パミョ』チャン・ジェヒョン監督【インタビュー】
エンタメOVO / 2024年10月23日 16時0分
-撮影のロケは1カ所ではないのですよね。
まず、お墓自体は韓国のほぼ最南端である釜山で撮影をしました。韓国の11月は秋の雰囲気が濃くなって、物寂しい秋の色に染まるんですけど、そうした雰囲気を盛り込みたかったのです。また、12月に入ると雪が降るため、その前に撮影を進めたかったので、北の方から順番に、1カ所で2カットずつ撮りながら南下していく感じでした。
-この映画をホラー映画と呼ぶのは少し違うような気もしますが。
僕は、前作も今回もホラー映画としてのアプローチはしていないつもりです。もしこの映画をホラー映画として仕上げるのであれば、アメリカ在住の依頼人を主人公にするべきです。なぜかというと、ホラー映画というのは基本的にその95パーセントが、被害者中心の物語であり、そうであってこそ恐怖感が増します。ですので、僕の映画はほとんどの場合、主人公が専門家のような人になっていて、逆の立場からすれば加害者になります。例えば、バンパイアならヴァン・ヘルシング、キョンシーなら道士といった具合に。日本のホラー映画は怖過ぎてあまり見ていませんが、『陰陽師』(01)が大好きです。
-この映画は日本についての描写が大きな役割を果たしますが、ネタバレになるので聞くことができませんが…。(以下、ネタバレあり)
その点について、僕から少し説明をしたいと思います。そもそもこの映画は、過去にあった間違いを取り出すことが根底にあります。墓を掘る場面において、歴史的に見て2度あった韓国にとっての大きな傷と遭遇します。まず1つ目は、重葬の上にあるものを掘った際に100年前の植民地支配と遭遇します。それを取り出して解決をして、その後にもっと過去を掘り下げてみたら、もう1つの歴史的な事件と遭遇します。それが500年前の文禄・慶長の役、豊臣秀吉の朝鮮出兵でした。この2つの歴史的な傷について、キーワードを申し上げたいのですが、まず1つ目は、100年前の植民地支配に関連するものとして、「残滓(ざんし)」と「傷跡」がキーワードになっています。もっと深く掘った時に遭遇する500年前の文禄・慶長の役のキーワードは「恐れ」です。日本の戦国時代に、日本の部隊が朝鮮半島に渡って来た時に、そこで暮らしていた人々が感じたであろう恐れを、この映画を通してなくしたかったのです。
僕はそもそも日本の映画を通して映画の勉強をしてきましたし、唯一の趣味が日本の漫画を読むことです。日本が大好きで日本のファンのようなものです。ですから、本作は日本に対してよろしくない感情を持っているという話ではなくて、韓国がずっと持ってきた痛みとか傷について語りたいという気持ちでした。ですので、本作の主人公たちは、自分たちが抱え込むことになった人々の傷と地位を回復してあげるのです。それと同じように、韓国が持っている傷跡を自ら努力して回復したいということを考えながらこの映画を作りました。この説明は、もし歴史関連で誤解があったらその答えになるのではないでしょうか。僕がこの映画を作った本音の部分についてご理解をいただきたいと思います。
-どんな日本映画が好きなんですか。
映画学校で学んだので、今村昌平監督を勝手に師匠と呼んでいます。好きな日本映画が多過ぎて、何か一つを挙げるのは難しいです。新井英樹さんの漫画が大好きです。『ザ・ワールド・イズ・マイン』は100回ぐらい読みました。
-最後にこの映画の見どころと、読者に向けて一言お願いします。
見どころについてはネタバレになってしまうので(笑)…。ぜひ劇場で、大画面と迫力のあるサウンドで見ていただきたいと思います。この映画の見どころを一言で言えば、冷たいそばと温かいそばが同時に食べられるような、熱いところと冷たいところが両方あるので、2つの違いを皆さんに感じていただきたいなと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
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