「光る君へ」第四十回「君を置きて」回を重ねて深みを増した藤原行成の言動【大河ドラマコラム】
エンタメOVO / 2024年10月26日 9時43分
NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。10月20日に放送された第四十回「君を置きて」では、一条天皇(塩野瑛久)の譲位を受け、東宮の座を巡る争い繰り広げられた。
体調を崩し、自らの死期を悟った一条天皇は、居貞親王(木村達成)への譲位を決断。ここで問題となったのが、居貞親王が天皇に即位することで空席となる次の東宮に、誰がなるかだった。第一皇子の敦康親王(片岡千之助)を希望する一条天皇に対して、道長は自らの孫にあたる第二皇子の敦成親王(濱田碧生)を推す。
この両者の争いの中で、一条天皇から「敦成親王を東宮に」との言葉を引き出し、道長に勝利をもたらしたのが、藤原行成(渡辺大知)だった。行成は「もはや己のために望むものはない。ただ一つ、望むのは敦康を東宮に。どうかそなたから、左大臣に」と懇願する一条天皇に、文徳天皇の第四皇子だった清和天皇が即位した前例を引き合いに出し、「敦康親王さまを東宮とすること、左大臣さまは承知なさるまいと思われます」と反論。敦成親王を東宮にする承諾を得る。
見応えある一条天皇と行成の駆け引きだったが、そこに厚みを加えていたのが、行成の過去の言動だ。
その一つが、第三十六回「待ち望まれた日」で、中宮・彰子(見上愛)が身ごもった際のやりとりだ。道長を囲んで「生まれてくる子が皇子だったら、どうなるか…」という会話が繰り広げられる中、行成は「これまでのならいによれば、居貞親王さまのあとは、帝の一の宮、敦康親王さまが東宮になられるのが道理にございます」と正論を語る。さらに、藤原公任(町田啓太)から「敦康さまの後見は道長だが、もし道長が後見をやめたら、どうなる?」と問われ、「そのようなことを、道長さまがなさるはずはございません」と断言していた。
この言葉を行成は完全に覆したわけだが、それによって道長に対する忠誠心が一層強く印象付けられた。そして、道長に対する行成の忠誠心を裏付ける過去の言動が、もう一つあった。それは、第二十八回「一帝二后」でのことだ。
愛する定子(高畑充希)が傷つくことを恐れ、一度は承諾した彰子の立后を渋る一条天皇に対し、行成は「一天万乗の君たる帝が、下々の者と同じ心持ちで、妻を思うことなぞ、あってはなりませぬ」とそれまでになく強い態度で迫り、彰子の立后を決断させる。
今回の行成の言動は、このときと重なって見え、より説得力が増していた。普段は生真面目で規則を重んじ、立場や身分をわきまえた言動をとりながらも、親友でもある道長への忠誠心は、時にそれを上回る。そんな人柄に基づく言動をここまで積み重ねてきたからこそ、この回、次の東宮を巡って一条天皇に決断を迫る場面が一層強く印象に残った。
回を重ねることで深みが増す大河ドラマの魅力を象徴した行成の言動だったといえるのではないだろうか。この回はほかにも、かつては「おおせのままに」としか言えなかった彰子が、父・道長に強い口調で反論する場面や、かつての主人公・まひろ(吉高由里子)と直秀(毎熊克哉)を思わせるまひろの娘・賢子(南沙良)と双寿丸(伊藤健太郎)の出会いなど、ドラマの積み重ねで深みを増す大河ドラマらしい見どころが凝縮されていた。これから終盤に向かう中、さらに深みを増したドラマが見られることを期待したい。
(井上健一)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
大河「光る君へ」で描かれた"道長の死"のその後 摂関政治が終焉を迎え、院政の時代へと突入
東洋経済オンライン / 2024年12月29日 8時20分
-
藤原道長憎しのあまり、暴走し自滅した…ギリギリまで道長を追い詰めた定子の兄・伊周が迎えたあっけない最期【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年12月28日 7時15分
-
NHK大河はこの史実をどう描くのか…まだ幼い「定子の息子」に対して藤原道長が行ったひどすぎる仕打ち【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年12月28日 7時15分
-
NHK大河ドラマを信じてはいけない…紫式部の娘・賢子が異例の大出世を遂げた本当の理由【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年12月28日 7時15分
-
藤原道長にいいように利用され、最後は天皇の座を奪われた…2人の中宮を持った一条天皇が迎えた悲しい最期【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年12月28日 7時15分
ランキング
-
1クロちゃんと破局のリチ、所属事務所「WACK」退所発表 今後についても言及「普通の生活に戻るだけです」【コメント全文】
モデルプレス / 2025年1月22日 23時12分
-
2中居正広、共演者へお詫びの連絡 番組終了受け古市憲寿氏が明かす「何があったのかは書かれていませんでした」
モデルプレス / 2025年1月22日 20時30分
-
3m-flo・LISA カラス嫌いになった「大きなトラウマ」を告白 父親が「血まみれ」に…
スポニチアネックス / 2025年1月23日 7時13分
-
4香取慎吾『日本一の最低男』が、2話から“評価爆上がり”の理由。「このドラマは信頼できる」と確信した場面は
女子SPA! / 2025年1月23日 8時46分
-
5バイオリニスト木嶋真優 学生時代に運動会&体育は「全欠席」 先生からは「許されていた」
スポニチアネックス / 2025年1月23日 6時47分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください