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【年末年始~エンタメコラム~】時代劇、復権

エンタメOVO / 2024年12月28日 12時0分

 さらに言えば、リアルタイムで世界マーケットを相手にできる配信コンテンツには、ハリウッド大作並みの製作費を投入できる。実際、NetflixやAmazonが次々と大作を手掛けている。2億5000万ドル(約350億円)を費やした「SHOGUN 将軍」の成功は、そのことも証明してくれた。

1月公開の新作に見る時代劇の未来


 1月17日から公開される映画『室町無頼』も、時代劇の復活を印象づける重要な作品だ。大泉洋が、日本史上初めて武士階級として一揆を先導した蓮田兵衛を演じる。応仁の乱前夜の京を舞台にした痛快時代劇で、監督は『SR サイタマノラッパー』シリーズや『あんのこと』の鬼才・入江悠。初挑戦となる本格時代劇で、才能がほとばしる野心的な演出を見せるのだ。

 それを支えるのが、監督の頭の中にあるイメージを見事に再現するVFX技術と、時代劇の伝統の融合。かつて剣戟やチャンバラと呼ばれた時代劇の一番の魅力は、殺陣だった。つまりアクションをどう見せるか。香港の武侠映画を発祥とする“ワイヤーワーク”がアクション映画の可能性を押し上げたように、『室町無頼』からは時代劇の新たな未来像が見て取れるのだ。

 この映画の製作幹事・配給は東映。東映は、黄金時代をけん引した時代劇の老舗。1960年をピークに時代劇が陰りを見せると、基軸をヤクザ映画へと移行していくが、その過渡期に黒澤明によるリアルな肌触りの時代劇の影響を受けて作られたのが、『十三人の刺客』(63年)などの“集団抗争時代劇”だった。それを現代によみがえらせたのが、11月に公開された『十一人の賊軍』。『孤狼の血』の白石和彌監督らしい生々しいのに痛快な時代劇で、ここにも時代劇の新たな可能性が息づいていた。

 1月24日には、松竹配給の『雪の花 ―ともに在りて―』も公開される。黒澤明の助監督だった小泉堯史監督作で、江戸時代に疱瘡(天然痘)の治療に尽力した実在の町医者・笠原良策の伝記もの。『室町無頼』もそうだが、今の時代に通じる身分や差別に縛られない主人公の生きざまを、古き良き時代劇の伝統が下支えしている。真田広之が受賞スピーチで語ったように、時代劇の技術が途切れなかったことは本当に大きい。

 このように、マーケットの世界規模への拡大だけでなく、新しい技術と伝統の技を融合させた斬新な表現や、現代的なテーマやメッセージを取り入れて、古典ジャンルをブラッシュアップさせることで、時代劇は息を吹き返したといえる。決して一過性のブームではなく、時代劇の未来は間違いなく明るい!

(外山真也)

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