レジェンド葛西紀明 復活の理由は再チャレンジにあり
テレビ北海道 / 2024年6月21日 15時10分
6月6日、52歳になったスキージャンプ界の「レジェンド」葛西紀明選手。
52歳になったばかりの今の心境を聞くと―「なんにも変わらないですね。衰えも感じないですし、普段通り」と即答。
51歳の昨シーズンは 2月のTVh杯で8年ぶりに優勝を果たすなど国内大会で結果を残し、4年ぶりにワールドカップのメンバーに復帰。シーズン終盤はヨーロッパを転戦し、上位30人に与えられるワールドカップポイントも4試合で獲得しました。
世界が驚いたアラフィフの活躍は、目標通りだったといいます。
「昨シーズンは自分の中で目標と言うか予定というか、そういうのを立ててやってきたんですけど、それがことごとくうまくはまったというシーズンでした」
世界の舞台に帰ってきたレジェンドを国際スキー連盟(FIS)は「伝説的な飛行感覚と驚異的な体力」と賞賛。新たに2つのギネス世界記録が認定されるなど4年をかけて果たした復活を葛西選手は自身にとっての「特別な言葉」で表現します。
「這い上がってきたですね。97年に他界した母親(幸子さん)に言われていた言葉だったんですよ。どんなに調子が悪くなってもお前はどん底から這い上がってくる男だから絶対できると手紙にも残してもらってるんですよね」
しかしその過程では大きな苦しみも味わいました。
「今までは何度も挫折やスランプなどに当たってきても1年くらいで乗り越えてこれた。今回は4年ずっと低迷してやっぱり不安になりましたね。引退かというのもチラチラ見えてきたりしちゃった。若干、諦めモードもあった。(試合に向けて)減量しなきゃならないのに食事に走っちゃったり、調子が悪いから、まあこれぐらいでいいかみたいな安易な考えもあった」
そんな自分との決別を決意したのは去年、51歳の夏でした。
「このままダラダラ過ごしたジャンプ生活なのかなと。でもそれは嫌だった。やっぱり負ければ悔しいんですよ。まだ俺はまだ負けたくない気持ちがあるんだ、勝ちたいっていう気持ちがあるんだ、調子が悪いからしょうがないなみたいなその“しょうがない”をなくした」
特に大きく見直したのがジャンプ選手にとって重要な体重調整の仕方だと言います。
「それまでの僕の減量って断食。3日間断食してその間、水とコーヒーしか飲まない。ところが断食中に筋肉痛になったんですよ。トレーニングした筋肉痛じゃなくて、これちょっと危ないなと思って。食べて運動で消費しようと。朝と夜、走るようにしたんですよね。(走る量は)例年以上、いや3倍、5倍はしているかもしれないですね。
調整方法を変えても走ることへの抵抗は全くなかったといいます。
「走ることは僕はメンタルのトレーニングと思ってやっている。長く走ることで相当長い時間メンタルトレーニングをしていると思うんですよ。それも多分強みのひとつだと思います」
身体と心を鍛え直し、そこに技術の見直しがかみ合って復活を果たした葛西選手。4年ぶりの世界の舞台で感じた手応えは?
「思い描いた通りのレベルでしたね。ここでは2本目に多分残れる、残ってポイントとれる、そういうイメージと目標、それがことごとく当たっていた。気になっているポイントを直せば、ワンステップ上に行ける。確信までは行ってないですけどそういう期待感はありますね」
52歳になって迎えるこのシーズンをひとことで表現するならどんな言葉が浮かびますか?という質問をぶつけてみたところ、返ってきた答えはー
「“再チャレンジ”ですかね。チャレンジではなく再チャレンジ。よかったころのジャンプを取り戻し、来年の世界選手権、2年後のオリンピック、ワールドカップの表彰台っていう、そこに行くための再チャレンジ。たぶん自信がなかったらチャレンジしますくらいの感じなんですけど、できるぞっていう意味を込めて再チャレンジ」
世界のトップを知り、そこに挑む自信がよみがえっているからこそ口にする「再チャレンジ」。進化を止めないレジェンドの52歳のシーズンに注目です。
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