7か月経っても道は歪み家は傾き…復旧方法は示されず 液状化被害の町”内灘”の未来
テレ金NEWS NNN / 2024年8月7日 18時42分
元日の地震による液状化現象で内灘町の西荒屋地区は道路が波打つなど深刻な被害に見舞われました。
住民たちが元の暮らしを取り戻すためには。かつて壊滅的な状況から復興を遂げた他県の事例をもとに町の未来を紐解きます。
ことし5月。
「はい三つありがと~」
「知っとる顔が多くて楽しい」
「子供たち来たいって言うてるんでちょっとみんなで」
この日、内灘町で開かれたのは地域の交流イベント。ただ、笑顔で近況を語り合う住民のほとんどは…
「今西荒屋住んでなくて、野々市の方ですんでます」
「自分は白帆台の方の仮設住宅の方に住んでます」
実は、この場所に暮らしていません。
ここは能登半島地震の震源からおよそ100キロ離れた内灘町の北部。およそ300世帯、700人あまりが生活していた西荒屋地区。
元日に発生した地震では深刻な液状化現象が地区を襲いました。
上下に大きく波打った道路。至る所で傾いた建物…
内灘町はことし3月、西荒屋を含む6つの被災地区で住民説明会を開きましたが…
「おっしゃりたいことはわかるが本当に情報が届いていないと一番言いたい!」
「もう少し思いやりを持ってほしい。被災者に寄り添ってほしい」
地震から7か月がたった今も道路は歪んだまま…今後の具体的な復旧方法などもいまだに示されていません。
地区に残った住民たちは自主的に復興委員会を立ち上げ、町をどう再建していくか、話し合いを続けています。
住民:
「今だって出てった人戻るかわからんてそんな人ばっかりやがいね」
内灘町西荒屋区・黒田邦彦 区長:
「みんな時間がたてばたつほど人口減というかこの地を離れていきますので」
震源から離れているにも関わらずなぜ、これほどまでの被害となったのか。地盤工学の専門家、金沢大学の小林俊一教授は内灘町の地質にその理由があると話します。
金沢大学 理工研究域 地球社会基盤学系・小林俊一 准教授:
「基本的には全部砂です。いろんな石が混じったりしてるのは、その例えばいろんな物を作るときに人間が入れてしまったわけで、基本的には本当の砂の塊が内灘の砂丘を形成しているので」
自然にできた砂丘地の上におよそ60年ほど前から住宅地が造成されてきた内灘町。
元日の地震ではその地盤を構成する砂と地下水が混ざりあい液状化現象が発生。さらに西荒屋地区では想定外の現象が起きたといいます。
小林俊一 准教授:
「非常に激しい側方流動を起こしているのがこの場所の特徴です」
内灘町の中で盛り上がった砂丘地の裾野に位置する西荒屋地区。この一帯が液状化した際、低地にある西荒屋に向かって地盤がずれ動く現象、「側方流動」が発生し、甚大な被害につながったと指摘します。
小林俊一 准教授:
「ここまで地盤が変状するのかという場所は初めてで。舗装面をきれいに整形して通行に障害が出ないようにするとかそういう戻し方をするのが現実的ではないかと」
その地盤改良について地区の復旧にあたる町の担当者は。
内灘町 都市建設課・中佐光人 課長補佐:
「液状化した地盤の強度や土の成分を把握することを目的にこのボーリング調査を実施している。まずはデータを集めて解析しまして工法の検討に移っていく。現状はデータの回答を待っているというような状態です」
調査結果が出るのはもう少し先になると話す担当者。
西荒屋はこの先、どうなっていくのか。再建には、一体どれくらいの時間がかかるのか。
実は、そんな疑問のヒントになるかもしれない町が、東京のベッドタウンにありました。
千葉県浦安市。
2011年の東日本大震災で地盤が軟弱な埋め立て地にある浦安は、市内の、およそ8割が液状化。建物は斜めに傾き、至る所で土砂が噴出…多くの住民が町を離れていきました。
あれから13年。当時、市の担当者として復旧作業にあたった河本さん。
浦安市 道路整備課・河本聡親さん:
「現在はもう何があったのかわからないくらいきれいにさせていただいた」
液状化で道路や宅地の境界が確認できないほどの被害が出たというこの場所は、震災からおよそ10年で元通りの姿になったと話します。
浦安市 道路整備課・河本聡親さん:
「ここが筆界点。ここが境界線になるので、ここのクリアランス(余白)部分は市が管理するので、その間(余白)に(建物が)収まっている部分に関しては、地権者様のご心配がいらないよう対応した」
道路に余白の部分を作ることで時間と手間がかかる境界線の設定はあとまわしに。住宅の復旧を最優先にしたといいます。
重視したのは「スピード感」と「住民との対話」。地盤改良工事については住民説明会や勉強会を170回ほど積み重ねました。
浦安市 道路整備課・河本聡親さん:
「最終的には皆様のところ(宅地)に入っていって工事をしていくとなると、結局皆さん事業の当事者になるのでスタートの段階からどのように共同で事業を進めていくかという視点が欠かせない」
液状化の過去を風化させまいと浮き上がったマンホールはそのまま公園のモニュメントに。
河本さんは行政と住民が知恵を出し合い手を取り合って成し遂げた復興だと話します。そして、当時を知る浦安の住民たちも。
「市や国から補助で全部液状化の斜めに倒れた傾斜しているお宅は補助金もらって直していただきました。直すのも早かった」
「ジャッキアップして地盤改良してっていう工事はみんな行ってる感じかな。ただ行政が対策決まらないと。(行政が)こういう対策したいんですけどどうですかって説明しないと」
被害の程度を一概には比較できないものの地盤改良や人口減少など、かつての浦安と同じ課題を抱える西荒屋地区。
震災後、初めて開かれた住民交流会には地区に残った人と離れて暮らす人、合わせて300人ほどが参加しました。
西荒屋 壮年団・太田 一幸 団長:
「今までよりもよくなったね、みたいなところが一つでもあれば皆さん離れた人も戻ってくる。みんな好きだから集まってきてると思うんで。好きですね。地元ですから」
今月中に被災地区で、2回目の住民説明会が開かれる内灘町。
住み慣れた町を、暮らしをどう再建していくのか。行政と住民の対話が今後の道のりには重要なポイントとなりそうです。
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