ズワイガニ漁に込めた輪島の漁師の思い 漁獲量誇った港は地震で…
テレ金NEWS NNN / 2024年12月2日 18時37分
最盛期を迎えている石川県内のズワイガニ漁。地震の被害を乗り越えて漁を再開させた輪島の漁師の思いとは…
続々と水揚げされるズワイガニ。この日、輪島港では元日の地震後初めて漁を再開しました。
港が活気づく中、特別な思いを持って作業をする男性がいました。
漁師の沖崎勝敏さんです。輪島で32年間、底引き網の漁師として生計を立ててきました。
石川県内最多、200隻余りの船が拠点とする輪島港。ノドグロや天然フグなどブランド化にも力を入れ、地震の前、2022年度の漁獲高は県内トップの25億円に上りました。
しかし… 漁師たち自慢の港は、元日の地震で一変しました。
「船、底ついてしまってみんな、全部(海底に)乗ってしまっとる。傾いとる船は」
輪島港では元々、青いラインで示した場所を中心に船が停まっていました。その船を動かすために港では、最低でも水深4メートルが必要です。しかし、地震の後、国交省による計測の結果、オレンジで示された広い範囲で水深がわずか1メートル前後となったことが判明したのです。
船を出すことすらままならない状況。沖崎さんたち輪島の漁師は長期間の休業を余儀なくされました。
祖父の代から漁を生業としてきた沖崎さん一家。底引き網漁を行っていた父の勧めもあり、高校を卒業すると同時に漁師としての道を歩んできました。
漁師・沖崎 勝敏 さん:
「最初は船酔ったしきつかったけど、ある程度慣れてきて酔わなくなったら、まあ今じゃそれしかないなと思って」
自分にとっては唯一の仕事だと思っていた漁業。仕事が出来ない間は災害廃棄物の仕分けといった短期の仕事で生活費を賄っていました。
前例のない地盤の隆起への対応に迫られた輪島港。
海底から土砂を取り除く作業が続く一方… 10月、輪島港で動きがありました。
新たに設置された仮の桟橋とベルトコンベアを使っての試験的な漁が行われたのです。例年とは異なる作業手順を確かめ、ズワイガニ漁解禁に合わせた漁の再開が決まりました。
一方で、沖崎さんは複雑な心境を明かします。
漁師・沖崎 勝敏 さん:
「去年まではやっぱりドキドキしてたけど、今は規模縮小されてるし、いつもよりはあんまりそんなドキドキもしない」
ことしのカニ漁では、港の復旧状況を考慮し、1回あたりの漁獲量の上限が例年の半分ほどに制限されています。稼ぎ時への期待感も例年に比べると高くはないと言いますが、それでも…
漁師・沖崎 勝敏 さん:
「やっぱ底引き網にしてはカニ場が出初めっていうのが一番のメインだし、とりあえず出られるようになっただけでもいいかなと思ってる」
迎えた、出漁の日。前日まで続いた荒れた天気の影響で波は高い状況。
港には、まだ水深が低い場所が残っていて座礁の危険性もあります。出漁には慎重な判断が必要です。漁師たちの話し合いは1時間近く続きました。
(Q. どうなりました?)
「出ることになった。出る出る」
「やっとか、やっとって感じ」
漁師たちはさまざまな天気情報をもとに風は徐々に収まると判断。出漁を決めました。
10か月ぶりの漁師としての仕事。船は沖へと向かいました。
沖崎さんが引き揚げた網には、たくさんのカニの姿が…
幸い、これまで漁場としてきた沖合30キロの場所には地震の影響は見られなかったようです。
一方、船の帰りを待つ港には家族の姿が…妻の雅美さんです。
妻・沖崎 雅美 さん
「出漁してから戻ってくるまでの不安感やドキドキは毎年同じなんですけど、ことしはそれプラス解禁間に合うか分からなかったので、漁に出れて良かったなっていう、ここまで来れて感謝の気持ちもある」
出漁から、約16時間後。
船から、次々と運ばれてくるズワイガニ。地震の後、ようやく戻ってきた沖崎さん本来の仕事風景です。
(Q.久しぶりの漁はいかがでしたか?)
「まあまあかな。時間短縮の割には」
ズワイガニ漁の初日を終えて…
漁師・沖崎 勝敏 さん:
「まあ第一歩やろうねこれが。また一歩戻るかもしれんけど、とりあえず今日は一歩進んだって感じ」
それから10日ほど経ったある日。
地震前は定期的に友人を集め、自ら獲ってきた魚やカニを振る舞っていたという沖崎さん。この日は、漁再開後初めて宴会を開きました。メインはもちろん…
沖崎さんが獲ってきた香箱ガニ(ズワイガニのメス)。共に輪島で育ってきた仲間たちにとって最高のもてなしです。
「日本一贅沢な飲み方」「そうそうそう」「絶対そうやと思う」
漁師・沖崎 勝敏 さん:
「みんなに食べてもらって、みんな喜んでくれればそれでうちらはそれでいい」
日常を取り戻すため一つ前に進んだ沖崎さん。これから海と向き合う日々は続きます。
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