行楽シーズンに気をつけたい、乗り物と気象病の意外な関係
ウェザーニュース / 2018年10月11日 6時30分
行楽シーズンなのに、「乗り物が苦手で憂鬱」という人はいませんか。もしかしたら、気象病かもしれません。乗り物と気象病の意外な関係について、ウェザーニューズ気象病顧問アドバイザーで愛知医科大学客員教授・中部大学教授の佐藤純先生に教えていただきました。
気象病患者さんは乗り物が苦手!?
気象病とは、天候の変化の影響により、頭痛や腰痛、関節の痛み、めまいなど様々な不調が出るものです。
「気象病の患者さんに、乗り物酔いをする人はとても多いのです。初診のときに訊ねているのですが、70%といったところでしょうか。新幹線移動で何度か途中下車して休まなければならない、月に1度の出張で半日はホテルで休んでから仕事をする女性経営者など、苦労している人も多いのです」(佐藤先生)
気象病の患者さんはなぜ乗り物に弱いのでしょうか?
“乗り物”で起きる2つの変化
天気が変わるとき、気圧や湿度、気温が変化し、それが身体に影響します。気圧は普段意識することが少ないですが、気圧が変化すると身体は膨張・収縮し、肺や血管なども影響を受けます。これらはストレスとして自律神経にも作用し、さまざまな症状が出るのです。
乗り物に乗ると、まず高速で動くという特性から気圧が変化します。
「新幹線のぞみで小倉から名古屋まで移動したときに、車内で気圧の変化を測定してみたところ、75ヘクトパスカル(hPa)という、かなり大きな変化が起きていることがわかりました」(佐藤先生)
グラフで特に変化が激しいのは、トンネルの続いているところです。数ヘクトパスカルでも影響を受ける気象病の患者さんが、乗り物に弱いのもわかります。
「もう一つは、場所の移動による変化です。このグラフでも、小倉と名古屋で気圧が違いますね。私たちは普段、天気がゆっくり変わっていくなかにいるものですが、新幹線や飛行機の移動では、出発地と到着地で天気が一気に変わるのです」(佐藤先生)
乗り物酔いをする人がすべて気象病というわけではありませんが、気圧変化の影響を受けやすい可能性があります。
「単なる乗り物酔いだと思って“乗り物酔いの薬”を飲んでいるのに効かないケースもあります。乗り物で移動した後に具合が悪くなるという人は、注意した方がいいでしょう」(佐藤先生)
日常生活には、ほかにも気圧の変化がひそんでいます。
「例えば、高層マンションに住んでいて地下鉄を使うという人ならば、200mぐらいの高度差があります。その差は23〜25hPa程度。台風レベルの気圧差の影響を受けていることになります」(佐藤先生)
東京ドームのような気密性を高めた場所、エレベーター、登山なども気圧差で体調を崩すきっかけとなる可能性があります。
自分が“弱いもの”を知る
これらの項目に2つ以上当てはまるようなら、気象病のリスクが高いといえます。
自分の苦手な理由がわかれば、移動手段を地下鉄から変えるなど、対策も立てやすくなります。新幹線なら、比較的気圧が変化しにくい中央付近の車両を選ぶのも一つの手です。手軽にできるものとして、佐藤先生が考案した「くるくる耳マッサージ」がお薦めです。
「気象病と大きく関連する内耳の血流を改善することで、症状を軽減できます。前述した女性患者さんの場合は、水分の循環を改善する作用のある五笭散(ごれいさん)という漢方薬が合い、移動後も楽に過ごせるようになりました」(佐藤先生)
実は、何らかの気象病の症状のある人は日本で1000万人以上もいると考えられています。
「私の患者さんで『今年の夏は楽だった』という人がいましたが、多くの人が辛いと感じる酷暑でも、高気圧で安定しているので患者さんは過ごしやすかったのです。逆に気温や天気が変わりやすい秋は、気象病の人にとって辛い時季です。気象病は、放っておくと身体と心が反応しあって、負の連鎖で悪化することもあります。不調が改善しないなら、早めに医師に相談しましょう」(佐藤先生)
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